ライフスタイル

家の猫の話 Vol.23/文・ピエール瀧

2026年1月6日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

猫は家の中だけでなく、外の世界にもいます。まあ当然の話。やっぱ動物ですから。

最近気づいたんですが、出先で見かけるオープンエアー状態の猫たちは、なんとなく“人間の生活が感じられるエリア圏内”でしか遭遇しないように感じます。観光地だったり、住宅街だったり、畑のあぜ道だったり、港の端っこだったり。

逆に、山奥の登山道の一本道や、無人島の砂浜で猫とばったり出会ったことはほぼ無い記憶。まあ単に自分の経験だけの話ですけど。

もしかしたら、山中で何世代も暮らしている完全野生のワイルド猫もいるかもしれません。しかし彼らにとっては人間も外敵に感じるでしょうから、足音が聞こえた途端に藪の中に潜んで、危険が過ぎ去るのを息を潜めて観察しているだけなのかもしれません。

何が言いたいかというと、普段我々が外で見かける野良猫たちは、野良とは言えどもヒト社会に順応&依存した連中なのではないかということです。

命に直結する警戒心を完全に解き放ち、すぐ脇を人間が通っても意に介さずにくつろぎまくる外猫。これは人の出入りが多い場所でよく見かけます、サービスエリアとか。こちらが近寄っていって体を撫でたりしてもされるがまま。きっと毎日誰かが食べ物をくれるでしょうし、衆人監視の状態なので、猫にとっての嫌なことがあってもすぐに誰かが注意して守ってくれるでしょう。このグループは人間のコミュニティの端っこにうまいことぶら下がって暮らしています。皆に愛されてる感じ。

観光地の一角なんかで一部の猫好きによって保護されながら、それでも猫のコミュニティを維持しながら暮らしている一団もいます。この場合は複数の猫で構成された群の状態になっていることが多いように見受けられます。そしてだいたいおばちゃんが暮らしに関わっています。

この連中は人間からご飯をもらうことに慣れており、最低限の保証が約束されて自由を謳歌しているように見えます。しかし元々は飼い猫だったであろう目つきや仕草の個体が多く、一見のびのびとしているように見えますがどこか寂しげです。向こうから近寄ってきて、「もしかして連れて帰りに来てくれた?」と言わんばかりに足元にスリスリする長毛の洋猫もいたりして、その場を離れるときに自分の心にちょっとだけ罪悪感が芽生えます。

そして夜中の住宅地なんかで突然単独で目の前に現れる使者風の猫。自分はこのカテゴリーの連
中が一番好きです。

全く気配を悟られずに突如絶妙な距離感で邂逅するこれらの猫は、生き物としての種を超え、目を見据えながらの精神のタイマン勝負でこちらに何かを問いかけてきます。実際は何も問いかけてなどいないのでしょうが、こちらとしてはそのメッセージ性、意図を汲み取らなければいけないような状況になぜか落とし込まれます。両者睨み合いのままその状態が数分続くこともあり、自分としては、普段の生活では使わない己の動物としての回路・機能を総動員して事態の収集に努めます。結局最後にはプイと猫の方が立ち去っていくことが多く、その場合は最後に心の中で猫に感謝するようにしています。そういう場合、なんか向こうのほうが気位が高い感じがするんですよね。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(Netflix)、『HEART ATTACK』(FOD)、映画『宝島』(大友啓史監督)映画『ホウセンカ』(木下麦監督)など出演も多数。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/