ライフスタイル

東京の部屋。Vol.1

都会を生きるシティボーイの、リアルな拠点をドキュメント! 家賃も広さも関係なくて、自分が心地いいってことが大事なんだ。

2026年2月21日

部屋とシティボーイ ’26


photo: Naoto Date(1,3), Hiroshi Nakamura(2)
text: Shun Koda(1,3), Shintaro Kawabe(2)
2026年3月 947号初出

TOKYO ROOM #1
石黒晴輝 〈byeA.〉 ディレクター

16㎡を余すことなく活用する壁面の見せる収納術。

 キャップブランド〈バイエー〉の石黒晴輝さんが、6年前の上京を機に選んだのは、わずか16㎡の極小ワンルーム。「当時は荷物も少なかったけど、気づいたら指数関数的に増えていって……」と笑うとおり、今や床から壁までびっしり。ミニマリストの対極。例えるならテトリス終盤のような密度だけど、この雑多さこそが居心地の良さなのだそう。「体をくるっと回せば全部手が届く距離。着替えも食事もベッドの上で完結できるから、意外と合理的なんです」

「スペースがあれば、すべて埋めたい」という主義のもと、『ブティック 青山』の金子恵治さんからもらったピストバイクも迷わず室内保管。さらにホウキ掛けとして活用するなど、一切の無駄がない。掃除はこのホウキ一本で事足りるそう。

九龍城の如く、崩壊寸前な服収納。嵩張るアウターが少ないからこそ成立している。

コンクリートの打ちっぱなしの壁を生かすべく、ホームセンターで購入したボルトを付けて、即席のハンガーラックに。「このアイデアを思いついたときが、マキシマリストの入り口でした(笑)」

インフォメーション

AREA | 下高井戸
SPACE | 1R 16㎡
REMARK | 世田谷線から至近距離にある半地下のような物件。防音性が高く、室内はかなり静か。

TOKYO ROOM #2
須山誉志雄 理容室『YS』オーナー

1920年代の眺めを追い求めて。ストイックに作り込んだ非日常空間。

 ここは日本映画のセット? ではなく、須山誉志雄さんが営むバーバーショップ『YS』の2階にある部屋。これほど唯一無二な世界観が仕上がっているのは、1920~’50年代欧米のクラシックなスタイルを偏愛する須山さんが、「当時世界中を旅した日本人が暮らす和洋折衷な居住空間」をテーマに部屋作りをしたから。1ルームの中に日本の古い飾り棚や、1910年代のアメリカのトランクなどが違和感なく共存しているけれど、ベッドはどこに? 「布団があると生活感が増すので、ドラえもんみたいに押し入れを寝床にしました。ちなみに冷蔵庫もバーカウンターの下に隠しています。’20年代にないものが剥き出しだと、リアルから遠ざかってしまうので(笑)」

「1951年のミュージカル映画『巴里のアメリカ人』で、主演のジーン・ケリーがチェーンを引っ張るとベッドが下りてくるシーンを着想源に、布団は押し入れの上段に配置しました」。体重に耐えられるほど厚い木材を敷いたり、電気線を繋いで照明を灯せたり、寝室の環境を完備。

コートやスーツなどの服は押し入れの下段に収納。

友人が遊びに来たらバーカウンターでウイスキーなどのお酒を振る舞う。頭上から照らす1930年代フランスのランプシェードは、トロントに住んでいた頃にプレゼントされた思い出の一品。このブルーとゴールドを基調に空間作りをしている。

外では欠かさずにかぶるというハットも室内では脱帽し、重ねて保管。筒形の帽子ケース、トップハットボックスもお気に入り。

部屋の一角に、趣味の一つだというパイプたばこの置き場がある。「1920年代のクラシックなスタイルを確立する上で、欠かせないアイテムです」。祖父母の愛用品という古物が部屋中に点在していて、机上に置かれた日本の古いジュエリーボックスもその一つだとか。

インフォメーション

AREA | 稲荷町
SPACE | 1DK 46㎡
REMARK | 古き良き日本の商店のように、1階をお店、2階を住居にするためこの店舗物件に入居を決断。

TOKYO ROOM #3
ケビン・チン コンテンツクリエイター、フリーPR

白いキャンバスに並ぶ、カラフルポップカルチャー。

 現代アートから浮世絵、中国の曼荼羅、さらにイスタンブールのアート作品まで。まるでシルクロードのように、さまざまな文化が交差した一室。これほどジャンルレスなのに、不思議とまとまっているのはなぜ? 「カラフルなものを置くため、元々グレーだった壁や木目の天井を白くペイントして、シンプルに整えています」。なるほど、部屋そのものをキャンバスに見立てているわけだ。

玄関のデッドスペースをDIYでシェルフに転用。出先にサッと手に取りたい香水やハンカチはもちろん、アメリカントイや日本の編みかごも同居させ、ここも贅沢な飾り棚に。

上/愛猫の珠美ちゃんもお気に入りのダイニングテーブルは、’80年代の〈ハーマンミラー〉。壁面にはアイコンの初期作や〈イッセイミヤケ〉のポスターなどが。右下/「宇宙船?」と思いきや、実はイタリア製のゴミ箱、オベット。

インフォメーション

AREA | 参宮橋
SPACE | 2LDK 64㎡
REMARK | 築56年のリノベーション物件。2面採光のため、日当たりもよく夕暮れまで明るい空間。