カルチャー
センスのいい映画は、センスのいい人に聞く。
2023年7月20日

スコット・スタンバーグ|1974年、オハイオ州生まれ。〈バンド・オブ・アウトサイダーズ〉(2003-2015)、〈エンタイアワールド〉(2018-2021)と2つのブランドを手掛けた後、現在はクリエイティブ・ディレクターとして従来の枠には収まりきらない活動に邁進する。写真や映像も手掛けるスタンバーグは生粋の映画ファンとしても知られている。
映画を「シネマ」として捉え、深掘りしたのが大学時代、と説明するスコット・スタンバーグ。まずヌーベルバーグに開眼し、チェコ、それから日本の映画にも興味は向いた。「好きなのは’70年代のエグみが滲み出ている映画。ちょっと危険で、’60年代に漂う楽天主義から逸脱したリアルさがあってね」
洋服の世界観を作るリファレンスが映画だった、というスコットがアイビースタイルをはじめとした「着合わせ」の真骨頂をテーマに、この4本を選んでくれた。
①早春
監督:イエジー・スコリモフスキ/1970年/92分


着合わせの妙技に釘付け
ジョン・モルダー=ブラウン演じる主人公マイクの仕事着は、公衆浴場の名前がグラフィックで入った水色のTシャツにカーキの短パンと白衣、という姿。これを見て「グラフィックT、どこかにあったっけ……」と思わず探したというスコットは、そのスタイリングされていないルックをベタ褒めする。「僕がアイビースタイルが好きな理由の一つに、洋服の取り合わせ方があって。ケーブルニットのようにそれぞれのアイテムももちろん好きだけど、アイビーを定義するものはその着合わせ方だと思うんだ。ユニフォームの白衣に青いTシャツ。狙ったルックじゃないのになんて完璧!」と語るスコットは、マイクが着ているツイードスーツの似合わなさにも、美を見いだす。「正直体に合ってなくて、着られちゃってる。でもそれは背伸びをして大人になろうとしている彼の描写要素なわけで。映画の目線となるカメラの位置、プールのシーンの色合いも素晴らしい。もっと認知されるべき映画だね!」
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早春
キャット・スティーブンスやカンをBGMに、ロンドンの公衆浴場で物語は展開していく。初めてのバイト先で働く魅惑的な年上女性スーザンに夢中になるマイク。バスハウスとプールを併設した美しいロケーションで、背伸びした主人公の思春期ならではの葛藤はとんでもない結末へと迷走していく。
②おかしなおかしな大追跡
監督:ピーター・ボグダノヴィッチ/1972年/94分

着崩したアイビールックがいいんだ。
「ライアン・オニールの役が、〈ブルックス ブラザーズ〉的なアイビールックですごくいい! まあハリウッド大作だから、ちょっと’60年代の古くさい感じもするけどね。バーブラ・ストライサンドは映画を通して素晴らしいルックを貫いているし、この時代のライアンはとてもハンサム。ちょっとナーディな役だから、ボタンが少し外れていたり、パジャマの上からシャツを着て二重の襟になっていたり、でもそれがいい意味での着崩しになっていて」。アイビーでも〈ブルックス ブラザーズ〉は大衆的な系統、とスコットが指摘しているのが興味深い。「夏のアイコン、とも言える最初のシアサッカースーツ姿はまるで〈ブルックス ブラザーズ〉の広告みたい! それから髪型も、縁の太いメガネもすごくいいね! 予告編に出てくるボグダノヴィッチ監督のメガネもよかったな……。おバカな映画なんだけど、甘酸っぱさもあって、まだ観たことない人は一度は観てみて!」
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おかしなおかしな大追跡
サンフランシスコを舞台に4つの同じツイード柄のバッグを巡って繰り広げられる、ワーナー・ブラザース・スタジオのスクリューボール・コメディ。バーブラ・ストライサンド演じる奔放なジュディと、ライアン・オニール演じる生真面目な音楽理論研究家のハワードの目眩くテンポのチグハグなやり取りから目が離せない。
③ザ・ビートルズ:Get Back
監督:ピーター・ジャクソン/2021年/468分

しっかり服を着ていた時代?
「ここ数年観た中で群を抜く、かなり面白い映画だった」とスコットを唸らせた作品だが「そもそも誰のために皆あんな格好を常にしていたのか?」と鋭いツッコミを入れることも忘れていない。「スタジオに入るときもみんなに注目されるからピシッとした格好をいつもしてるのか? それともメンバー同士のためにドレスアップしてるのか? そんなことが気になっちゃって。もちろん当時はアスレジャーなんてないから、スウェットやヴィンテージT(そもそも彼らの時代のものが後にヴィンテージTとなるわけで)を着てスタジオに、なんてあり得ない時代。思いの外、これまでスタイルを意識したことがなかったジョージ・ハリスンがイケてるなあ、と思ってね。ルーフトップのコンサートでのパンツ姿は特に良かった。僕らの人生に大いに入り込んでいる曲の創作過程を臨場感たっぷりに体感できるってすごいこと。アンビエント映画としてまた観直したいな」
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ザ・ビートルズ :Get Back
1969年に16㎜フィルムで撮影された「ゲット・バック・セッション」の60時間にも及ぶ映像と音声を、ピーター・ジャクソン監督が3部構成の長編ドキュメンタリー映画として新たに製作。最新技術を使った修復作業や、パンデミック中のストリーミング公開も話題に。
④セント・エルモス・ファイアー
監督:ジョエル・シューマッカー/1985年/111分

キャラクター設定がスタイルに滲み出る。
「この映画はとてもエイティーズだからシネマ、とは言えないんだけど」と前置きするスコット。リアルタイムで観たから懐かしさもある作品だそうだが、それぞれのキャラクターの性格や抱える葛藤が服で見事に表現されていて面白いと言及する。「例えばジャド・ネルソン演じるリベラルから共和党へと寝返ったコンサバ成功主義のアレックは、〈Jプレス〉や〈ポール・スチュアート〉的な格好。アンドリュー・マッカーシー演じるビート詩人的なケヴィンはフェドラ帽をかぶったり、ルースなテーラリングの服ばかり着ている。早くに子供を作って結婚したけど、現実逃避でプレイボーイなサクソフォン奏者ビリーを演じるロブ・ロウはノースリーブ・シャツやヘッドバンドといった姿。監督のジョエル・シューマッカーはNYのデパート『ヘンリ・ベンデル』のウィンドウ・ドレッサーだったという経歴があるからファッションへの観点が鋭いし、セットデザイン的にも見どころたくさんだよ!」
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セント・エルモス・ファイアー
大学時代のベストフレンド7人の、大人になる過程のそれぞれの葛藤を描き、同年公開のジョン・ヒューズ監督『ブレックファスト・クラブ』等と共に「ブラット・パック」と呼ばれる青年期映画。主題歌も当時のビルボード1位を飾ったりして、’80年代の情感たっぷりな作品だ。
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