ライフスタイル
笑いか無礼か。 最後に決めるのは、関係性。
トンツカタン森本/あの人の失敗と教訓
2026年9月8日
仕事と失敗は二人三脚。転んだあとに、どう飛び起きるかが大切だ。あの先輩は、失敗をいかにして次へ生かしているんだろう。芸人のトンツカタン森本さんに話を聞いた。
「忘れもしないのが、2020年2月21日。佐久間宣行さんの特番ラジオに、僕とフワちゃんが呼ばれたんですよ。佐久間さんはフワちゃんを呼びたいけど、1対1だと不安だから、仲のいい僕を緩衝材として入れようと。でも直前にフワちゃんの裏かぶりが発覚して、出られなくなったんです」
ほとんど面識のない佐久間さんと、生放送で40分タイマン。佐久間さんは森本さんの動画を見たうえで、「なんでお前一人なんだよ」と愛のあるいじりを入れ、ツッコみやすい空気をつくってくれた。
「僕も『あんたが呼んだんだろ!』みたいに返して、ブースの中ではいい感じのプロレスができていると思ってたんです。でも、外が妙にざわついていて。本当に喧嘩してると思われたらしく、スタッフさんが仮眠していた三四郎の小宮さんを叩き起こして、仲裁させに来たんですよ」
さらにSNSでは、「売れてもいないのに、なぜ目上の佐久間さんへタメ口で強くツッコむのか」と批判が集まり、人生初のプチ炎上。
「同期はリアルタイムで『いい感じだぞ』ってLINEをくれてたんです。僕の芸風を知ってる人には、いつものやり取りに見えていた。でも知らない人には、ただの無礼な振る舞い。そこで、何事も関係性ありきなんだと気づきました」
ラジオでの失敗を振り返ったとき、大学時代の記憶もよみがえった。当時も、「なんでだよ」「うるせえよ」と日常的にツッコみ、周囲から「怖い」「なんで怒っているの」と思われ、人が離れていった。
「一人で過ごす闇の2年間がありました。でも3年生でお笑いサークルに入って、同じツッコミをしたら、今度はウケた。『さすがお笑いサークルだね』って。芸人という肩書や、ノリが通じる関係性があれば受け入れられるんだと思って、芸人を強く志したんです」
佐久間さんとのラジオは、その頃の失敗を繰り返した瞬間でもあった。
「自分の肩書や相手との関係性を無視して、また同じことをやっていたんですよね。でも佐久間さんと再会したときに『俺は面白いと思ったんだけどな』って言ってくださった。見放されてなかったんだって、すごくありがたかったです」
同じ言葉でも、芸人同士なのか、初対面なのか、その関係性が周囲に共有されているのかによって、受け取られ方はまるで変わる。考えてみれば、これは僕らの日常でもよくあることだ。
「それまでは、全部のワードが誰に対しても選択可能だと思ってたんです。でも、関係性が深まるほど押せるボタンも増えていく。最初は相手を立てるツッコミや、自分を下げるツッコミから始める。信頼関係ができてからなら、強くもいける。その人の線がどこにあるのかを、すごく大事にするようになりました」
笑いが取れたとしても、相手を傷つければ、その後のパフォーマンスに影響するかもしれない。
「例えばアイドルに強くツッコめば、その場はウケるかもしれない。でも、引きずるかもしれないと思ったら、別の言葉に変える。ツッコミは、ボケる人がいなければ商売上がったりなので、周りがボケやすい環境をつくるのが最優先です」
その姿勢からか、今では芸人が自分一人だけという現場も増えた。
「演者とスタッフさんの間にいるような感覚です。スタッフさんのやりたいことと、演者さんの見せたいものを両立させていく。自分がドカンとウケるのとは違うけど、そこにもまた別の気持ちよさがありますね。無理に笑いをつくろうとすると、場の空気を乱してしまうこともある。でも人って、ずっと話していれば、必ずどこかにほころびが出てくると思うんです。個性とか、その人ならではの変な部分とか。だから自然に話を聞きながら、相手の面白さが出てくるのを待つ。そうすれば、絶対にツッコみどころは見つかると思っています」
失敗から学んだのは、ツッコミの強さを弱めることではない。相手との関係を見極めながら、使う言葉を選ぶことだった。
「芸風をガラッと変えたというより、押していいボタンを見極めるようになったんです。その人が安心してボケられる場所をつくる。今の僕は、そういう失敗の積み重ねからできている気がしますね」
プロフィール
トンツカタン森本
とんつかたんもりもと|2013年にお笑いトリオ「トンツカタン」を結成。2026年4月に解散し、現在はピン芸人としてテレビやラジオで活躍中。著書に『ツッコミのお作法 ちょっとだけ話しやすくなる50のやり方』(KADOKAWA)
Instagram
https://www.instagram.com/smnypktn/
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