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ジェントルマンならこうするね。/ドレスアップ編

紳士とは美学を貫く男。細部にまで手を抜くな!

2021年4月16日

illustration: Shinji Abe
text: Tatsuya Onoda
edit: Tamio Ogasawara
special thanks: Katsuhiro Inn, Atsushi Momiyama, Katsuya Kubo, Masaki, Yuichi Shimoma, Shinichi Ishida, Shigeo Ueda
2015年12月 824号初出

年を重ねて、“ボーイ”はいつしか“マン”になる。
大切なのは“ジェントル”が付くかどうか。さあ、実践あるのみ!

ジェントルマンならこうするね

DRESS UP 01
グレーフラノのスーツから始めてみよう。

ジェントルマンのワードローブに欠かせないもの、それがグレーフラノのスーツだ。何といっても品格がある。シックで温かみのある生地感は、紳士の内面をも象徴する。週末にはコーデュロイやツイードのジャケットをさらりと羽織ろう。さらに高みを目指すなら、フォーマルにも使えるブラックスーツを次の一着として視野に入れておこう。

DRESS UP 02
毎朝、ウェットシェービング。

シェービング

紳士の一日の始まりには大切な“儀式”がある。ヒゲをきちんと整え、今一度身を引き締める。電気シェーバーも悪くはないが、それでは“儀式”とは呼びにくい。毎朝、ウェットシェービングを嗜もうではないか。せっかくだから、道具にも気を配りたい。ブラシやカミソリ、クリームやオイルもあるといい。馴染みのバーバーに聞いてみよう。

DRESS UP 03
胸元には必ずポケットチーフを。

紳士たるもの、“様式”を大切にしなければならない。胸ポケットにはいかなるときもチーフを入れる。基本はリネン製の白。これなら礼装にも対応する。畳み方はスクエア型の“TVフォールド”にすれば問題ない。ちょっと洒落た気分を表出するなら“クラッシュド”も覚えておきたい。その際は、柔らかくボリュームを出しやすいシルク製がおすすめだ。

DRESS UP 04
時計は時間さえわかればいい。

“身の丈”を知っていることは、紳士の条件である。多少無理をしてコツコツお金を貯めて高級腕時計を手に入れることで、大人に近づくこともあるだろう。ただ、自分の境遇や仕事、服装など考えたら、自ずとベストな腕時計が決まってくるはずだ。今は時間さえわかればいいと割り切って、自分を磨くためにお金を使うのもまた清々しいじゃないか。

DRESS UP 05
香水も人格の一部と心得る。

香水

紳士とは視覚のみで判断されるものではない。におい、つまり嗅覚からも「ジェントル!」と感じさせてこそ本物だ。お試し感覚で香水をつけるのはご法度。自分を表現するに好ましい香りをじっくりと選ぶこと。迷うなら、爽やかな柑橘系からチョイスしてはどうか。さらに言うなら、聴覚への意識も持ってほしい。自分の声のトーンを客観的に把握しよう。

DRESS UP 06
ハンカチは2枚持つ。

よもや、手を洗ったときに自然乾燥なんてことはないだろうが、ハンカチはただ持っているだけでは褒められたものではない。最低2枚と心得よう。1枚はもちろん自分用。もう1枚は不測の事態の対応用として。例えば、女性が屋外のベンチに座るときなど、さっと差し出す心遣いこそが紳士たる所以。ハンカチも白が基本。名入れの刺繍があれば完璧だ。

DRESS UP 07
いつでもパンツにはセンタープレスを。

ウールでも、フラノでも、コーデュロイでも、パンツには常にセンタープレスを入れよう。取れかかっているのを見つけたら、即アイロンをかけて、きっちりプレスを。人柄だけでなく、服装も折り目正しく。さて、週末、デニムをはくときはどうするか? 紳士を目指すなら、デニムパンツにもセンタープレスを入れるぐらいの意気込みを持とう。

DRESS UP 08
いかなるときも、すね毛は見せない。

靴下

どんなに仕立てのいいスーツを着ていても、座ったときに妙に派手な靴下が見えたり、素足が他人の目に晒されたりでは、もはや紳士とは言えない。スーツのときは膝下まである長いソックス、“ロングホーズ”をはこう。スーツの色にもよるが、ブラックやネイビーなど落ち着いた色の靴下が相応しい。週末は厚手のリブソックスで可愛げを見せるのもいい。

