ファッション

〈ハミルトン〉とクリストファー・ノーランの話。

KHAKI AVIATION PILOT DAY DATE AUTO / KHAKI FIELD MURPH 38mm

2023年11月23日

小旅行とパッキング。


photo: Tetsuo Kashiwada
illustration: Dean Aizawa
text: Koji Toyoda
2023年12月 920号初出

時計

「映画製作における不可欠なプロップ」と時計を捉える映画監督クリストファー・ノーランは、〈ハミルトン〉に対して並々ならぬ愛を注ぐ。『ダークナイト ライジング』でブレイク巡査の時計として採用したのを皮切りに、2年後の『インターステラー』では、人類の存亡に関わるモールス信号を送る装置として「カーキ フィールド マーフ」が物語の鍵を握った。作品のプロダクションマネージャーと〈ハミルトン〉、そして監督自身がデザインを一から考案した一本は、既存のパーツを組み合わせて完成した特注品だ。クラシックなコブラ針にヴィンテージライクな蓄光塗料を施したインデックス、ブラッシュ加工のシルバーケース。かつて存在したかのようなどっしりした面構えに監督もさぞご満悦だったらしく、私生活でも着けているとか。その後『TENET テネット』では挟撃作戦で重要な意味を持つツールとしてオリジナルモデルが、最新作『オッペンハイマー』でも、’20~’60年代のヴィンテージが脇を固めているそう。映画がスタイルサンプルの宝庫というのは自明として、劇中に登場する時計を手にするワクワク感を味わえるのは、ハリウッド映画とともに歩み、密接な協力関係を築いた〈ハミルトン〉ならではの魅力かもしれない。

『インターステラー』

映画『インターステラー』
壊滅の危機に瀕した地球を救うべく、新たなフロンティアを求めて宇宙に旅立つ父クーパーと、地球に取り残された娘マーフの時空を超えた絆を描く。娘に授けられた時計を通じて、地球脱出に関わる重要なメッセージが届けられる。
©︎Picturelux/アフロ

SMALLER TALK
ハミルトンと映画の話。

時計

〈ハミルトン〉の時計は、約500本の映画に出演。上の2本は好例で、左の「PSR」は、『007/死ぬのは奴らだ』に登場。右の「ベンチュラ」は、『メン・イン・ブラック』のエージェントの装備。近未来的なデザインセンスに惚れ込んだスタンリー・キューブリック監督も、『2001年宇宙の旅』で時計制作を同社に依頼。PSR¥116,600、ベンチュラ¥134,200(ともにハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン)


BRAND STORY

〈ハミルトン〉ロゴ

1892年、ペンシルベニア州で産声を上げた老舗ブランド〈ハミルトン〉。鉄道黎明期に懐中時計が米軍に正式採用されると、2度の世界大戦で公式サプライヤーに。戦後はエルヴィス・プレスリーが愛用した「ベンチュラ」を筆頭に、様々なカルチャーと結び付く。

インフォメーション

時計

〈HAMILTON〉KHAKI AVIATION PILOT DAY DATE AUTO / KHAKI FIELD MURPH 38mm

右/『インターステラー』で主人公が愛用した一本。既存モデルが採用された。ケース径42㎜。自動巻き。¥156,200
左/劇中と同じ42㎜径で2019年に発売されたモデルが小ぶりな38㎜で昨年密かに新登場。より着けやすいサイズ感になった。自動巻き。¥136,400(ともにハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン☎03·6254·7371)