カルチャー

今年のベストを決めてしまう前に観ておきたい3作。

11月はこんな映画を観ようかな。

2026年11月1日

『すべて真夜中の恋人たち』
岨手由貴子(監)

©2026「すべて真夜中の恋人たち」製作委員会

 フリーの校閲者である冬子は、カルチャーセンターで歳の離れた物理教師の三束と知り合う。人間関係が得意ではない冬子はしかし、週に一度ほど奥ゆかしい喫茶店(『BIG BABY ICECREAM』の目と鼻の先に佇む新丸子の『喫茶まりも』か?)で三束と交わすささやかだけど大切な会話を通して、人生との向き合い方をちょっとだけ変えていくのだったが……。冬子役の岸井ゆきのと、三束役の浅野忠信の初共演が、今や“世界の”と呼んで然るべき川上未映子の同名長編小説の映像化によって果たされたことを、ただただ祝福したい。11月13日より公開。

『大富豪になるための正しい殺し方』
ジョン・パットン・フォード(監)

© 2026 / STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

 ある日、大富豪レッドフェロー家の娘メアリーは恋人との間に子を身籠る。夫が急死したのは、出産に反対の父から縁を切られた直後のこと。さらに悪いことに、貧しきシングルマザーとして一人息子のベケットを育てることになったメアリーも、若くして亡くなってしまう。孤立無援のまま大人になったベケットはしかし、遺産相続の権利まで失効したわけではない。かくして彼は法定相続人たちを次々に殺すことを決意するのだった。その殺戮のうまくいきすぎっぷりは、この映画がサスペンスというよりコメディであることを宣言しているかのよう。それをブーストさせているのが、優雅なカピバラのごとき笑顔を崩さぬグレン・パウエルだ。11月13日より公開。

『オルモと夏のステレオ』
フェルナンド・エインビッケ(監)1

© 2025 OLMO 2023, LLC. All Rights Reserved.

 1979年、ニューメキシコ州。14歳のオルモと親友ミゲルは、隣に住む憧れの少女ニーナからパーティに誘われる。しかし、行くことは許されない。なぜならその日、オルモは病気で寝たきりの父の世話をしなければならないからだ。では、どうするべきか。果たして、“親の目を盗んでパーティへ”というティーン映画ならではのストーリーは、単なる能天気さとは異なるベクトルで変奏されることになるだろう。かくして、他の家族も巻き込んだ波乱の一夜を描く本作は、いたずらに深刻というわけでもない。『ナポレオン・ダイナマイト』を彷彿とさせるようなオフビート感も漂っており、そのバランス感覚が心地いい。それを象徴するのが、〈トニーラマ〉のカウボーイブーツだ。11月20日より公開。