TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】まず、歩くことについて

執筆:qp

2025年12月9日

人生にとって最も大事なのは、歩くことだと少し前に結論を出しました。
歩くことができる体があるならば、生涯、死ぬ直前まで歩き続ける価値があるだろうと、すでに自分は確信しています。

いや、歩かない方が良いよ、部屋にいてじっと動かず壁を見ていた方が良いよ、なんていう人が世の中にいるでしょうか?
健康に良い、脳にだって良いとか、そういう話を聞いたこともありますが、それを期待して歩くことが大事だと言っているわけではありません(それも、なくはないですが)。

単純に、歩くのは楽しい。
歩いているときの時間はとても充実している、そう思うからです。

歩くと景色が変わっていき、匂いも変わります。頬が空気の冷たさを捉え、足の裏に地面の柔らかさを感じます。
規則的なリズムを持って歩くことは、一種のダンスのようでもあり、歩き続けるとしだいに体が喜んでいきます。

また、なにか考えごとがあればその考えは前へ進み、頭が整理されます。いらいらした気持ちがあれば、それが静まることもあります。
ああ歩くんじゃなかったと思ったり、後悔したなんていう経験は、たぶん、今まで一度もありません。

歩くことで、はっきりと言語化するのは難しい、世界の発信する微かな信号を受け取っているような気もします。
それは、歩くことでしか得られないものだと思います。

ただ、歩くといっても、どこを歩くかによって、歩く時間の豊かさは変わります。だれにとってもそうであるかは分かりませんが、自分にとっては、そうです。

たとえば、夜の新宿歌舞伎町を歩くのと、鳥の声がさえずる森の中を歩くのとでは、まったく違う経験だと思います(夜の歌舞伎町を悪く言っているわけではないです。歌舞伎町も、それはそれで面白い場所だと思っています)。

わたしは、京都に住んでいます。
4年前、東京の西のはずれから京都に引っ越し、現在、なんとかここで生活を立てています。

今回担当させてもらう連載では、わたしの住んでいる京都の、好きな道のいくつかをご紹介できたらと考えています。
ぜひ、となりに並んで、ふたり歩きしているような気分で、文章を読んでもらえたら嬉しいです。

プロフィール

qp

キューピー|画家。小さな紙に、水彩で絵を描いている。 近年の個展に「花の絵」(2023年)、「明るさの前」(2024年)、「枕もとの水彩画」(2025年)など。400店の喫茶店を巡って水を撮影したフォトエッセイ『喫茶店の水』(左右社)を出版。

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