ファッション

〈カルティエ〉とアンディ・ウォーホルの話。

〈CARTIER〉TANK MUST

2023年11月26日

小旅行とパッキング。


photo: Tetsuo Kashiwada
illustration: Dean Aizawa
text: Koji Toyoda
2023年12月 920号初出

〈CARTIER〉TANK MUST

 かの有名なアンディ・ウォーホルは、メディアアートの王様であり、また予言者でもあった。「誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう」。’60年代に語ったとされるこの言葉は、一般人が一夜にしてスターになる現代のYouTubeやTikTok全盛の時代を予見しているし、こと時計に関していえば、「時間を知るためじゃない。身に着けることに意味があるんだ」と、スマホの普及で、ある種のアクセサリーと化した時計の未来を見事に言い当てている。そんな彼がブレスレット(時間が止まったまま使っていたそうだ)として身に着けていたのが、金無垢に黒いアリゲーターベルトを合わせた〈カルティエ〉の代表モデル「タンク」。上空から戦車を見た形状をモチーフにし、突き出たラグと同じ幅のベルトを合わせた意匠は、キャンベル缶のように実にシンプルで、彼が愛したのも無理はない。ただ、’70~’80年代にはすでに存在していた、インデックスやレイルウェイを省略したこのミニマルデザインを、なぜ選ばなかったのだろうか? それだけが永遠の謎だ。


アンディ・ウォーホル

アンディ・ウォーホル
1928年、ピッツバーグ生まれ。『ヴォーグ』などでイラストレーターとして活動した後、キャンベル缶やドル紙幣を題材にしたファインアートを発表。シャツは〈ブルックス ブラザーズ〉、時計は〈カルティエ〉と決めていた。
©︎Bridgeman Images/アフロ

BRAND STORY

〈カルティエ〉ロゴ

1847年、パリの宝飾店として始まった世界五大ジュエラーのひとつ。3代目当主ルイ・カルティエの時代になると、世界初の実用的腕時計「サントス」、「タンク」や「パシャ」などエポックメイキングな名作を発表し、時計の世界に〈カルティエ〉なるジャンルを作った。

インフォメーション

〈CARTIER〉TANK MUST

こちらは1977年に登場したステンレススティール製「レ マスト ドゥ カルティエ」から着想を得た一本。29.5×22㎜のケースも品格たっぷりなクオーツモデル。¥500,500(カルティエ/カルティエ カスタマー サービスセンター☎0120·1847·00)