ファッション

10 STYLE ESSENTIALS/Brendon Babenzien

2023年3月26日

新生活とファッション '23


photo: Omi Tanaka
coordination: Momoko Ikeda, George Matsuo
text: Tamio Ogasawara
2023年4月 912号初出

スタイルとは生き方である。好き嫌いがきちっとあり、
昔から長く残っているものを、ちゃんと長く着るのが、
〈ノア〉のブレンドン・バベンジンのスタイル。

ブレンドン・バベンジン|〈ノア〉ファウンダー。アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランド出身。2015年に〈ノア〉を本格始動。〈シュプリーム〉のデザインディレクターを長年務め、現在は〈J.クルー〉のメンズウェアクリエイティブディレクターにも就任。

「ルールに反しているのはわかっているのだけど、それが僕のルールなんだ」

 家がビーチの近くで小さい頃から遊んでいたというサーフィンやスケートボードに、ニューウェーブやパンクといった音楽を聴いて育ち、それらが10代の頃からのトラディショナルなプレッピースタイルと自由に混じり合ってはき出されたのが、〈ノア〉のブレンドンのスタイルだ。そのカルチャーが好きだからと、着るものまで誰かに指図されるなんてのは嫌いで、スケートボードをするときでも、ジャケットを着たいならそうすべきだと思うタイプ。なぜなら、スケートボードカルチャーでは、みんな好きなものを着ているだけだから、スケーターのファッションなんてものはなく、何かのカルチャーに制服があるという考え自体がばかげていると思っている。

「ディナーに行くようなときから夏のパーティまで、いつでもスーツスタイルはいいと思っているよ。スーツってやつは、着たいときに着ればいいし、僕も朝起きたらスーツを着たい気分になっていることもある。着ているのは、〈J.クルー〉のヘリンボーンのリネンスーツなんだけど、サイズはルーズかつカジュアルで、着ていてとても気持ちがいいんだ。トラウザーズはストレートでテーパードもされすぎず、まだ裾上げをしていないのでまくり上げているだけ。シャツはというと、僕は小さい襟が嫌なんだ(笑)。’70年代のディスコカラーも好きじゃないが、でもシャツの襟っていうのは、合理的で実用的じゃないとダメだと思ってる。とてもスムースなコットン素材でシャキッとした着心地さ。

足元は、〈J.クルー〉のベーシックなローファーだよ。底もラバーで、レザーじゃない。革底だとビシッとしすぎているような気がしていてね。ネクタイもしないし、いろいろスーツのルールに反しているのはわかっているけれど、それが僕にとってのルールなんだ。オックスフォードシャツを着ている写真は、10代の頃の僕自身のプレッピースタイルだね。長く着られるようなヘビーオンスのオックスフォードシャツに、タートルネックのカットソーを合わせてる。ストライプとストライプの組み合わせが好きなんだけど、ちょっと変わった組み合わせがいい。結局、自分の好きなものだからどれを組み合わせてもいいと思うんだ。デニムパンツはアメリカ製を探すのが難しい時代だけど、日本の生地を使ってアメリカで作っている〈ノア〉の5ポケットジーンズをはくことが多い。

デッキシューズは韓国の〈キャッチボール〉ってブランドので、今までのどのデッキシューズよりも履き心地がいいんだ。もう2年は履いているよ。ソックスははかないことが多いけど、アーガイル柄だけは好きさ。プレッピーな青春時代を思い出すからね。ランニングするときにソックスをはくのも嫌いで、華氏45℉(約7℃)以上になったらもうはかない(笑)。だから、4つ目のランニングのときのスタイルも裸足さ。〈NEWTON RUNNING〉というブランドのランニングシューズは縫い目がほとんどない走りに適した靴で、もう12年これで走っているよ。

ショーツはランニングとスイム用の間みたいなものなんだけど、夏のアクティビティにはピンクが最適さ。スウェットフーディーはやっぱりアメリカンスタイルのスムースでもソフトでもないヘビーウェイトでドライでタフなものが好きだな。これはカナダ製だよ。僕はだいたい普段から半分くらいのバランスで〈ノア〉の服を着ているんだ。このスタイルは、“Low tech running kit!”とでも呼んでおこうか。最近は自分が何を着ているかをじっくり見たりはしないよ。ただあるものを引っ掛けて出かけるだけって感じだね。昔ながらの考え方かもしれないけど、服は長く着るものだと思っているから、長く残っているものが根本的に好きなんだ」

10 STYLE ESSENTIALS

1. BELT – Paul Stuart
〈ポール スチュアート〉のベルト。「ちょっと上等なものさ。スーツにも何にでも合わせて使っているよ、毎日ね!」
2. SHOES – Catchball, Newton Running, Solovair, J.Crew
「どんなコーディネートにもキャンバススニーカーを僕は合わせる。緑の〈ソロヴェアー〉もずっと履いていて、いつでも僕の人生に寄り添ってくれている靴だよ」 
3. WIND BREAKER – CB Sports
〈CB Sports〉のウィンドブレーカー。「子供の頃にスキーするならこれって感じのブランド。緑は’80年代のもので、青は新品。自分たちのヘリテージを大切にしているのがいいね」
4. SWEAT HOODIE – Noah
〈ノア〉のフーディーとショーツ。 
5. TOTE BAG – Vintage
ヴィンテージのトートバッグ。「パソコンからウェットスーツまで何でも入れるよ」 
6. SUIT – J.Crew
〈J.クルー〉のスーツ、ローファーに〈ノア〉のシャツ。
7. SUNGLASSES – Vuarnet
〈Vuarnet〉のサングラス。「僕みたいなロングアイランド出身のサーフィンやスキー好きなキッズには人気だったフランスのブランドさ」
8. OXFORD SHIRT – Noah
オックスフォードシャツ、タートルネックカットソー、デニムパンツ、キャップは〈ノア〉。「キャップの“St Michael”は聖書の中にしか出てこない唯一人間じゃない聖人さ。彼のタトゥーも入れているよ」 
9. FRAGRANCE – Caswell-Massey
〈Caswell-Massey〉のフレグランス。「〈エルメス〉の『Rose Ikebana』をまとうこともあるけど、こっちがメインかな」 
10. CAP – Benetton, Noah カラフルなものは’80年代の〈ベネトン〉のキャップ。「若き日の青春時代が詰まっているのさ」。残り3つは〈ノア〉。