ライフスタイル

世界の部屋から。Vol.10/BANGKOK

理想の空間を求めて訪ねた世界8都市11部屋。第10回目は、名作椅子がひしめき合うバンコクのデザイナーの部屋。

2021年5月22日

シティボーイの部屋作り。


photo: Kohei Nishiyama
illustration: Adrian Hogan
edit: Hiroko Yabuki
2021年3月 887号初出

名作椅子がひしめき合うマイミュージアム。

ミーラッチャタ・ルジナロンの部屋
Meeratchata Rujinarong
Product Designer
ミーラッチャタ・ルジナロン|1991年、バンコク生まれ。ミラノの大学でプロダクトデザインを学ぶ。帰国後自身のスタジオ「Mee+」を始動。アイウェアブランド〈parity〉も手掛ける。
デザインファン垂涎モノの名作椅子が並ぶ仕事部屋は、広々75㎡。ポジショニングを計算して自らデザインした棚に収まる様子は、まるでミュージアム。そしてそこに座っちゃうミーラッチャタったらお茶目。天井のアルミニウムを使ったライトは自作。

 これは家なのか? タイのプロダクトデザイナー、ミーラッチャタの事務所兼自宅に足を踏み入れた第一印象はコレに尽きる。だって棚には博物館級の名作チェアがこれでもかと。これらはすべて建築家である父親のコレクションで、40年以上前にアメリカから持ち帰ったもの。「留学先のマンハッタンで、好きな椅子を眺めては、将来家を建てたらどこに置こうかって夢見てたんだって」なんていい話じゃないか。幼小期から本物に囲まれて育った彼にとって、椅子はもはや座ったり、鑑賞したりする以上の存在であるようで、「子供の頃、ガエタノ・ぺッシェの『フェルトリ』の中にすっぽり入ってかくれんぼしたっけ」なんてさらりと言ってのける。他に比べると引き算気味な寝室もいい感じだし、ホームパーティもできる庭に、趣味に没頭するための“ミュージックルーム”なる部屋も。南国にいることを忘れてしまいそうなモダンな空間に、ただただ驚くばかりだった。

. Desk Space .

ミーラッチャタ・ルジナロンのデスクスペース
エットレ・ソットサスの「CALLIMACO FLOOR」にジョバンニ・ラウダの棚、アキッレ・カスティリオーニの自転車のサドルを使ったスツール。イタリアンデザインの巨匠のプロダクトがわんさか。

. Work Room .

ミーラッチャタ・ルジナロンのワークスペース
オフィスのテーブルは実用性重視で選んだ〈IKEA〉。
ヘーリット・リートフェルトの「赤と青の椅子」初期に作られた単色版のチェア
一番のお気に入りのヘーリット・リートフェルト。有名な「赤と青の椅子」の初期に作られた単色版で、「部材のつなぎ目が見えない、完璧に計算されたデザイン。デザイナーとしても勉強になる」とぞっこん。

. Music Room .

. Bedroom .

ベッドルーム
寝室は他の部屋に比べるとモノが少なめですっきり。ベッドはタイの職人による特注品。クローゼットは視覚的に服を選べるようオープンタイプに。
ベッドルーム
「赤と青の椅子」に〈ドリアデ〉のチェア、自作のガラステーブル。家具を置いてもあり余るスペース、羨ましい。

. Garden .

ガーデン
母屋はL字形になっていて、南国の植物が生い茂る庭に面している。ここでは友達を呼んでパーティをしたり、飼い猫と遊んだり。「建物のデザインが真っ白でミニマルだから、有機的なグリーンに癒やされるんだ」

House Layout

AREA バンコク・ラップラオ

SPACE 6LDK   660㎡

REMARKS 建築家の父の設計によるモダニズム建築の一戸建てに両親と兄と同居。2階建ての母屋にオフィスやリビング、それぞれの寝室が。敷地内にショールームも併設。