カルチャー

一度はここでドゥミタスコーヒーを。『Cafe Deux Oiseaux』。

東京五十音散策 阿佐ヶ谷②

2023年10月18日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Fuya Uto
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく企画「東京五十音散策」。1文字目「あ」は麻布十番に続き、阿佐ヶ谷。

焙煎士

 訪れる街の良い喫茶店を知っているかいないかで、その日の充実度は大きく変わる。ミュージックバーや劇場、古本屋などがひしめく一日中歩き回りたいこのエリアなら尚更だ。例えば’30年代のジャズが流れ、丁寧に珈琲を淹れてくれるこんなお店とか。

 ケヤキ並木沿いにある『Cafe Deux Oiseaux』 (カフェ ドゥワゾー)は、自家焙煎された豆を粗挽きでネルハンドドリップすることに拘る本格派。中南米やアフリカなど馴染みのものから希少なオールドビーンズまで、24種類の豆が揃う。愛用のポットと片面起毛ネルを使ってじっくり淹れる一杯は格別で、特に何が素敵かって、ドゥミタスコーヒーも嗜めるところ。フランス語で“半分のコーヒーカップ”という意味を持つソレは、小型(約半分)のカップに抽出されるから濃度が濃くなり、通常のコーヒーより豆本来の旨味がぎゅっと濃縮された味わいが楽しめる。

 店主・宗さんは、今のように“自家焙煎”という言葉自体が珍しかったころに本家『カフェ ド ランプル』で腕を磨いた。当時のお店には有名歌舞伎役者のような各界の文化人が集っていたのもあり、一杯出すごとに緊張したという。「お客さんに鍛えられましたね。美味しくないものは半分飲むと減らなくなることを知りました。なので私は、気がついたらなくなっているような、何杯でも飲める珈琲を出したい」。

 22時に店仕舞いを終えたら、そのまま朝刊が届くころまで豆を煎る生活を39年間続けている。カジュアルなお店で気軽に飲むのもいいけれど、こんな老舗で一杯を嗜む日もマイ・todoリストにあるような粋な大人になりたい。

インフォメーション

看板

Cafe Deux Oiseaux

阿佐ヶ谷駅から中杉通りを歩くこと10分。定番の18種類・メニューにない今月のイチオシ豆を2種類・ブレンドを4種類揃える喫茶店。自家焙煎と聞くと濃いめを想像してしまうけど、「珈琲の奥深い面白さや選択肢を広げたい」という想いから、すっきりとクリアな風味に仕上がる“粗挽き”で一貫している。濃さが出にくい分、通常よりも豆の量を増やして調整していることもあり、贅沢な淹れ方らしい。店名の由来は“2羽の小鳥”。宗さんと奥さんが作り上げる、品がありながらもリラックスできる空間にぴったりなネーミングだ

◯杉並区阿佐ヶ谷北4−6-28 ☎︎03・3338・8044 12:00〜22:00 木休