カルチャー

1万2千人動員! ニューヨーク単独ライブ直前インタビュー。【前編】


客観と主観が入り交じる、珠玉の漫才&コント。


2024年6月16日

photo: Misaki Tsuge
text: Neo Iida

 毎年行われている、ニューヨークの単独ライブ。今年は7月6日(土)の東京から始まり、大阪、愛知、宮城、福岡の5都市全13公演、延べ1万2千人の動員を見込んでいる。タイトルは『そろそろ、』。マリリン・マンソンのような出で立ちの二人が並ぶスタイリッシュなビジュアルが完成した。開催2ヶ月前、例年通りまだ何も決まっていない状態の二人に意気込みを聞いた。


10年後はブチ切れ漫才してるかもしれない。


――昨年の単独ライブ『虫の息』から1年が経ちました。


屋敷裕政(以下、屋敷) ほんと、あっという間に1年経ったなっていうのが率直な気持ちですねえ。この間やってまたもう始まるのかっていう。まあ前回すごい好評やったんで、今年も今までで一番良かったなって言ってもらえたら一番嬉しいですけどね。


――今(取材を行った5月20日)は進捗としてはどんな状態ですか?


屋敷 「例年通り」と言ったらわかっていただけるかと思うんですけど、全然です(笑)。まだ設定を出し始めた感じっすね。作家の今井(太郎)さんと関野(樹)くんとZoomでやりとりしながら。


嶋佐和也(以下、嶋佐) そうですね。ちょこちょこって感じです。


屋敷 今どんどん作家さんが忙しなってるんで、なかなか週3〜4日ではできてないですね。週に1〜2日ぐらいですね。去年は今井さんが『だが、情熱ある』の脚本を書いていて、丸かぶりしてめっちゃ忙しくて。それに比べたらまだマシではありますけど。


嶋佐 ネタが出てきてから全体がまとまって行く感じなんで、まだまだです。


ーーネタに関してはこれから詰めていくところだと思うんですけど、漫才とコントという構成は変わらずですか?


屋敷 はい。あとVTRとおしゃれな演出。今井さんがいつも考えてくれるんです、おしゃれな演出を。

ーー確かに転換の音楽とかカッコいいです。舞台装置もシンプルで見やすいですし。ネタづくりの方向性としては、気になってることをそれぞれ持ち寄って、という感じなんですよね。


屋敷 そうですね。Zoomで一気に話します。


ーー昨年の『虫の息』も、振り返ればニューヨークさんらしい鋭さがすごく出ていて。売れない芸人が場を回しまくってる「芸能人飲み会」のコントとか最高でした。悲哀や妬み、主観と客観が入り混じって、感情が揺さぶられる感じがあって。


屋敷・嶋佐 ありがとうございます。


――手術を怖がる男の子のもとを大好きなアニメの声優が訪れるコントも最高でした。なぜか「わかる!」と思ってしまう絶妙な描写で。


『虫の息』より。手術を怖がる少年を説得しに訪れた初老の紳士。彼の正体は、少年が大好きなアニメキャラの声を演じる声優だった。


嶋佐 あれは、まあ、まさにそうなんですよね。


屋敷 あんまり言うと「あの人や」ってなってしまう(笑)。


――『Last Message』の「モノマネ芸人」も、ずっと友人のペースに合わせていた屋敷さんの一言がズバッと刺さって。よく毒のある笑いと言われている気がしますが、それもあるかもしれませんけど、視点の妙が心地いいんだよなっていつも思います。


嶋佐 ああ、嬉しいですね。


――このあたりはDVDが発売になるので、今年のライブとあわせて見てもらえるといいですよね。しかも3枚組という贅沢な作りで。


「NEW YORK LIVE 2021-2023 DVD-BOX」

2021年~2023年に行われたニューヨークの単独ライブ3本を収録したDVD-BOX。2024年7月3日(水)発売、DVD3枚組、¥9,900。

屋敷 そうなんですよ。欲しいって言ったら動いてくれました。言ってみるもんやなって。


嶋佐 謎に色々先取りして2021年の『Natural』と2022年の『Last Message』はデータ販売にしてたんですよね。でも去年はデータ販売やらなかったんで。DVDで見てください。


屋敷 DVD欲しいって声もありましたからね。ようやくです。でも今回だけで次やらない可能性もあります。


嶋佐 買ってください。

ーーわかりました。でも、以前の取材でも仰っていたんですが、年々世間に対して「違うだろ」と思うことが少なくなっていくと。


屋敷 というよりは、テレビに出てそれなりにお金をもらうようになって、昔みたいなこと言うてる場合じゃないなっていう感覚になってきた感じですかねえ。でもその都度その都度細かい気になることはありますからね。


