デザイナーはなぜそれを作ったのか?/FRANK LEDER
2021.06.21(Mon)
photo: Kazuharu Igarashi
edit: Tamio Ogasawara
text: Neo Iida
2019年10月 870号初出
※ジャケットは現在取り扱いなし。
デザインの”なぜ”がわかると、じわりと気になり、だんだんと焦がれるように、頭から離れなくなる。服を選ぶのは自分だけど、まずは一度デザイナーたちの言葉に耳を傾けてみようじゃないか。

この生地を作る工場は一つしかないんだ。
「常に新しい生地や素材を探しているけれど、生地の見本市やオンラインやSNSで探すのはあんまり好きじゃないんだ。他の人もきっと同じものを見ているからね。誰も知らない生地を見つけたいから、気になる話を聞いたら自分で直接調べに行く。この“ジャーマンレザー”は、14〜15年前に友達が教えてくれた古い工場で出合ったもの。主に大工さんのためのワークウェアに使われている生地で、実際はコットン生地なんだけど、丈夫でタフだからみんな“レザー”と呼ぶ。僕はドイツにフォーカスして服作りをしているし、その質実剛健さがマッチすると思った。ただこのまま使うには“ワーク”過ぎるから、“ファッション”に用途を変える必要があると思った。それで試しに表と裏を逆にしてみたんだ。そうしたら、独特な風合いが生まれて経年変化の表情も出やすくなった。頑丈だけど、着ているうちにどんどん馴染んで、その人だけのシワができていく。着ているその人の10年を表現してくれるし、10年後はもっと美しくなる。そうそう、この前交通事故に遭ってしまったんだ。車に5mくらい引きずられて、パンツはボロボロになったのに、ジャーマンレザーのジャケットは無事だった。まさに鎧だよ」
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「僕はよくポケットに物をたくさん入れるから、初めから膨らませて、どれだけ入れても気にならないようにしたんだ」というフランクさんの好みを反映したポケット付きジャケット。あまりの生地の硬さにジャケットが立つ。頑張って着込んでいけば極上の着心地に変化していく。※現在取り扱いなし -
ズシリと重いステンカラーコート。※現在取り扱いなし -
襟とポケットにリアルレザーをあしらったブルゾン。※現在取り扱いなし -
アウターだけではなくパンツも作っている。「僕はあんまりはかないんだ。ワンちゃんの毛が付くから……」。※現在取り扱いなし -
ポケットを4つ付けた、収納力のあるコート。フードは取り外し可。※現在取り扱いなし(マッハ55リミテッド☎03・5784・3555)

FRANK LEDER
フランク・リーダー|1974年、ドイツ生まれ。セントマーチンズでファッションを学び、1999年にコレクションを発表。昨年、ウィーンに古本屋をそのまま使ったコンセプトストアをオープンした。背景写真がそのお店。