ライフスタイル

雨乞い

あたらしい私のいえは、東京 森のいえ Vol.4

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

2026年2月26日

photo: Masaru Tatsuki

年始、実家のある愛知から檜原村へ戻る際、中央道の談合坂サービスエリアを最後の休憩とした。車の中でヨウにおっぱいをあげていると、そのすぐ頭上を水を運ぶヘリコプターの姿があった。上野原市の扇山で発生した山火事の現場が見えたのだ。むこう2週間の予想雨量はほぼゼロ。これだけ空気が乾燥していては火が消えるにはまだ時間がかかりそうだと思った。

他人事ではなく私たちの住む集落も雨が降らず水不足になっていた。私とヨウは、檜原へ戻る日を予定より少し遅らせていた。赤子がいては水が出ない生活に苦労するだろうと集落の皆が実家にもう少し居た方がいいよと電話をくれたのだった。こういう時に集落に居られないことは申し訳なかったが、トシキだけ先に戻ることになった。その数日後には村役場が集落のタンクに注水をしてくれるようになり、少し遅れて戻ることができた。昨年の夏ごろから雨量が少なく、冬に入ってからも関東平野にはなかなかまとまった雨が降っていなかった。ラジオでも全国的に記録的なことだと話していた。

集落の池はずっと枯れている。

私の集落では上下水道が通っていない。上水は湧水と沢水を直接各家庭へ引いて生活水としている。集落の上流部の水が湧き出ているところや沢のあるところから重力を使い、細い管をつたって各家庭へ流している。その中継地点にはいくつかのタンクを設置して10世帯ほどが安定して水が使えるように貯水している。タンクなどの掃除や、修繕などの管理は集落の住人(自治会)で行っているので、今回のように水が出なくなったら、住人達でタンクの水量やどれだけ流入があるかなどを確認する。漏水ということも考えられるので、その都度何が原因での水不足なのかを究明する。今回は漏水もあったが、雨が降っていないことによる流入の少なさは明らかだった。水は、降った雨が地面に染み込み土の中を通って濾過されて出てくるので、これだけ雨が降らない日が続くと、水源では水の音がほとんど聞こえないそうだ。新緑の時期にも木々達が水を吸い上げるので同様に水が少なくことがあるが、これほど水がたまらないのは初めてだとジローさんも話していた。

15センチくらいだろうか。つい先日檜原にも雪が降った。もちろん土にしっかり水が染み込むには全く足りないのだけど、少しほっとした気持ちになった。

今日も200Lの水を積んだ村役場の軽トラが家の前の道を上がっていく。週に2日ほど注水してくれているので、今はその水で生活ができている現状だ。蛇口をひねれば水が出るのが当たり前だった生活は、ここで生活をするようになってから、自然の営みに左右されるようになった。来月にある集落の春祭りでは山の神様へどうか雨を降らしてくださいとお願いするんだろうと思う。

家のベランダからの景色。相変わらず今年も雪景色はとても綺麗だ。

2月に入ってから集落では、新しい水の線を引く計画をしているそうで、トシキ含め数人が休日に水源を見てきたそうだ。次の週末は水源からの距離を測るらしい。私は暖かいスープでも作ってヨウと家で待つことにしようか。今日も皆ここで暮らすことに前向きである。

新しい水源。苔の上を水がつたっている。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて5年程生活。現在は村内の林業会社に勤めながら、家族で森の中の古いログハウスで暮らしている。