ファッション

まだまだ知られていない日本のスモールブランドの話。/NTN

2026年4月7日

僕の着倒れ東京案内。


photo: Shin Hamada
text: Neo Iida
2026年4月 948号初出

神宮外苑を見渡す明るいオフィス。窓にかけたのは人気のベータシリーズの新作。ポケットの袋が外に出ていたり、シガレットポケットが腕の生地とシームレスだったり独特!

アウトドアウェアの構造を噛み砕いて昇華し、美しくて機能的な新しい服を作る。

〈NTN〉の髙橋伸明さんは、服作りの基礎を東京とパリで学んだ。その後パタンナーとして幾つかのブランドで働き、独立した。必ずしも自身のブランドを持つことがゴールではなかったという。

「裏方として服を作るのも僕としては同じ価値観なんです。服作りはすべての作業工程が大切だなと思いますし、アイデアに始まり、素材の選定をして、パターンを引いて、トワル仮縫いをして、最終的に縫製工場に出す。そして経営面も見る。服作りのすべてのポイントに関わっているのが強みだと思っています」

神宮前のビルの一室にオフィスを構える。作業はすべてこの場所で。

 美しいカッティングと、シルエットが〈NTN〉の服の持つ魅力だけれど、さらにアウトドアの要素も大きい。髙橋さん自身が登山やキャンプ好きという点が出発点だが、取り入れ方が面白いのだ。

「アウトドアのシェルジャケットを参考にして作りました、というのではなくて、より深いところで構造とか機能とかを自分なりに昇華して服に仕立て上げるイメージなんですよね。機能性のために作られてるものって見た目に美しいじゃないですか。例えば、ポケットのマチは容量を大きくするために付けますよね。でもそのマチを利用して、裏側にボタンをつけたら比翼になって見えなくなるなと思ったんです。ある機能を違った機能にくっつけることで、新しいデザインになるなと思って。そういうアイデアを、皆さんも自分も着たい服の中でどう表現するかを考えています」

オランダ在住の、アーティストであり知人のマライン・ファン・クライさんの作品。髙橋さんが好む色使いと彼のカラーリングとがマッチして、今回コラボレーションが実現したそう。

マライン・ファン・クライさんの作品をプリントしたドローストリングスタンドカラーシャツ。立体的な脇パネルのおかげで体を動かしやすく、襟元の紐が揺れるのも美しい。

 過酷な自然を生きるためのアウトドアギアが持つ機能のなかに美しさを見いだして、ファッションに落とし込む。その絶妙な匙加減が、ベーシックな服を魅力的なものに変えている。そして、どの服もスタイリッシュだけれど、心地よい違和感があるのが着る人の気持ちを上げてくれる気がする。レザーシャツは一見プルオーバーかな? と錯覚してしまうし、ミリタリーモチーフのジャケットもシガレットポケットが独立しておらず、袖からシームレスに繋がっていてその構造にハッとする。この気付きが気持ちいい。

「機能性だけではなくて見た目の面白さも大切にしています。やはり自分でパターンを引いている良さはそこにあるのかなと。自分で作らないと出てこない構造やアイデアがあると思うし、こうしたら面白いかな、と考えたことが形にできます。それにすべてのプロセスを見ることで、すべての面で自分の意思を入れられる。ブランドのエッセンスを原液のような形で強く打ち出せていると思います」

クライミングパンツにインスピレーションを得た、ポケットが立体的に膨らむブラックデニムパンツ。全体的に体の可動部に沿って接ぎ合わせられているため、見た目も美しく動きやすい。¥47,300

柔らかなバッファローレザーを使ったアセントレザーシャツ。前開きボタンの下部分が比翼で隠れていて一見プルオーバーに見える。¥159,500

相模原を拠点とする陶芸家、山田隆太郎に別注。器の他に〈NTN〉の自然を愛する思いを反映した“木彫りの熊”も。素朴な顔つきがかわいらしい。今夏発売予定。価格未定(NTN☎03·6824·1675)

インフォメーション

NTN

国内外の上質な素材を用い、アウトドアウェアの要素も取り入れながら、ベーシックで馴染みのあるプロダクトを展開。「NTN」は永続的に良いものを作りたいという意味を込め、イニシャルに繰り返し「N」を付けた。

Official Website
https://www.ntnofficial.com

Instagram
https://www.instagram.com/ntn_official_/

プロフィール

髙橋伸明

たかはし・のぶあき|1982年、千葉県生まれ。文化服装学院、文化ファッションビジネススクール、パリ・サンディカ・クチュール校で学び国内外のブランドで経験を積む。