ハンカチをポケットに入れ忘れただけで、そわそわと落ち着かないのは僕だけじゃないはず。手を洗えばハンカチで手を拭くという当たり前の行為を、普通に行える人はきっといろんなことがちゃんとできる人間だ。持論だが、コーディネートは最後にハンカチを選ぶことで完成すると思っている。たくさん持っていれば、どれをポケットに入れようかと毎朝考えるだけでもなんだか楽しいので、ちょっと気の利いたものならいくらでも欲しいのである。

ミラノの「リナシェンテ」の4枚組のハンカチ
海外に行ったら必ず、その国のお国柄が出るハンカチを買うようにしています。ミラノの百貨店「リナシェンテ」の下着売り場では、この4枚組のものを何度か買いました(写真左)。イタリアらしく色のグラデーションは冴え、綿の素材感もしなやかで、吸い取りもよく、約10年、毎日のように使っていますが、生地のクタリ感もほぼありません。縫い代の始末がループ状になっているので、チーフとしても使えそうなくらいです。ロンドンに行けば必ずジャーミンストリートを覗くのですが、こちらは『ターンブル&アッサー』で買いました(写真右上)。シャツの残布で作られたものですが、縁の繊細でかわいいチェーンステッチにブリティッシュトラッドが宿っていましたね。
教えてくれた人

伊東正彦
いとう・まさひこ|1968年、長野県生まれ。〈STEVEN ALAN〉ディレクター。’92年に「ユナイテッドアローズ」に入社し、メンズバイヤー、プレスを経て、2013年から〈スティーブン アラン〉のディレクター。今気になるのは葉巻。

〈ロレックス〉のノベルティハンカチ
ハンカチは100枚ほど持っていますが、最近のお気に入りは〈ロレックス〉のものでしょうか(写真左)。腕時計を購入するともらえるノベルティで、私はヤフオクなどで買っています。最初はおふざけ半分で使っていましたけど、綿の素材がスイスのファブリックメーカー「クリスチャン・フィッシュバッハ」のようなスイス綿と思わしきハリのある生地感で、水分の吸水もよく、今や一番使っていますね。ノベルティですが手を抜いていないのが〈ロレックス〉らしいかと。ポップアートな〈ドレイクス〉(写真右上)や岡本太郎の「森の神話」が模された一枚(同下)もそうですが、プリントものはスーツにも合わせられますし、ポケットに忍ばせているだけで楽しいものなんです。
教えてくれた人

尹 勝浩
いん・かつひろ|1969年、大阪府生まれ。ファッションディレクターとして活躍する一方で、服にまつわる執筆業も行う。最近は上品気取りもいい加減にやめようと、珍奇なものに目が留まる毎日。
こんなハンカチなら使ってみたい。
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ドイツの〈モダス〉
1979年創業当初は、漁師や船乗りに向けたワークウェアを作っていたドイツの〈モダス〉。近年はマリンウェアにも力を入れているようで、このハンカチも海の匂いが漂う。生地はシャリッと硬めで、ドイツの漁師が手荒く使っても破れない。¥990(ヤヨイ☎03·3833·5238) -
アイリッシュリネンの後染め
ハンカチといえばまず欲しいのが、北アイルランド地方で作られるアイリッシュリネンのもの。普通は白が多いが、後染めゆえのテンション上がるピンクや赤が最高。各¥4,180(DAVID’S CLOTHING☎03·3409·8822)
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アメリカの〈ロスコ〉
『中田商店』のレジ近くで隠れるように並ぶ〈ロスコ〉のハンカチ。色はミリタリーらしくオリーブドラブとブラックだが、意外とこの色って探してもない。洗う前の生地は硬いが、洗ううちにちゃんと馴染む。各¥350(中田商店☎03·3832·8577) -
日本の「ブルーミング中西」
爽やかなペールブルーに格子柄。生地はシーアイランドコットン100%。こちらは「日本橋三越本店」で見つけた1879年創業の「ブルーミング中西」のオリジナル。名実ともにクラシックな一枚なのだな。各¥2,200(ハンカチーフギャラリー☎03·6892·0701)
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スイスの〈グラルナーチューヒリ〉
スイスの老舗ハンカチメーカー、ブリュメル社が手掛ける〈グラルナーチューヒリ〉。山岳地方の良質な水を生かした染色によるキレイな発色で、他にないいい色が選べる。各¥3,960(Nest authentic dry goods☎03·3233·7888) -