ライフスタイル
妻のこと Vol.7 – 呪い妻 –
写真・文/上出遼平
2021年8月15日
photo & text : Ryohei Kamide

年に一度のまっこと重要な日。
8月15日。
終戦記念日にして、妻の誕生日。
まっこと重要である。
肩がガチガチに凝っている。
呪いのせいだ。
一年を通して貯め込んだ呪いが肩にきている。
妻の呪いだ。
妻は呪う。
例えば食事中、こちらが上の空だったりしようものならすかさず呪いを放ってくる。
妻「どう?結構おいしいでしょ?」
私「うん、おいしい」
妻「多分、君の次のロケ失敗するよ」
と、こんな具合である。
字面からは理不尽に見えるだろう。
しかし、表情、声色がいけなかった。
「うん、おいしい」に費やしたエネルギーが必要量に達していないとみなされたのだ。
片手間の返事であることを見透かされると、即座に呪いをかけられる。
人間いつだってフルパワーではいられない。
人間関係に頭を抱えることも、仕事の結果が芳しくなくって思い悩むこともある。
頭の中をそんなこんながグルグルしているときには、上の空にだってなるものだ。
妻「今夜夕飯どうする?」
私「うん」
妻「今年の君の仕事は軒並み失敗に終わることになったよ」
これはこちらに非がある。ほとんど質問を聞いてさえいない。
そうは言っても、一つの上の空で一年分呪ってくるなんてあまりにも横暴だ。
そのようにして、僕は呪いを浴びている。
この呪いを解けるチャンスは年に一度。
妻の誕生日。捧げ物の日。
これを書いている今まさに、妻が部屋へ駆けてきて言った。
「私、43歳になりました」
時計を見ると、8月15日の0時ぴったり。
一通り部屋の中を見回し、放置している真新しい紙袋を一つ物色して(中身は空だ)、ヨダレを滴らせながらリビングへ駆けて戻った。
欲深き祟り神よ。
先日買ったプレゼントは、古い紙袋に入れ替えて棚の奥にしまってある。
そう簡単に奪われてたまるか。
本日、ベストなタイミングで捧げる所存なり。
幸多からんことを。
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上出遼平
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