ファッション
オレゴンで刷新された土いじりの装い。
PORTLAND/変わらないもの、生まれ変わるもの。
STYLE SAMPLE ’26
photo: Parker Fitzgerald
text: Sakiko Setaka
2026年2月 946号初出
2026年1月28日
擦り切れて縫い継がれてこそカッコいい
未来のガーデンウェアになるために。
〈マイルス レオン〉が耕す自分たちの庭と
循環するコミュニティ。
洋服作りを本業としながら土を耕し、そこで取れた野菜でガーデン仲間のシェフが料理を振る舞う。摘みたての花を飾った食卓を囲むのは、ポートランドの街中から少し離れたこの島にわざわざ足を運ぶ友人たち。そして同じ一画で育ったりんごの木から醸されたハードサイダーで乾杯する。〈マイルス レオン〉を知ったのは、そんな一夜の話を人づてに聞いたからだ。
「ブランドを立ち上げるときに〝ガーデン〟を核に置いたのには、2つの意味があったんだ」と語るのは、ファウンダーのライアン。
「ひとつは、仕立てのいい上品なガーデンウェアを作ること。それは、庭を育てるように、時間とともに着る人の生活に馴染み育つ服。もうひとつは、ぼくたち自身が庭仕事をすることで、日々の喧騒から離れ、ゆっくりと土に触れる〝心を耕す〟時間を持ちたかったからなんだ」
パートナーのジュリアンと〝ブランドとしての庭〟を始めて1年。試行錯誤を重ねるうち、服と庭の間を自然に行き交う仲間が集まり、静かに広がるコミュニティが育まれていったという。
Jacket – Miles Leon
Shirt – used
Pants – used (Filson)
Boots – Feit
Scarf – Miles Leon
ボタンダウンシャツをウールのトラウザーズにタックイン。庭仕事でも品を保ちたいのは「コーナーストアに行くにもドレスアップをするようグランマに育てられたから」という習慣もあり。肘に穴が開くまで着倒したシャツにはメンディングを施して着続けている。
Jacket – Miles Leon
Vest – Filson
Sweater – Miles Leon
Pants – Carhartt
Boots – Sorrel
オーダーメイドのスーツを仕立てるブランドで修業を積んだライアン。伝統的なブレザーから着想された上品なジャケットは、あえて裏地を省いて軽く、動きやすく。生き様やスタイルのお手本はイギリス人の庭師、モンティ・ドン。今日の着こなしも彼を少し意識した。
ふたりがガーデンを始めると動き出したとき、友人知人から何代も受け継がれてきたという貴重な種が届き、土作りや植え付けのタイミングを教えてくれる人が次々に現れた。自分たちの身近に、こんなに熱心なガーデナーたちがいることに驚いた。
「小さなフラワーファームを営むローガンとジェームス夫婦も、収穫物から採れた種を分け与えてくれて、どんな品種をどのタイミングで植えたらいいか、なんてことまで細かく教えてくれて。ぼくらのメンターでもあるんだ」
Jacket – Eddie Bauer
Vest – Filson
Shirt – Miles Leon
Pants – Miles Leon
Boots – Thorogood
フラワーファームを主宰するローガンの旦那さん、ジェームス。「庭仕事は妻のかたわらで、待つこと、コントロールしないことを学んでいるよ」。〈マイルス レオン〉のダブルニーのコットンキャンバスパンツはタフでポケットが多く、庭仕事の制服に。マフラーはローガンのお手製。
Jacket – Miles Leon
Pants – used (Carhartt)
Shoes – Plasticana
Scarf – Mackie
Tool Belt – Wheeler Munroe
夫のジェームスと共有するジャケットの上に重ねた革のツールベルトは、ノースカロライナの小さな工房でハンドクラフトされているもの。「おかげで工具をポケットに入れて穴が開くことがなくなったわ」。自分たちの結婚式用に花を育てたのをきっかけに学び直し「Best Friend Flower Farm」を始動!
