”男は黙ってシャイニング〟なんて見出しをこのジャケットに付けてしまったのは、もちろん理由あってのこと。何を隠そう。この〈マーガレット・ハウエル〉のボンバージャケットは、映画『シャイニング』の主役、ジャック・ニコルソンがラストシーンで凍りつくまで相棒のように着ていた衣装なのである。
時は1977年頃。ビバリーヒルズの高級セレクトショップ『マックスフィールド ブルー』にジャックが訪れたことに端を発する。『シャイニング』の衣装を探していた彼はたまたまこのブルゾンと出合い、一瞬で恋に落ちてしまったのだ。その品番は「M025」。まるで軍モノみたいなネーミングからお察しのとおり、アメリカ空軍のA2ボマージャケットをモチーフにし、英国的な太畝コーデュロイ素材で抜群に気品よく仕上げた一着だった。まさしく小説家志望の主人公にぴったりなワインレッド色のそれは、スタンリー・キューブリック監督のOKを無理やり取り付け、幸運なことに世界でもっとも有名なホラージャケットになった。
もちろん、ここで紹介するからには廃番という言葉とは一切無縁。ジャックも知らぬところでアップデートを繰り返すこと44年、実は密かな定番として君臨している。いつ見ても『シャイニング』に恐怖を覚えるように、このジャケットも色褪せることなくずっと格好いい。考え方次第では、それもある種のホラーなのかも。
今年は黒1色のみ。ボンバージャケット「M025」¥79,200(マーガレット・ハウエル☎03·5467·7864)