ファッション

伯父さんみたいな時計を一本。

CLASSIC FACE

2023年5月25日

photo: Kazuharu Igarashi
text: Ryoko Iino
edit: Koji Toyoda
2023年6月 914号初出

一つのものを長く使うに越したことはないし、オーセンティックで使い回しの利くものも知っておきたい。となると、クラシックな顔つきの文字盤はやっぱり気になる。ここに登場するのは、どれも華美なところがなく、着実に時を刻むいぶし銀な時計。〈オメガ〉や〈IWC〉のような歴史ある名機から、国産のクオーツまで、シンプルゆえに選択肢が多いのもいいところ。

伊東正彦
〈Steven Alan〉ディレクター
MODEL : Skyliner
BRAND : SEIKO
MOVEMENT : Hand Winding
YEAR : 1960s
CASE SIZE : 38mm

「昔は〈ロレックス〉を着けていたけど、50代になり貫禄が出た僕には少しいやらしい気がして」という伊東さんが最近傾倒するのが〈SEIKO〉。このスカイライナーは、’60年代に薄型高級ライン『セイコー ライナー』の普及版として登場したもの。「地元に前身の諏訪精工舎があったこともあり、日本の時計は〈SEIKO〉推し。これは薄さとシンプルなデザインが好きで、日課となる手巻きも気持ちいい。ベルトを緩くし、気軽なブレスレットのように使っています」

長谷川踏太
クリエイティブディレクター、『ギフティ』CCO
MODEL : unknown
BRAND : ELGIN
MOVEMENT : Hand Winding
YEAR : unknown
CASE SIZE : 38×22mm

創業の1864年から1968年の廃業までアメリカ製を貫き、西欧の技術と肩を並べた〈ELGIN〉。「時計はいろんなデザインが凝縮された持ち運べる芸術」という長谷川さんは、その高級ライン「LORD ELGIN」の、14金スクエア型を愛用。「とある店でこのベルトだけ買おうとしたら『これには絶対〈ELGIN〉』とすすめられたんです。書体が間抜けだとそればかり気になるので普段文字盤に数字があるものは避けますが、これはフォントも美しい」

井手脇達弥
〈Smoke Tone〉製造者
MODEL : Old Inter
BRAND : IWC
MOVEMENT : Automatic
YEAR : 1970s
CASE SIZE : 35mm

「シンプルで装飾のないザ・時計」に憧れた井手脇さんが、20代前半に『ワンミニッツギャラリー』で購入したのが’70sの“オールドインター”。18万円だった。「アメリカ人がスイスで創業したメーカーというのもアメリカモノ好きの自分が惹かれた点。本当はよりシンプルなノンデイトがよかったけど、こればかりは巡り合わせです。当初はクロコダイルのベルトでしたが、最近やっとカーフレザーを発見」と、今も普通を追求中。

原田教正
フォトグラファー
MODEL : PHYNOX
BRAND : CITIZEN
MOVEMENT : Hand Winding
YEAR : 1980s
CASE SIZE : 34mm

「モノトーンの服装が多いので、それに合う上品な時計が好き。その中で〈CITIZEN〉にはあまり興味がありませんでした」という原田さんの考えを覆したのが、耐久性の高いPHYNOXの’80年代のもの。「フェイスにレコード盤のような細い溝があり、遠くから見ると質感がマットに見えて洗練された雰囲気があるんです。時計はTPOで使い分けますが、これは嫌みなところがなく、服や靴を選ばないので使用頻度が高いです」

増田信希
〈PWA〉デザイナー
MODEL : Seamaster
BRAND : OMEGA
MOVEMENT : Automatic
YEAR : 1970s
CASE SIZE : 35mm

「父が着けていて憧れがあり、身の丈にも合うかな」と、商社マン時代の増田さんが最初のボーナスで購入したのが、〈オメガ〉が誇るダイバーズウォッチのシーマスター。「クラシックな金のフレームと実用的なデイト仕様。それを条件に見つけたのが’70sのもの。『〈オメガ〉は若いときにしか着けられない』と聞いたこともあるけれど、今もスーツに合わせると気が引き締まる。名刺入れや手帳が黒いので、それに合わせて黒い革ベルトに替えています」