ライフスタイル

いい部屋ってなんだろう?/スタイリスト・田中美和子

2026年3月5日

部屋とシティボーイ ’26


illustration: Norika Kato
text: Yoshikatsu Yamato
2026年3月 947号初出

自分の好きなことや生活の癖がわかると、部屋づくりは、もっと面白くなる。

 スタイリストとして、身につけるものを用意することもあれば、テーブルの上にシーンを作るフードのスタイリング、インテリアや日用品を集めた空間を提案することもあります。

 日々、モノを手にとって、好きな景色をつくる仕事をしていますが、自分にとっての「いい部屋」について考えるとき、そこにどんなモノがあるかより、その居場所で、どんなことをしたいかが大切ではないかと思えました。

 私の場合は、気持ちよくお風呂に浸かって、ぐっすり眠れる部屋がなによりも大事。仕事から帰宅すると、鞄を置く前に、まっさきにお風呂の蛇口をひねります。休みの日は一日に3、4回でも好きなだけお風呂に入るし、シーツやカバー類をすべて洗って、いつでもまっさらなベッドで眠ります。

 あとは、洗濯をしている時間も好きなので、ランドリールームとバスルームへの思いは深いです。今の家は、洗濯機、洗面台、トイレ、お風呂の機能がきゅっとまとまった設計に惚れて住むことに。レイアウトは、部屋で一番心地よいと思った場所にベッドを置くところから決めました。

 人生最初の一人暮らしの部屋を探すときに不動産屋さんに伝えたのは「南向きにひらけていることと、毎日、川沿いの土手を散歩したい」ということ。過ごし方が第一でした。

 こういった自分の生活の「癖」や偏った好みを知ると、部屋づくりはもちろんですが、家具や日用品を選ぶときにも、必要なモノやしっくりくるものがはっきりしてくるのではないかと思います。お風呂や睡眠が好きなら、肌に近い衣類や寝具、洗濯に関わるモノや空間は大事にしたい。素材もとことんこだわりたい、というふうに。

 ふだん、もの選びで迷うことはあまりないんです。「好き」や「面白い」と興味がわいたらすぐ手にとってみる。それは、学生時代にいろんなスタイルに雑食的に触れていた頃からの癖かもしれません。図書館に出入りして、あらゆるジャンルのファッション誌やライフスタイル誌を読み漁っていました。自分が好きなものだけに触れるのではなく、他にも色々な世界があるのだと知ることは面白いです。

 そして、「好き」がわかったら、それに正直にいたらいい。極めすぎるくらいがいいと思います。それが、他の人からすると「癖が強い」と言われようが、むしろいいことではないですか? 好きなモノしかない部屋で暮らすなんて夢のようです。深くこだわる部分は突き詰めて、それ以外の気にならないところは、気張らなくてもいい。私には、散らかっていても気にならないところがあって、乱雑な様子を「芸術的だなあ」と面白がることもあります。違和感が出たら、そのとき片付ければいい。「こうしなければならない」は本来ないですよね。居心地のいい部屋はそこで暮らす人自身がいい顔をしているかどうかではないでしょうか。

教えてくれた人

田中美和子

スタイリスト

新潟県生まれ。大学を卒業後、スタイリストの岡尾美代子氏に師事。独立後はファッション、インテリア、日用品、フードなど、ライフスタイル全般におけるシーンのスタイリングを手掛ける。忙しい日々でも、お風呂と洗濯でリフレッシュする時間は欠かさない。

Instagram
https://www.instagram.com/miwako.tanaka.s/