家とはつまり、住む人の作品なのかもしれない。

ライアン・ガンダー︱1976年、チェスター生まれ。ロンドンとサフォークを拠点に彫刻、ペイント、映像作品などを発表。この日着た〈ラベンハム〉とのコラボベストが3月に限定発売。

ライアン・ガンダーといえば、僕らが無意識に抱く既成概念を時としてお茶目にぶち壊してくれるアーティストなのだが、その根城はやっぱり規格外だった。2軒の家を合体して改修。仕事部屋サイドは元小学校で、デスクのあたりが教壇だったってのも面白いが、後ろの「ムードボード」もなかなかのカオス。そして圧巻なのがヨゼフ・アルバース邸を完コピした暖炉。角度をつけて埋め込まれた煉瓦の上にちょこちょこと飾られているのは「旅先で出合った面白いモノ」。よく見ると缶詰にサイコロ、目覚まし時計……? 「これらは私が追求し続けるテーマである“時間”を象徴しているんだ。その根底には、時間はお金よりもずっと価値があるという考えがあるんだよ」。さすが現代美術界の異端児の家。これこそが彼の最大の作品なのかもね。
–DINING & KITCHEN-




-LIVING ROOM-
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リビングの主役はこの暖炉。ヨゼフ&アンニ・アルバース夫妻のアメリカ在住時代の家の暖炉を、本や資料を参考に、財団の許可を得て精密に復元した。「許可取りに4か月、制作に1年かかった力作さ」 -
リンゴに浮輪、「タン塩」「ハラミ」の文字入りサイコロ。謎すぎる。煉瓦の部分は棚も兼ねていて、モノはたまに取り出して使っているそうだよ。



-WORK STUDIO-

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「ムードボード」には友人の妻による染め物や、人間の表情や仕草を連続写真で見せる’70年代の本『Fairburn System of Visual References』など。 -
昔から好きなアレキサンダー・ジラードのウッデンドールはこけしとのペアリング。「数をたくさん見せることでより面白さが際立つと思う」というのが持論。 -
デスクはデンマーク産のヴィンテージ。その上には昨年東京オペラシティで開かれた展覧会の図録やノートブック、普段使いのデジカメ〈富士フイルム〉X-T3など。五線譜はスケッチ用だそう。

-BOOK SHELF–


-STAIRS–
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2階への階段には水準器(水平や垂直を測る道具)をモチーフにした自身のアートワーク「Everything is relative(L’esprit de l’esca lier)」が埋め込まれている。つまり階段自体がアートってこと! -
「自分の作品を家の一部に使いたかったんだけど、目立ちすぎるのは好みじゃなくてね」
