ファッション

Jason Julesのスタイル日記。

2024年2月16日

STYLE SAMPLE ’24


coordination: Keita Hiraoka
text: Keisuke Kagiwada
2024年2月 922号初出

 毎朝、何をどう着るか。その繰り返しにこそ「人」が見えてくる。2人のファッション賢者の16日間の記録に学ぶ、スタイルの作り方。

Jason JulesWriter,『Black Ivy』Author
ジェイソン・ジュールスの場合。

Jason Jules

Jason Jules

現行品とヴィンテージ、カジュアルとフォーマル。両極端のものを華麗にミックス。ニュートラルなスタイルに遊び心を添えるのは、赤や紫のソックスだ。

現行のペインターパンツの上に、ヴィンテージのウェスタンシャツと〈リー〉のジャケットを。新旧をミックスするというアイデアは、男性をコンフォタブルな気分にさせてくれるので昔から大好き。
このコーチジャケットはグラフィックがないのがいい。首に巻いたスウェットも無地。単色アイテムを重ねるのは私の常套手段。柄物も嫌いじゃないが、下手するとうるさくなり過ぎるのが玉に瑕だ。
クリケットセーターはタイラー・ザ・クリエイターの〈ル・フルール〉クラシックなデザインでありながら、色使いやVネックのサイズにタイラーらしい遊び心があるから、着るのが楽しいんだ。
古着のジャケットは去年のベストバイ。若い頃はたくさん服を買う余裕がなくて、この手の着て楽しいアイテムを見つけては、多様な着こなしを考えたものだ。ちなみに、紫の靴下は私のシグネチャー。
3つボタンブレザー&レップタイとファティーグパンツ&ブーツ。異なる2つの世界観を繋げるのはワークシャツだ。“現代のブラック・アイビー”とは何かと問われたら、私はこれだと答えるだろう。
ヴィンテージ〈L.L.Bean〉の青いアノラックと、ピンクストライプのボタンダウンに白いジーンズ。こうやって色で遊ぶのも好きなんだ。組み合わせによっては、アイテムをよりよく見せられるからね。

着ることで一日を楽しく過ごせるかどうかが一番大事。
根底にあるのは“ブラック・アイビー”に教わったルール無用の姿勢。

 昔から意味不明だったんだ。モダン・ジャズ・カルテットやマイルス・デイビスの創造性は誰もが認めているのに、彼らのファッションについては白人のコピーだといわれることが。それで調べてみると明らかになったのは、その装いが1950年代に起こったアメリカにおける黒人たち、とりわけアーティストや学生、それからアクティビストによる反差別運動の一つの帰結だということ。つまり、「裕福な白人たちが享受している特権を、黒人たちにも平等に分け与えるべきだ」と訴えるために、彼らはアイビー、要するに白人エリート層のスタイルを採用したというわけなんだ。

 かくして誕生したブラック・アイビーというスタイルはしかし、あらゆる黒人アーティストが自身の仕事において成し遂げたのと同様、本質には伝統の破壊がある。ルールを重んじる白人のアイビーとの一番の違いはそこにあると言えるね。私が『Black Ivy』を書いたのは、その歴史を正しく理解してもらうためなんだ。そして、その歴史は今もなお変化しつつ継続しているのは間違いない。実際、私も大好きなタイラー・ザ・クリエイターの〈ル・フルール〉や、〈デニム・ティアーズ〉が追求しているのは、伝統的なスタイルをベースとしながら、その枠に収まることがない新しいブラック・アイビーの姿だからね。

Jason Jules
コートは〈グローバーオール〉、デニムとブーツは〈ラルフローレン〉、バッグとキャップは私が手掛ける〈Garmsville〉。作りがいいシンプルなアイテムは、歳月と共に魅力が増していくから好物だ。
Jason Jules
’50年代のアメリカの警察官を彷彿とさせるオーバーコートは、ヴィンテージ。スカーフ代わりに首に巻いたのはカシミヤのセーターだが、このスタイルはリラックスして見えるからよくするよ。
Jason Jules
Tシャツのカジュアルさとローファーのフォーマルさを、カットがきれいなミリタリーパンツがうまく繋いでくれた。スカーフはコーディネートにコントラストを加えてくれる上、寒さ対策にもなる。
Jason Jules
ポイントは赤い靴下。こういうニュートラルな格好をより引き立ててくれるから。ちなみにコートは雑誌『CLOSE UP AND PRIVATE』の編集者セルゲイ・スヴィアチェンコと〈An-Ivy〉のコラボもの。

 私自身のスタイルもブラック・アイビーに多大なるインスピレーションを得ているけど、特に影響を受けているのがまさにその破壊的な側面、つまりルールに固執しないという態度なんだ。例えば、伝統的なアイビー主義者であれば、私のようにわざわざ新品のブレザーとボロボロのチャックテイラーを合わせることはないだろうし、現行品と古着、フォーマルウェアとスポーツウェアをミックスすることもないだろう。なぜならそれは、ルール違反だから。

 何でそんなことをするのかといえば、ひとえに気分よくなれるから。私のワードローブには本当に気に入ったものしかないのも同じ理由。私がコーディネートを組む上で一番大事にしているのは、それを着ることで喜びに満ち溢れた一日にできるかどうかなんだ。

夏服のようなアイテムをレイヤードすることで、季節の変わり目にぴったりなスタイルをしてみた。実際、ラグシューズは素朴な雰囲気があるし、夏はもちろん、冬にも重宝するから年中履いている。
Jason Jules
この日は、いつも美しいパートナーのマリアナと友人宅へ夕食に行った。スポーツジャケット、ジーンズ、ローファー、ボタンダウンシャツと、いつも以上にクラシカルな服装なのは、そのためだ。
Jason Jules
〈ユニクロ〉のニットベストは、ミリタリーセーターの袖を切って着ていた10代の頃を思い出すアイテム。グレーの靴下を穿いたので、ボタンダウンやキャップのロゴなどでポップさを取り入れた。
大好きなネクタイを着用するために考案したスタイル。実際、ブレザー&ミリタリーパンツという組み合わせは、「着飾っているんだ」という気負いを感じることなく、ネクタイを楽しむことができる。
パーカは〈GANT〉と〈Garmsville〉のコラボアイテムで、ブーツはフランスの若い靴職人マックス・ソヴァールのもの。とても高級感のある仕上がりで、ここ数ヶ月は完全に魅了されているよ。
〈ラコステ〉と〈ル・フルール〉のジャケットは、袖口とサイドベンツにパールボタンが付いていて細部も素晴らしい。〈ディッキーズ〉の874やチャックテイラーなど控えめなアイテムと相性抜群だ。

プロフィール

Jason Jules

Jason Jules

Writer,『Black Ivy』Author

ジェイソン・ジュールス|1964年、イギリス・ロンドン生まれ。ロンドンを拠点とするライターとして、数多くの雑誌にファッション、音楽、デザインにまつわる記事を寄稿する傍ら、メンズウェアに関するサイト『Garmsville』を運営。『Garmsville』ではファッションアイテムも数多くリリースしている。2018年には、服飾家ジョン・シモンズのドキュメンタリー『A Modernist』の脚本を担当した。