ブルース・ウェーバーと共に〈カルバン クライン〉のキャンペーンを手掛けたりもしたスーパースタイリスト、ジョー・マッケンナの下から独立した経歴を持つ、リッキー・ヴァン・ギルス。実用性を大事にしながらも、いろんなスタイルを楽しむのが彼のポリシーだ。
「僕の父はね、ミドルウォッシュでブルーのサイズ36のストレートカットのラングラージーンズを、毎日はいている人物だった。10本は同じものを持っていて。当時の僕は、なんてつまらないんだと思っていた。対照的に、祖母はいつもファッションを楽しんでいた。エメラルドグリーンの、クロコダイルプリントのフェイクレザーコートとかね。だから今もファッションの楽しみは、『変化』だと思っているよ」
スタイルがあるって大切だ。そういう刷り込みからちょっと自由になれるかもしれないリッキーの、1週間のスタイルの変化を見せてもらおう。
Style 01
まずは、気が乗らない日(笑)。

Shirt – Comme des Garçons Shirt
Pants – Lemaire
Socks – Falke
Shoes – Calla
「さぁ始めよう。冬の、なんとなく気が乗らない一日ってあるよね。そんな日は大きめの服が昔から好きだからクリケットセーターもゆったり、楽に。〈コム デ ギャルソン〉のシャツは好きなピンク色。バブーシュとかも作っている〈カーラ パリ〉のファンキーなミュールとエスプレッソで気分を上げるよう心がけてみる」
Style 02
降ってないけど、雨のフリをね。

Knitwear – Maison Margiela
Shirt – Marni
Pants – Loewe
Shoes – Rick Owens × Birkenstock
「雨の日なんかはタバコブラウンのトレンチコートがぴったりだ。それにブルーの鮮やかなシャツをきりっと合わせて。
〈メゾン マルジェラ〉のセーターは毛玉のできてきた質感も込みで気に入っている。そして今日もパンツは太め。
みんなもそうだろうけど、毎日忙しいし、動きやすいことは服装においてとても大切だと思う」
Style 03
深夜まで遊んだ、その翌日。

Knitwear – Damir Doma
Pants – used (Levi’s)
Shoes – Undercover × Nike
Socks – Alto Milano
「こないだ、遊び過ぎた翌日に二日酔いでマルシェ・サンカンタンでコーヒーを飲んでから友人に会いに行ったという、つまり何でもない日のスタイル。〈ジュンヤ ワタナベ × フィルソン〉のウールジャケットは生地の組み合わせ、フィット感、色のすべてが最高だ。
〈アルト ミラノ〉のウールのソックスで上品さを、ひと匙」
Style 04
14歳からかぶっている帽子。

Knitwear – used
Shoes – Nike
Bag – Lemaire
Socks – Paul Smith
「シカゴ・ブルズのキャップはかれこれ14歳からかぶっている。バスケが大好きというわけではなく、ロゴがかっこいいからずっとかぶっている。それでもいいだろ? ボリュームあるムートンのコートとの相性もばっちり。このシャツの色、好きでベビーブルーと呼んでいる。
遊び心のある〈ポール・スミス〉のソックスはストライプ。見える?」
Style 05
どこへ行くにも自転車で。

Shirt – Ralph Lauren
Pants – Dries Van Noten
Shoes – Rick Owens × Birkenstock
Bottle holder – hand knitted by a friend
「僕はオランダ出身だから、どこへ行くにも自転車。いい色と形の中綿ジャケットは実はヴィンテージ。〈ドリス ヴァン ノッテン〉のパンツもパッド入りでとても暖かい。それにこれだよこれ、ボトルホルダーは友人のハンドメイド。これだけ揃えばソックスはなくても大丈夫」
Style 06
休日も気が抜けない。なぜ?

Watch – Komono
Pants – used
Shoes – Acne Studios
「ライラック(花の色のことだよ、よろしく)のポプリンシャツに、レディスのオールインワンの古着をリメイクして作ったストライプパンツ。それにレザースリッパ。一日中、家の中で過ごすときのスタイルだ。あ、これ。時計を身につけていないと、あっという間に一日が過ぎてしまうから注意していないとね。日曜日も気を抜かないよ」

Style 07
TGIF! 知ってる?

Pants – MHL. By Margaret Howell
Shoes – Lemaire
「日本では花金っていうのか。こちらでは『Thank God It’s Friday!』なんだよ。今夜は僕の誕生日パーティがここで開催される。シャツとパンツはシックなセットアップ。元ダンサーだからね。一晩中踊り明かす予定だ。遊びの日も実用的な装いでないとね。見てくれてありがとう。
ポパイを読んでいるなら、『L’étiquette magazine』もよろしくね」

プロフィール
Ricky Van Gils
『L’étiquette magazine』ファッションエディター。オランダ出身。スタイリストでもある。コンテンポラリーダンサー、ファッションデザイナーといった夢に挫折したとき、オランダ版『VOGUE』誌でインターンを経験。縁がありジョー・マッケンナの下で助手を務めた後、独立。