嶋佐 状況とか年齢も変わってきて、自然と考え方も変わってくるというか。そのなかでもあれっと思うことはありますよ。

屋敷 その時々で変わりはします。おっさんになったら、「今の若者はおかしい!」とかいうネタを作るかもしらんし(笑)。毒舌の種類が全く違ってるかもしれないです。


嶋佐 10年後は過去イチでブチ切れ漫才してるかもしれない。


初の会場、宮城と愛知。


――(笑)。タイトルはどうして「そろそろ、」になったんですか?


嶋佐 まず、毎年単独が決まると、オンラインサロンでタイトル募集のための生配信をやるんですよ。そこで皆さんがバーっとタイトル案を送ってくれるんです。あとマネージャーの小賀くんも毎回考えてくれて。彼がね、毎回攻めたタイトルを出してきて。今年なんだっけ?



屋敷 なんやったっけ(笑)。「ウェルカムアンチ」?


小賀 そうです。


嶋佐 そうそう、「ウェルカムアンチ」(笑)。


屋敷 去年は「コンプラアレルギー」ってとんでもなくダサいのがいちばんおもろかって、今年は「ウェルカムアンチ」っていう。


――(笑)。単語の意味を考えたら、なんだかすごいですね。


屋敷 そういう誰かのアイデアをそのまま採用することはなくて、毎回ヒントにさせてもらう感じやったんです。


嶋佐 でも今年はチーフマネージャーの神﨑さんも考えてくださって、それが「そろそろ、」だったんですよ。なんか響きがいいなと思って。


単独ライブ「そろそろ、」のキービジュアル。マリリン・マンソン風メイクを施された二人の姿が新鮮だ。


屋敷 まさかの初採用です。マネージャーからの。


嶋佐 「、」が付いてるのもいいなあって。

屋敷 いつもいろんな人からエッセンスだけもらって、最終的には自分たちで勝手に考えて決めてるんですけど、今回は初めてまんま採用しましたね。


――ピンときたものがあったんですね。ビジュアルはどうやって決めたんですか?


屋敷 ビジュアルは毎年僕たちで考えてます。今年は嶋佐かな。

嶋佐 そうすね、毎回ビジュアルはタイトル混みで考えてて、自分たちが見ないような、他と被りがなさそうなものをと思っていて。


屋敷 そうすね。「うわ、芸人の単独っぽいな」ってならんラインを攻めてるイメージではあります。

嶋佐 今回はマリリン・マンソン。画像とか色々見てこれになりました。


屋敷 何かこういう雰囲気の二人がいて、ひらがなで「そろそろ、」って書いてあったらいいんじゃないかなって。


――カッコいいです。今回は5都市13公演ということで、東京、大阪、福岡に加えて、新たに宮城と愛知が加わりました。残念ながら北海道がなくなったということは、楽しみにしていらしたバニーガールバーに行けなくなってしまったんですね。


屋敷 そうなんですよ。

嶋佐 それだけはちょっと寂しいですね。楽しみにしてたんで。

――他の地域にもありそうですけどね。


嶋佐 ありますかね。あったらいいんですけどね。


屋敷 宮城と愛知は初めて行くので頑張りたいですね。ただ愛知に至っては平日に3公演やるっていう、愛知のスーパースターがやる動きをやってもうてるんですよ。


――凱旋みたいな(笑)。


嶋佐 どうしてそうなったんだろう。


屋敷 もう無茶苦茶。愛知でめっちゃ人気あるやつじゃないと成立せえへん。宮城も頑張らんと。


嶋佐 誰かが言ってたんですけど、仙台の人って平日家から出ないらしいんですよ。

屋敷 そんなわけない(笑)。どうせ鬼越(トマホーク)やろ、言うてたの。


嶋佐 先に言っておいてくれればなんとかなったのにって。


屋敷 間に受けてるやん。


ちょっとでも、見てくれる人を増やしたい。


――(笑)。動員が1万2000人というのもすごいですね。POPEYEが一昨年の『Last Message』の取材で伺ったときは、延べ5500人の動員を目指していらして。昨年の『虫の息』は1万人。規模がどんどん大きくなっているのを感じました。