彼らはもともと、ジュリアンがポートランドのセレクトショップで働いていた頃からの友達であり、テリーはその店の長年の常連。そして夫婦はいまもアパレル業界で働きながら自分たちのファームに毎日のように通っている。
「街でおしゃれな洋服に囲まれている仕事と、自然と向き合えてスローダウンできる時間がいいバランスになっているの。毎朝、ファームを訪れるときは畑の友人に会いに行っているような感覚」とローガンはブーケをさっと束ねながら教えてくれる。
Jacket – Miles Leon
Pants –used
Boots – used (Timberland)
Beanie – no brand
Scarf – Miles Leon
〈マイルス レオン〉のキャンバスジャケットに合わせたのは、別のパンツからポケットを取って、フロントに縫い付けたヴィンテージのアーミーパンツ。あらゆるものの蒐集家として街で名高いテリーは、ミリタリーアイテムだけで1000着以上所持するという筋金入りの大先輩だ。
〈マイルス レオン〉の庭と隣接してりんご畑があり、その一画を囲うように牛たちがゆったりと放牧されている。
「エイミーはアーティスト、ダニエルはシェフをしながら、りんごの剪定から収穫、発酵、瓶詰め、ラベルデザインまでインハウスで行うハードサイダーメイカーでもあるんだ。ふたりとはこの土地をシェアするようになって深く知り合い、いまでは大切な友人だよ」
ジュリアンのこの紹介で、冒頭のガーデンのディナーパーティの食周りを担当したのが、つまりこのカップルのことだと合点がいく。
Jacket – used
Sweater – used (Lemaire)
Shirt – Miles Leon
Pants – Carhartt
Shoes – Carhartt
右/Amy Barrett(33)Artist, Cidermaker
Jacket – used (Wrangler)
Sweater – Studio Tercette
Sweater – Miles Leon
Pants – Rudy Jude
Boots – Keen
自然発酵のハードサイダーブランド「Little × Litte」を主宰して4年目のダニエルとエイミー。それぞれシェフ、アーティストとしての才能を生かし、エイミーがデザインを手掛け、ダニエルはサイダーに合わせたフードのポップアップ等も行う。エイミーが肩から掛けているのは収穫専用の巨大なバッグ。デニムonデニムの差し色には〈マイルス レオン〉の白シャツでダニエルとお揃い。「乾きやすいコットンリネンなので、季節を通して作業用に愛用しているよ」。刺繍が得意なエイミーは自分のパンツやダニエルの穴が開いたニットに独自のダーニングを施す。ふたりとも手をかけて着るほどに味が出る丈夫な自然素材を好む。
「そしてテリーはヴィンテージの生地を譲ってくれたりヨーロッパのワークウェアのコレクションを見せてくれたり。僕たちのクリエイションに絶大な影響力とインスピレーションを与えてくれる親友であり大先輩」
細部が擦り切れるまで着込まれた古いワークウェアをつぎはぎしながら着こなすテリーのスタイルから、ライアンとジュリアンは自分たちの服がいつかこんなふうに育つまで愛用されることを想像してやまないのだとか。
「なぜなら、僕たちの服は、着る人との充実した時間によって〝耕される〟と思っているから。それが、僕たちにとってのガーデンの時間。そして誰の心にもガーデンは在ると信じているよ」
ゆっくりと、意図をもって、忍耐強く。ライアンとジュリアンは口を揃えるようにして、「服作り、庭作りを通して叶えていきたいのは、〝自分自身と周囲のコミュニティを耕していくこと〟」と語る。それはもうすでに、確かな芽吹きを見せ始めている。
30種以上の野菜や花が育てられ、1年目のおわりを迎える〈マイルス レオン〉のガーデン。仲間たちとパンプキンやビーツ、豆、最後の生花の収穫をしながら、来季の構想中。畑の野菜や果物はコンポストや牛の餌としても活用されている。
インフォメーション
Miles Leon
’22年、ライアンとジュリアンによってローンチされた、“Gentleman Gardeners”をテーマに据えた洋服ブランド。テーラードの技術や伝統に根ざしながら、自然素材にこだわり、スマートで機能的なガーデニングウェアを志す。“Space in between”という表現を彼らが多用するように、普段着にもドレスアップにも適応する上品さを併せ持つ。
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