ライフスタイル

家の猫の話 Vol.22/文・ピエール瀧

2025年12月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

ウチのヤンチャ猫のコロッケ。以前もチラッと書いたことがあったと思いますが、ちょっとした特技があります。それは投げたおもちゃをちゃんと持って帰ってくること。

リビングのソファーからダイニングのテーブル方面におもちゃをポイッと投げると、間髪入れずズドドド~!っと駆けて行き、おもちゃに追いつくやいなや前足でメッシばりの細かいタッチのドリブルを数回かまし、その後ガシッとおもちゃを抱え込んでうっとりした後、何食わぬ顔でおもちゃを咥えてこちら側まで持って帰ってきます。で、ぽそっと足元に置いて次のスローインを催促。

これをだいたい4~5回、調子のいい時やお気に入りのおもちゃの場合は7~8回繰り返すのが1セットです。投げるおもちゃはなんでもいいというわけではなく、どうやら彼にもお気に入りがあるようです。

現在のコロッケのお気に入りおもちゃ(投げる用)の第3位はニャッキのぬいぐるみ。

これは娘の友達がクレーンゲームで取ってプレゼントしてくれたやつで、勉強机の隅っこに飾ってあった物です。コロッケは娘の勉強机の上から様々な物(消しゴム、ペン、シャーペンの芯等)をチョイチョイやって落とすのが趣味なのですが、その際に見つけたらしく、家族が気がついた時にはすでに玄関のサンダルの脇に転がっていました。欠点は軽さと無音。ドリブルの際の手応え不足から3位に甘んじているようです。

第2位は超定番のコンビニのビニール袋。

なんでもないコンビニのビニール袋を縛って丸めてボール状にしたものです。コロッケはこのビニール袋のシャリシャリ音がたまらないらしく、こちらがそういうつもりでもなくコンビニの袋を結んでいたりすると「アレでしょ?アレなんでしょ⁉」と、ワクワクした眼で近寄ってきて、投げてもらうのを心待ちにします。重さがほぼ無いに等しいので、ドリブルのワンアクションに対する動きの反応が大きく、ダイナミックなステップでダイニングテーブルの下を駆け抜けるプレーを見せてくれます。そして何よりコスト的に最高。

第1位はコアラのクリップ

娘がまだ小さかった頃にお婆ちゃんが気分次第で買ってくれたもので、クリップとしてもマスコットとしても中途半端な代物だったのですが、これがコロッケにとっては激ハマり。適度な重さの獲物感と、爪の部分のプラスチック部品が床を擦る効果音が狩猟感を増幅させるようで、彼の大のお気に入りです。ワゴンの上に置いてあったりすると、自らヒョイとワゴンに飛び乗り「さあコアラ狩りの時間です!」と咥えて持ってきたりすることもあります。

これらの投げおもちゃ遊びの問題点は家具。ダイニングテーブルの向こう側にはサイドボードがあり、下部5センチくらいの隙間におもちゃが入ってしまうとさすがのコロッケも手出しができません。そうなるとほぼ業務連絡のテンションでこちらを振り返り、「入りました~。お願いしまーす」と回収を要求します。我が家ではコロッケのおもちゃを回収する用の50センチ竹定規がダイニングに常備してあり、要求に応じて手の空いてる者が即座に床に這いつくばって対応できる準備が整っています。

そしてこれらの遊びの時間、ブイヨンは一切興味を見せずに冷めた目でコロッケを眺めています。さすが女王。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(Netflix)、『HEART ATTACK』(FOD)、映画『宝島』(大友啓史監督)映画『ホウセンカ』(木下麦監督)など出演も多数。電気グルーヴ、秋の東名阪Zeppツアー・ 「へびツアー」も開催予定。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/