ライフスタイル

マイナーリーガーズの部屋。/デスク編

photo: Mai Kise (room), Kanta Torihata (product)
text: Fuya Uto
edit: Kosuke Ide
2026年2月 947号初出

2026年2月13日

 ティーコージー、エッグスタンド、ペーパーナイフ……。名前を聞いても姿カタチを想像しにくいのは百も承知。なんせこれらはスマホを筆頭にテクノロジーが発達した現代では、なくても(ぜんぜん)困らないアイテムだから。でも逆に言うと、だからこそ既視感がなくココロが弾み、日常にない使い心地や、その“無駄感” にそそられるじゃないか。今回、そんなお部屋の名脇役たちを「キッチン」と「デスク」周りにわけて、それぞれ8つのカテゴリーで集めてみた。これまでの連載を読んでくれている方には理解してもらえると思うけど、登場するアイテムのほとんどは機能的にはいたってシンプル。だからそのぶん、デザインには無限の余白が宿る。合理的ではないけど、あったら毎日の生活が(かなり)楽しくなる。騒がず目立たず、マイナーだけどイカすヤツら。マイナーリーガーズの歌を聴け。

デジタルの隙間に居座る、
机の上のはぐれものたち。

1.LETTER RACK
レターラック

交流手段のほとんどが瞬時にインターネット上で完結していることで、紙の需要が減り続けているのは言わずもがな。わずかに届く葉書や友人のDMをより一層大事にしたいムードが高まる今こそ、美しく整理してくれるレターラックがマイナーリーガーズのエースだ。朱色のパンチングメタルで3段に形作られたフランスの’70年代のヴィンテージは、今見てもモダンで差し込む行為も楽しい。¥47,300※トレーとセット販売(stoop☎03·4285·4128)

2. MAGAZINE RACK
マガジンラック

堂々たるサイズで、埃を呼び、整理を怠ればすぐに乱雑な束を生む。にもかかわらず、探せば新旧問わずゴロゴロ見つかる。やはり「今、惹かれているもの」をこれだけ見事にとどめておけるものは他にないと思わせる魅力があるからだろう。なかでも福岡発のデザイン集団「ENOUGH」のひとり、有吉祐人さんが手掛けるラワン材のラックの使い道は自由。読みかけの雑誌や文庫本、CDがぴったり収まる設計に。¥27,500 (organ☎092·512·5967)

3. BUSINESS CARD FOLDER
名刺フォルダー

アプリで管理すれば、検索窓に名前を打ち込むだけで目当ての人に辿り着けるのに、並び替えの手間もかかる名刺フォルダーを使うなんて非効率極まりない。それでも、一枚ずつ丁寧にスロットへ差し込む日々はなんだか温かいと思わないか。捲るたびに、そのときの空気感や相手の表情まで鮮明に呼び起こしてくれるはず。米国の「ニューウェル・ラバーメイド」社から1958年に発売され、回転式というギミックで愛された「ローロデックス」とか。

4. COIN BANK
貯金箱

財布を余計に太らせ、かといって銀行へ預けるのもめんどくさい小銭をどっしり受け止めてくれる頼もしい存在。キャッシュレス化が進む世界だからこそ、スリットへ落とし込んだときのチャリンッという響きには確かな「今日の重み」が宿り、そんなささやかな習慣が日々に良いリズムをもたらす気がする。〈アルテック〉からは貯金箱らしからぬ洗練された佇まいのものが出ていた。¥15,400(アルテック☎0120·610·599)

5. PAPER KNIFE
ペーパーナイフ

わかっています、指先でもカッターでも事足りるのは。あってもなくても、届いた手紙の中身は変わらないことも。そんな小声が聞こえる(言い過ぎ)この道一筋のヤツらは紙の封を切れさえすればOKだから、デザイン性がとにかく高い。過去のポパイウェブの連載で紹介していないもので言うと、イタリアの巨匠エンツォ・マーリが手掛けた機能美の極致、〈ダネーゼ〉の「AMELAND」だったり。¥14,300(クワノトレーディング☎03·6661·7964)

6. DESK CALENDAR
卓上万年カレンダー

月、日、曜日が連動する左右のツマミを回すことで1日分の日付が示され、こちらがうっかり間違えていても、騒がず黙り込んだまま。マイナーリーガーズらしい不器用な様でありながら、毎年買い替える必要もなく、電池も電波もいらないタフ極まりないヤツ。愛好家も多いアメリカの〈PARK SHERMAN〉の’70年代のものは重厚な金属の質感とメカニカルな動きがデスクに程よい緊張感をくれる。¥8,580 (COZY VINTAGE

7. PAPERWEIGHT
ペーパーウェイト

紙が風で飛ばないように置く「重し」であり、つまるところ重ければ何でもいい。ゆえに代わりを探せばその辺の石やスマホなどいくらでもあるにもかかわらず、古今東西作り続けられている人気者。ガラスや金属など紙とのコントラストが強い質感が上にあるだけで、途端に雑多な雰囲気に秩序が出現する不思議な効果も。こちらは〈ハイタイド〉発の廃棄予定のラムネ瓶から生まれたもの。¥2,420 (ペントノート☎024·573·1590)

8. ALARM CLOCK
目覚まし時計

起こす以外、何もしない。アラームは複数回セットできないし、曜日ごとに設定は変えられず、なかにはスヌーズ機能もないモデルもあるが、その潔さが今となってはイイ。今世紀最大の悩みである、起床時間をセットするついでについメールやSNSを覗いてしまうワナを避けられるのだから。どうせ気だるい朝なら、英国の〈Newgate Cube〉のようにポップな配色で一日を始めてみては。¥7,920 (MoMA Design Store 表参道☎03·5468·5801)