カルチャー
ドンデコルテ渡辺は、『ノロイ』で恐怖演出の真骨頂を味わった。
今日はこんな映画を観ようかな。vol.8
2026年2月11日
illustration: Dean Aizawa
text: Keisuke Kagiwada
毎週、1人のゲストがオリジナリティ溢れる視点を通して、好きな映画について語り明かす連載企画「今日はこんな映画を観ようかな。」。今回のゲストは、M-1グランプリ2025でお茶の間に衝撃をもたらしたドンデコルテの渡辺銀次さん。紹介してくれたのは、和製モキュメンタリーホラーの先駆け、『ノロイ』だ。
今日の映画
『ノロイ』(白石晃士監督、2005年)
怪奇実話作家である小林が行方不明となる。そればかりか、自宅は全焼し、彼の妻が焼死体として発見される。彼の身に何が起こったのか。残された映像作品には、恐るべき現象をめぐる記録が刻まれていた。
ホラー映画が好きでめっちゃ観ているんですけど、優れた作品には共通点があると思うんですよ。まず観ている人を集中させなきゃいけないし、集中させるためには話が面白くないといけない。だから、ミステリー要素とかが必要で。観客がホラーであることを忘れて「どういうことだ?」と考察して油断している隙に、バッと怖いシーンがくる。それが一番震え上がれるんです。その点、白石晃士監督の『ノロイ』は本当に面白くて、もう何度も観たかわかりません。
失踪したノンフィクション作家が、”ある不気味な現象”を追う過程で残した映像をベースにしている、いわゆるモキュメンタリーなんですね。初めて観たときは、そんな分野があることすら知らなかったので、「なんだこれは!」って衝撃が半端じゃありませんでした。
白石監督は、映像に信憑性を持たせるのがうまいんですよ。例えば、お蔵入りになった心霊番組の映像が出てくるんですけど、出演しているのが当時まだ売れ始めたばかりのアンガールズさんで、いかにもありそうだなと思わせてくれる。ちなみに、その番組には、まだ20代の松本まりかさんも本人役として出演していて、何かに取り憑かれて頭がおかしくなってしまうんですが、その演技も最高。松本さんがブレイクしたときは、「いやいや、『ノロイ』のときから知っているから!』って思っていましたね(笑)。
演出も素晴らしいんですよ。特に、”ある不気味な現象”に巻き込まれたであろう親子へのインタビュー映像が流れるシーンは、今も斬新。親子は「隣の家から赤ちゃんの鳴き声がするんです」とかなんとか語るんですが、その話が終わった瞬間、急に静止画面になって「親子は翌日交通事故で死亡した」みたいな字幕がパンって出るんです。呪われて死ぬシーンってある種の見せ場だから、普通のホラー映画だったらしっかり描写していると思うんですよ。だけど、『ノロイ』ではそれをせずに、まるでニュース映像みたいに、事実ベースで進んでいくのが逆に怖くて、マジで震え上がりましたね。
今ではもう白石ワールドの大ファンです。この前も、『国宝』を観るために映画館に足を運んだつもりが、白石監督の『近畿地方のある場所について』も上映されていたので、結局そっちを観ちゃいました(笑)。いつか『ノロイ』のアンガールズさんみたいな感じで僕らも使ってもらえたら最高ですね。いや、本人役じゃなくて、通行人役でもいいのでぜひ出してほしいです!
語ってくれた人
渡辺銀次
わたなべ・ぎんじ|1985年、山口県生まれ。東京NSCを14期生として卒業後、2019年に小橋共作とドンデコルテを結成。現在はボケを担当している。M-1グランプリ2025で準優勝し、話題を集めた。
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