TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】Small Drug Storeについて

執筆:阿久津賢二(『Small Drug Store』店主)

2025年6月12日

代々木公園のステージ裏で、ベンチに座って談笑してるアフリカ・バンバータの横にすっと腰をおろしたことがある。

東横線、学芸大学駅の東口を出て、徒歩一分の場所に『Small Drug Store』は開店した。もともとは『雑伽屋』という喫茶店の跡地だ。僕も何度かいったことのある店で、まさか自分がこの空間に店を構えるなんて思ってもいなかった。
物件を借りた時、昔ながらの喫茶店のように、壁は茶色く、薄暗い店内だった。改装するにあたり、カウンターテーブルを壊し、シンクを撤去して、床に敷き詰められた無数の煉瓦を運び出したりしていると、小さな空間で営むための工夫や、何十年もそこにあるモノ達の調和が見えてくる。すると常連ではなかったのに、喫茶店だった空間に愛着がわいてしまう。だがしかし、茶色かった壁はすべて白くし、床もモルタルにした。
ただ天井だけは元の色のままに残した。
長い間飲食店だった空間は、シンプルな棚に囲まれた小売店に生まれ変わったのだ。

そうして開店した『Small Drug Store』は、ドラッグストア+セレクトショップである。漢方薬や生薬をベースにした薬と、レコードやキリム等の音楽を通じてタッチできた雑多な雑貨が多く並んでいる。このお店の形態をセレクト・ドラッグストアと名乗っている、が、よく「なんのお店ですか?」と聞かれる。とはいえ来てくれた人に驚きや好奇心をくすぐるモノが常にあり、「日々を楽しく、健康で」をモットーにワクワクするお店にしていきたいと思っている。

開店時からレシートに載せている言葉がある。
「Peace,Unity,Love and Having Fun」
この、アフリカ・バンバータとジェイムズ・ブラウンからのメッセージを『Small Drug Store』で少しでも体現していけたらなと思う。
そう、大事なことはだいたいHIP HOPから教わったのだ。

プロフィール

阿久津賢二 a.k.a. smallest

あくつ・けんじ|ラッパー / DJ / 登録販売者。1980年東京生まれ。「あくつ薬局」3代目。HIP HOPグループ「トリカブト」で2001年デビュー。トリカブト活動休止後「Dig Dynamics Hip Hop doo-dah Band」を結成。それと並行して チップチューンバンド「SUPERSTARS」を結成。2012年『サイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者』にNO SIGHT役で出演。俳句集団「傍点」同人。 2025年3月、学芸大学駅前に薬とカルチャーの店『Small Drug Store』を開店。落語好き。

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