ファッション

手芸とクマとスポーツと。”あの頃”が詰まった〈ザ・ボックス〉の謎。【後編】

photo: Koh Akazawa
text: Toromatsu
edit: Kosuke Ide

2025年3月22日

〈ザ・ボックス〉の謎を紐解く、ある人物からの情報。

「スポーツスタイルのクマ」をモチーフにした、謎めいた80’sアップリケブランド、〈ザ・ボックス〉を追いかけるべく調査を開始した僕は、フェイスブックを通じて、当時このブランドと関わりがあったという檀上四門(だんじょう・しもん)さんという方とコンタクトすることに成功した。

サーフィンブームの象徴的ブランド〈ライトニングボルト〉のロゴをスノーボードに取り入れていたり。

〈ライトニングボルト〉に負けず劣らず大ヒットしたブランド〈タウン&カントリー〉のロゴも再現。(数十年前のアイテムです、悪しからず!)

以下、檀上さんとのメッセージのやり取りでわかったこと。

・「ザ・ボックス」の発祥地は吉祥寺で、全盛期には横浜、軽井沢を含む3店舗を構えていた。

・デザイナーの名前は「今泉ふみ」さん。

・ブランド名は、開けてびっくり玉手箱、驚きと感動を与える箱、という今泉さんの想いが由来。

・当初アップリケはすべて手作りで、生産数が限られていたこともあり、比較的高価なブランドという位置づけにあった。

・’80年代には、伊勢丹新宿シーズンスポーツ売場でかなりの販売実績を記録していた。

・’90年代に事業譲渡を申し入れ、「伊勢丹」がブランドと商標権を含めて買収。「(株)ザ・ボックス」として、新たに立ち上がった。(ちなみに檀上さんは伊勢丹子会社として他の百貨店に新規開拓する営業マンだった)

・のちに「(株)ザ・ボックス」も業務停止となるが、「伊勢丹」の子会社にいた営業部長・大池柳二さんが会社を退職し、〈ザ・ボックス〉を譲り受けて自らの資金で起業。吉祥寺に新店舗をオープンした。

・吉祥寺井の頭公園の近くに路面店を作り継続したが、2005年頃に閉店。

・インターネットでの販売が続くも、惜しまれながら2010年頃に閉鎖。

おそらく初期ロゴ。

比較的初期のロゴ?

こちらも初期のほう?

商業感が出てきている。

「伊勢丹」買収以降かな。

〈ザ・ボックス〉に思い入れがあった檀上さんのおかげで、色々とわかったことはあるものの、未だ当時の店舗やデザイナー今泉ふみさんの写真などは何も見つけられていない。カタログはもちろん、雑誌に載っている記事ひとつもである。一度、フリマサイトで出品されていた〈ザ・ボックス〉のアイテムに「母が働いていたときに買ったものです」という記述があったので、すかさず「お母さまが〈ザ・ボックス〉の店舗で働いておられたのですか?」と質問を投げかけたところ、不審者扱いされたのか、商品ごと消えてなくなってしまった(笑)。

 いずれにしても、これだけ多くのアイテムが未だに二次流通しているくらいだから、〈ザ・ボックス〉はかつてはかなり人気のブランドだったに違いない。ちなみに、クマのアイコンで知られるあのアメリカンブランドが、実は〈ザ・ボックス〉に影響を受けた、てな噂もあったりするらしい。確かに似ている部分はなくはないが……。

もしかして……?

 ともかく僕は、このブランドのことがもっともっと知りたくてたまらない。だからもしこの記事を見て、〈ザ・ボックス〉について何か知っている人がいれば、ぜひPOPEYE Webへお便りを送ってください。そして願わくはいつか今泉ふみさんにお会いして、当時のお話をお伺いしたいのであります。

これはアレかな……?