ライフスタイル

家賃の高いNYで、好きなものの収集と快適さを両立する部屋。

in NEW YORK

2024年2月28日

世界のかっこいい部屋と、その秘密。


photo: Takeshi Matsumi
illustration: Midori Komatsu
text: Shimpei Nakagawa
2024年3月 923号初出

Daniel Pacitti/〈CEASE〉Director
ダニエル・パシッティの部屋

一点ものの調度品に友人が自分のために作ってくれたアート。オリジナリティと色彩が詰まったワンルーム。

 ストリートブランドのデザインチームに所属しながら、昨年スタートしたブランド〈CEASE〉もイケイケのダニエル・パシッティが、仕事の関係で地元のロンドンからNYに引っ越してきたのが1年前。近年、家賃が高騰するNYでリーズナブルでロケーションも良しな物件を見つけるのは至難の業だが、偶然友人が引っ越すタイミングが重なり、他の物件を見ずに即決で引き継いだのが、いつも賑わうローワー・イースト・サイドにあるアパートだった。

お気に入りは〈C.P. Company〉のショルダーバッグ

玄関脇には〈C.P. Company〉や〈Undercover〉×〈Eastpak〉などがかけられたカバンコーナーが。「普段あまりバッグは持たないけど、必要なときは自分の普段のスタイルにフィットするショルダーバッグが多いね。朝急いでるときも玄関脇にあれば、ガサッと荷物を入れてすぐ出ていけるからまとめて置いてるよ」
①『ニル・バイ・マウス』の日本語ポスター
②パートナーのカバンたち

「インテリアのコンセプトはこれといってないけど、洋服のコーディネートと同じように色は意識してる」と語るように、インドで買ったラグやブランケット、友人のアート、LAの〈Earth Landing Project〉のランプなど色彩溢れる空間を見上げると、綺麗に畳まれた洋服がぎっちり詰まった収納棚が玄関までズラーッと続く。

ロンドンで見つけたカモメ

「ここにあるフリースはすべて〈Patagonia〉のもので、ニットもジップアップとそうでないものに分けてる」と語るように、テレビ上の棚にはよく着る中間着やショートパンツをカテゴリー別に収納する。
2軍のシューズは頭上に収納

キッチン入り口の頭上には出番の少ない靴を仕舞っている。「最近はもっぱら〈アシックス〉ばかりで履いてないものも多いけど、やっぱり捨てられないんだよね」
①’80年代の〈Klipsch〉のスピーカー
②前の住人の置き土産の〈Sansui〉のレシーバー
③〈BERNINI〉のモジュラーテーブル
④ガエタノ・ペッシェのブロードウェイチェア
⑤ノグチ美術館で買った金魚の紙風船


イタリアンデザインが好きだというように、TV周りは、現在4脚所有するガエタノ・ペッシェのブロードウェイチェアとルドルフォ・ボネットがデザインした、扇形の4つのパーツを組み替え、テーブルやシェルフとして使うことが可能なモジュラーテーブルを中心に構成。NYで揃えたサウンドシステムでよく聴くのは、ヤビー・ユーやキング・タビーなどジャマイカ音楽みたい。「間に合わせのスピーカー下の棚だけどうもしっくりこなくて、セットの棚を探してるんだ。木製がいいと思ってる」

「以前住んでいた友人がカスタムしたものなんだ。仕事柄、自分で着るものだけでなく、デザインのリファレンスのためのアーカイブもあるし、服に限らず収集癖があって(笑)。決して広いとは言えないスペースだから、できる限りの収納を確保するのと同時に、どうやって快適な場所を作り上げるかを考えて今に至るんだ。もともと2つの部屋に分かれていたんだけど、自分たちで壁をとっぱらって一つのスペースにしたのは正解だった」。限りある広さでも、好きなものに囲まれながら心地よく暮らす、若きニューヨーカーの工夫はお見事!

部屋
①部屋にあるすべてのペインティングはルーカス・ディロンの作品
②ロンドンから持ってきた〈Togo〉のソファ
③ブラジル先住民ヤノマミ族のバスケット
④ロンドンから持ってきた〈Eero Aarnio〉のテーブル
ガエタノ・ペッシェの壁がけ時計

椅子と同じくこちらもガエタノ・ペッシェ作のウォールクロックで、ハンドメイドのためそれぞれが一点もの。「NYを拠点にしているから、いつか会ってみたい」
オンラインで買ったシャワーカーテン

バスルームからお気に入りのカエルのシャワーカーテンが覗くキッチンは、「棚をペイントしようと思っていて、現在色を検討中。白もいいけど、パートナーと楽しく料理したいし、オレンジもしくは黄色でもいいかなと思ってる」。
Tシャツ
①ダニエル・ジョンストンのTシャツ
②ロンドンの友人が作ってくれたアート


尊敬するというダニエル・ジョンストンのヴィンテージTシャツの隣には、キャメロン・ウィルソンのステンドグラスアートや、ルーカス・ディロンのペイントなど、地元ロンドンを拠点にする友人アーティストの作品を。
ランプ
〈Earth Landing Project〉のランプ

インスタグラムでたまたま見つけたというLAの作家〈Earth Landing Project〉のランプは、「レジンでできたシェードもアームも同じものが二つとない一点もの。仕事でLAに行った際にスタジオに遊びに行って購入決定。ランプというかもはやアート作品だよね」。

This Is How To Live In My Room.
“洋服の収納はまだまだあるんだよ”

01. Tシャツとアウターはここに。

ヴィンテージの〈Stone Island〉や〈C.P. Company〉のコレクターのダニエル、玄関入ってすぐにある棚にアウターとヴィンテージTシャツを収納する。「ご覧のとおり、アウターは色物とモノトーンで分けてる。最近は色違いで持つ〈Crescent Down Works〉のダウンばかり着てるよ」

02. お気に入りのTシャツはこちら。

「音楽ネタ、グラフィック、アート、ヘンテコ系という感じで、カテゴリーで分けて積んでるんだ。アメリカのスリフトストアはヘンテコ系にめっぽう強い(笑)」。
上/ダブの創始者ともいわれるキング・タビーの2000年代初頭のTシャツ。
右/LAで見つけたTシャツはキャラクターのコートがめくれるようになっていて、「その中はご想像にお任せします(笑)」。

03. おかげさまで日本でも人気の〈CEASE〉、ありがとう!

2022年に友人とスタートし、現在日本でも『ドーバー ストリート マーケット ギンザ』を含め6店舗で取り扱いのある〈シース〉。「アメリカ製にこだわっていて、生地は言うなれば’60年代のリバースウィーブの質感を持つ極厚スウェット。日本の人たちにも気に入ってもらえてるようで嬉しい」。ネオングリーンは次にリリースする新色だとか。

Area: NY ローワー・イースト・サイド
Space: 1K 46㎡

レストランやカフェ、バー、セレクトショップに古着屋などが多く、昼夜問わず様々な人で賑わうエリアの中心地にある、1900年築のビルディング。理解のある大家さんでリノベーションも割と融通がきくよう。入居時の間取りはミニマルな1DKだったものの、「少しでも広く感じる空間にしたい」と、1つの部屋にトランスフォーム。

教えてくれた人

ダニエル・パシッティ

Daniel Pacitti

〈CEASE〉Director

ダニエル・パシッティ|1999年生まれ。都内でも取り扱うお店で品薄となっている自身のブランド〈CEASE〉のディレクター。パートナーと2人暮らし。