ファッション

FINDING GEEK CHIC @時計店 L

“ギークシック”な時計たち。#2

2021年9月11日

photo: Kazuharu Igarashi
text: Ken Miyamoto
edit: Kyosuke Nitta
2017年12月 848号初出
※掲載商品は全て販売終了しています。

〈SEIKO〉 FIELD MASTER 

BRAND: SEIKO
MODEL: FIELD MASTER 
YEAR: 1983

GEEK POINT: SEPARATE
SIZE: 28mm 

 機能を増やしたければ無理に詰め込まず、付け足せばいいじゃないかと、優しく諭してくれる先輩こと、初代フィールドマスター。アウトドアスポーツウォッチの元祖は、アナログ時計をベースに、コンパス、マップメーター、デジタルウォッチ、どれか一つを付け足せる“ちょい足し”システムを採用。かつてCIAで支給されていたというエピソードといい、マットなブラックの風合いといい、男を狂わせる男の中の男って感じ。写真はコンパスが付いている。

〈AVOCET〉VERTECH ALPINE

BRAND: AVOCET
MODEL: VERTECH ALPINE 
YEAR: 1993
GEEK POINT: OUTDOOR
SIZE: 37mm 

 マルでもシカクでもない計測器のような怪しいビジュアルは伊達じゃない。’90年代にアウトドア界だけでなくストリート界でも一世風靡した元祖・アウトドアウォッチは、温度、湿度、気圧計などの機能を搭載。アップルやグーグルが生まれたシリコンバレーを本拠地に持つアウトドアブランドだから、時計界にアウトドア旋風を巻き起こせたのは必然。実は、〈無印良品〉の壁掛けCDプレーヤーで有名な深澤直人のデザインだ。

〈 CASIO〉1st DATABANK CD-401

BRAND: CASIO
MODEL: 1st DATABANK CD-401 
YEAR: 1984
GEEK POINT: DATABANK
SIZE: 35mm 

 誰が初代エグザイルかわからなくなってきたように、データバンクの初代もどれかわからなくない? しっかり見たことがなかったけど、THIS IS IT。すでにテレメモ10件、100分の1ストップウォッチ、ワールドタイム、アラーム、計算機の機能を搭載しているハイスペックさ。計算機メーカー〈カシオ〉ならではの、整然と配置されたボタンから、全盛期の精密機器国家としての勢いとプライドを感じる。

〈SEIKO〉FREQUENCY 

BRAND: SEIKO
MODEL: FREQUENCY 
YEAR: 1998

GEEK POINT: MUSIC
SIZE: 37.5mm 

 1998年に小室哲哉がプロデュースした世紀の珍モデル。オリジナルサウンド、メトロノーム、クロノグラフ、リズムなど音を軸にした6つの機能を搭載。大部分をスピーカーが占める変則的な形に、どう使っていいかよくわからない機能、さらに1万8000円という価格設定を当時のシティボーイたちは受け止めきれず不発に終わった。が! 最近の’90年代ブームとともに不死鳥のごとく蘇り、人気商品に。これを着ければ君も小室ファミリーだ! なんてね。

〈CASIO〉 VDB-3000 TOUCH SCREEN

BRAND: CASIO
MODEL: VDB-3000 TOUCH SCREEN
YEAR: 1997
GEEK POINT: TOUCH SCREEN
SIZE: 35mm 

 ここ最近の技術革命だと思っていた“タッチスクリーン”。実は1991年に我らが〈カシオ〉がすでに発売していた。しかも時計で! これは1997年に発売されたデータバンクの最高機種「ホットビズ」。“仕事”“個人”“遊び”などをイラストでアイコンにする手法や、スクエアなデザインは、もはやアップルウォッチじゃないか。という意見は胸のうちに秘めておいて、今見てもミニマルなデザインはSF情緒たっぷりで普通にかっこいい。ちなみにホットビズは、“ホット・ビジネスマン”の略。

〈SEIKO〉 DIGITAL PICTURE-CALL 

BRAND: SEIKO
MODEL: DIGITAL PICTURE-CALL 
YEAR: 1981
GEEK POINT: PICTURE
SIZE: 34mm 

「たまごっち」があんなに流行ったことからわかるように、人間は動く絵に感情移入する。そんな心理を知っていたかは不明だが、1981年、動く絵を閉じ込めたデジタルウォッチがあった。イラストでそれぞれのモードを表示してくれるのだが、粗いドットマトリックスのアニメーションが動く様がけなげで、だんだん愛おしく見えてくるから不思議。黒地にそっと赤が入ったレトロなフェイスも味わい深い。

インフォメーション

時計店 L

17年前に原宿にオープンした小さな時計店。店主の小久江哲之さんが修理、整備も請け負っているから、現行にない時計を購入しても安心。〈セイコー〉や〈カシオ〉など日本製の時計を中心に、ギークもシックも揃っているので、そのときに自分が欲しい時計が見つかる、僕らの“街の時計店”。

◯東京都渋谷区神宮前3-29-11 奈良ビル1F ☎03・3746・7893 12:00~19:00 水休