TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】徒然草2026

執筆:緒方数馬

2026年4月5日

4月のはじめの土曜日。もう一年の4分の1が終わったことになる。
つい最近まで年が明けたことを憂いていたのに、すっかり戦闘モードになっている。

今回がこの徒然草の最終話となる。
家でYeのライブを横目に、キーボードを打っている。今回もくだらない回になりそうだ。

先日、社会人になってから17年間使っていた通帳や印鑑を入れるポーチを新しいものに替えた。朱肉で汚れたりもしていたので、いい歳だし綺麗なものに変えようと思ったのだ。
福岡か静岡か、どこかのPARCOの中にある〈Marks&Web〉で買ったものだ。なぜ化粧品屋でポーチを買おうと思ったのかは思い出せないが、パラフィン加工されたキャンバス生地と赤いジッパーが気に入っていた。

捨てようとゴミ箱に投げ込もうとした瞬間、そのポーチを買ったときのことや、学生から社会人になる頃の苦悩、いろいろな場所に持ち運んでいた記憶が一気によみがえった。
思わず「今までありがとうございました」と一言告げていた。

一度はゴミ袋に入れたものの、急に寂しくなり、次の瞬間には取り出していた。
結局そのポーチを手洗いし、17年分の汚れを落とした。

乾いたそれは、穴も空き、色も褪せている。それでも、これからは筆箱として使っていこうと思う。
長く使っているものは、気づかないうちに生活に入り込んでいる。
一生物というのは、こういうものなのかもしれない。

プロフィール

緒方数馬/Kazuma Ogata

おがた・かずま|1986年、鹿児島県生まれ。日用品を使った立体や積み上げていくインスタレーション作品のシリーズを始め、スニーカーの痕跡で描いたキャンバス作品など、多様なメディアを使い制作する。現在は東京を拠点に活動する。

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