ライフスタイル

世界の部屋。/SUFFOLK

2023年3月3日

photo: Jack Orton
coordination: Keita Hiraoka
edit: Hiroko Yabuki
2023年3月 911号初出

家とはつまり、住む人の作品なのかもしれない。

Ryan Gander
ライアン・ガンダー︱1976年、チェスター生まれ。ロンドンとサフォークを拠点に彫刻、ペイント、映像作品などを発表。この日着た〈ラベンハム〉とのコラボベストが3月に限定発売。
かつて学校の教室だったスペースを改修して作ったオフィス。奥のエルノ・ゴールドフィンガーの棚は「ムードボード」で、そのとき気になるモノをコラージュ。アレキサンダー・ジラードのウッデンドールと、そびえ立つこけしに思わず目を奪われる。手前には〈USMモジュラー ファニチャー〉キャビネット。中にはジュエリーやナイフ、王室から授与された大英帝国勲章のメダルも。学校というか、むしろ博物館みたいだ。

 ライアン・ガンダーといえば、僕らが無意識に抱く既成概念を時としてお茶目にぶち壊してくれるアーティストなのだが、その根城はやっぱり規格外だった。2軒の家を合体して改修。仕事部屋サイドは元小学校で、デスクのあたりが教壇だったってのも面白いが、後ろの「ムードボード」もなかなかのカオス。そして圧巻なのがヨゼフ・アルバース邸を完コピした暖炉。角度をつけて埋め込まれた煉瓦の上にちょこちょこと飾られているのは「旅先で出合った面白いモノ」。よく見ると缶詰にサイコロ、目覚まし時計……? 「これらは私が追求し続けるテーマである“時間”を象徴しているんだ。その根底には、時間はお金よりもずっと価値があるという考えがあるんだよ」。さすが現代美術界の異端児の家。これこそが彼の最大の作品なのかもね。

DINING & KITCHEN-

ダイニングテーブルはオーク材の天板を自らデザインして作った。
壁には自作のペイントを2つ並べて配置。
キャビネットに並ぶ日本のお猪口の多くは友人からのギフト。「私にとっては濱田庄司やバーナード・リーチと同じくらい意味のあるものなんだ」。

-LIVING ROOM-

ゲストが来たらもう一つのリビングへ。「ここは好きなアーティストの作品を飾るスペース。John Baldessari、Bedwyr Williams、Sam Porritと、物々交換もしながら集めたんだ」 
月をモチーフにした自らのペイント「This natural sign (I just watched)」も。照明も自作で、「A lamp made by the artist for his wife (Second attempt)」、妻のために作ったライト!
暖炉のあるリビングは、家族とゆっくりと過ごす定番の部屋。北欧家具のディーラーから仕入れたヴィンテージソファに〈アーコール〉のチェア。〈イームズ〉のラウンジチェアとオットマンも置かれていて、シンプルに居心地がよさそう。「家には色々な意味があるが、やはり第一に家族団欒の場。改修したとき、みんなで集まる空間を作ることを考えたんだ」。壁の作品はアルゼンチン人のアーティスト、Alek O.のもので、ニットを素材に作られている。

-WORK STUDIO-

オフィスでは書きものをしたり、アイデアを練ったり。別にスタジオもあり、大掛かりな制作はそこで行う。デスクの奥にはマルティーノ・ガンパーの「100日で100脚の椅子」シリーズの、車輪付きの椅子も置かれていた。
200年前のメキシカンラグを飾ったコーナーも。美しい色のグラデーションが気に入っている。

-BOOK SHELF

ど迫力の本棚にはデザイン関係や和食の本や雑誌が。
ガラスケース内のシルバーネックレスは「フォルムの美しさに惹かれた」アンニ・アルバースの作品。

-STAIRS