屋敷 ありがたいですね。ちょっとでも見てくれる人を増やしたいなって思います。でも箱はあんま大きくせんようにしてますね。


嶋佐 お客さんが見づらくなっちゃうんですよね。多くても、せめて1000人くらい。

屋敷 ギリギリ我慢せんと見れるのがそれくらいかなと思います。2000人規模のデカ箱はちょっとしんどいかなっていうのがありますね。


ーーあと、今回は学割もあるんですよね。


嶋佐 そうなんですよ。一回やってみたかったんです。中学生や高校生に見に来てほしかったから。


屋敷 6000円のチケットって、中高生にはビビる額やと思うんで。でも10代のうちに芸人の単独ライブ見るって結構な経験じゃないですか。そういう子が1人でも増えたらいいなと思いました。一番食らう世代やし、あの時期がいちばんいろんなものが刺さるというか。それに10代が俺らを好きって言ってる感覚が全然なくて、ちょっとでも増えたらっていう気持ちもあります。


――でも取材をしていると、学生さんで「ニューヨークファンです」っていう方結構いますよ。YouTubeでネタを見て好きになって、ラジオ聞いて、みたいな。


屋敷・嶋佐 ほんとですか?


屋敷 嬉しっ。いい10代だ、それは。


嶋佐 だいぶ少ないと思うけどなあ。連れてきてくださいよ。


――ライブ会場のロビーで行われる催しも楽しいですよね。記念写真コーナーとかミニ写真展とか。オンラインサロン会員用のガラガラもありました。当たると終演後にお二人と記念写真が撮れるという。


屋敷 今年もなんかやりたいですね。まだ全然考えられてないですけど。


――昨年はDJ KOOさんの祝花がフォトスポットみたいになっていました。


屋敷 DJ KOOさん来てくれたなあ。

嶋佐 去年はアッコさん(和田アキ子)が来ましたから。アッコさん待ちで10分くらい押しましたからね。あとここだけの話、お忍びで来る芸能人もいるんですよ。


屋敷 なんの話?(笑)


嶋佐 (小賀マネージャーに)今年も芸能人来るよな? ふたりな?


ーー(笑)。グッズも、昨年はアクスタとか靴下とか色々ありましたよね。


屋敷 今回、グッズは力を入れさせていただいていて。いつ発表できるんやろ。



嶋佐 珍しくいちばん最初に仕上がりました。楽しみにしていてください。


屋敷 「こんなんできたらいいな」って言ったら、めちゃくちゃ早く動いてもらって。グッズは稀に見るくらい順調です。


プロフィール


ニューヨーク

屋敷裕政と嶋佐和也によるお笑いコンビ。NSC東京校で出会い、2010年にコンビを結成。ヨシモト∞ホールで活躍後、2019年と2020年の『M-1グランプリ』に2年連続で決勝進出。『キングオブコント2020』準優勝。2019年1月から公式YouTubeチャンネルを開始し、週1回の生配信「ニューヨークのニューラジオ」をスタート。『ラヴィット!』(TBS系・木曜レギュラー)、『ジョンソン』(同)、『愛のハイエナ』(Abema)、『ニューヨークジャック』(X)などに出演中。


インフォメーション


1万2千人動員! ニューヨーク単独ライブ直前インタビュー。【前編】


ニューヨーク単独ライブ『そろそろ、』

〈開催日程〉

・東京(銀座ブロッサム)
7月6日(土) 17:00開場 18:00開演
7月7日(日) 13:00開場 14:00開演
7月7日(日) 17:00開場 18:00開演


・愛知(中日ホール)
7月17日(水)18:00開場 19:00開演
7月18日(木)13:00開場 14:00開演
7月18日(木)18:00開場 19:00開演


・宮城公演(電力ホール)
7月30日(火) 18:00開場 19:00開演

・福岡(よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場)
8月3日(土)13:00開場 14:00開演
8月3日(土)17:00開場 18:00開演
8月4日(日)13:00開場 14:00開演


・大阪(TTホール)
8月8日(木)18:00開場 19:00開演
8月9日(金)13:00開場 14:00開演
8月9日(金)18:00開場 19:00開演

・東京(有楽町よみうりホール)※凱旋公演
8月15日(木)18:00開場/19:00開演
8月16日(金)13:00開場/14:00開演
8月16日(金)18:00開場/19:00開演

〈チケット情報〉

前売6,000円/高校生以下学生料金 3,000円(税込・全席指定。FANYで販売中)
※未就学児童不可
※当日券に関しては要問い合せ