DRESS UP 09
髪型はころころ変えない。

七三か、オールバックか。紳士らしいへアスタイルの話は尽きないが、そこはまあ清潔感があればいいとしたい。大切なのは、自分に似合う髪型を見つけたら変えないことである。「あれ、いつもと違う?」と言われたら紳士失格。もちろん、定期的なカットは大前提だ。平日はビシッとキメて、週末は整髪料を使わない。それぐらいの感覚がチャーミングだ。

DRESS UP 10
目をつぶっていてもプレーンノットを結べる。

ネクタイの結び目が整っている人は信頼できる。紳士は細部に宿る、というわけだ。いざというときに、モタモタと結んでいるようでは、まだまだ青い。基本であるプレーンノットなら、目をつぶっていても端正な結び目ができるぐらいにならないと。君がネクタイに馴染みがないなら、ニットタイから始めてみよう。剣のあるタイプのほうが断然、紳士だ。

DRESS UP 11
肩が凝るくらいの重いコートを選ぶ。

ジェントルマンのコート

紳士とは一本筋の通った男。軽くて機能的なアウトドアウェアには目もくれず、歴史に裏打ちされたポロコートやチェスターフィールドコートなどを好む。最初はずっしりと肩に重さを感じるぐらいがちょうどいい。時間をかけて体に馴染ませ、自分のものにするのが至極の喜びなのだ。雨の日は、高密度のコットンギャバジンのトレンチコートを羽織る。

DRESS UP 12
シャツの基本は白。

何色をベースにすべきか、うすうす感づいているだろうが、そのとおり、白だ。カラーやカフ、生地と織りについては好みで選べばいい。何よりサイジングこそが重要。袖丈と首回りのサイズが合っていないと、すべてが台無しだ。袖丈はジャケットから1.5㎝ほどのぞかせる長さ、首回りは第1ボタンを留めて指2本分のゆとりのあるサイズ感を覚えよう。

DRESS UP 13
レザーグローブをアクセサリーに。

華美な装飾を避けるのがジェントルマンのマナー。金銀のアクセサリーを身につけるぐらいなら、上質なレザーグローブはどうだろうか。冬の防寒の役割はもちろん、手に軽く握ったり、ポケットに無造作に差すだけで様になる。同じく、マフラーも装うものと考えよう。素材は断然カシミヤ。何げないものこそ、いいものを。これもまた作法だ。

DRESS UP 14
ビニール傘は絶対に使わない。

傘

細部への配慮を怠らず、いかなるときも優雅さを漂わせる。上品なスーツやコートを身につけても、手にするのがビニール傘だったら台無しだ。まずは佇まいに合う、しっかりした作りの傘を一本所有しよう。不意の雨も想定して、長く付き合える折り畳み傘も愛用品に加えたい。使い捨て感覚で物を選ばない。その姿勢を徹底させたいものだ。

DRESS UP 15
ベルトは使わない。

ドレスアップ用のトラウザーズはぴったりのサイズを選ぶ。がゆえに、ベルトレスが基本。ウエストのアジャスターで必要な調整を施すこと。あるいは、ブレイシズを使ってみるのもいいだろう。肩からトラウザーズを吊るので本来のシルエットを崩さず、裾丈の調整もしやすいのだ。腰周りもすっきり見える。フェルト製のクラシックなものを選ぼう。

DRESS UP 16
外羽根式の黒のプレーントゥを。

いい革靴を厳選して所有する。これを実践して後悔はないと断言したい。では、何を選ぶか。外羽根式の黒のプレーントゥを持っていればまず間違いない。このタイプの代名詞的存在の〈ALDEN〉の「9901」はやはりいい。手にしたら、日々のメンテナンスをお忘れなく。愛用品が馴染み、育っていく感覚を抱ける幸福。それが実感できたら立派な紳士だ。

DRESS UP 17
アンダーウェアは定期的に入れ替える。

アンダーウェア

素材や形に議論があるだろうが、最優先すべきは常に清潔で、たるみのないアンダーウェアを身につけること。とはいえ、「まだ行ける?」と、見切りのタイミングを決めにくいのも確か。ならば、定期的にアンダーウェアを一式入れ替えることを習慣にすればいい。最初に必要な枚数を新品で揃え、半年後にすべてを処分する。見えない所にも抜かりなしだ。