カルチャー

僕らが観てきた映画のABC。/WORLD

各国大使館に聞いたベスト・ムービー。

2025年12月8日

広い世界に目を向けてみよう。
文化が違えば、名作も違う。
映画愛の博覧会、ただいま開催中!

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カナダの代表作

『C.R.A.Z.Y.』
ジャン=マルク・ヴァレ 2006

© 2005 PRODUCTIONS ZAC INC.

1970年代のモントリオールを舞台に、少年が、自らのセクシュアリティと宗教、家族との関係に悩みながら成長する様子を描く。当時LGBTQ+を取り上げる作品は珍しく、異例の注目を集めた。DVD¥4,180(ファインフィルムズ)

「カナダという国の多様性と家族間の絆、自己のアイデンティティを描いた青春映画の傑作です。『ダラス・バイヤーズクラブ』『わたしに会うまでの1600キロ』『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』などで知られるヴァレ監督はカナダが誇る名監督です」

駐日カナダ大使 兼
インド太平洋地域担当特使
イアン・マッケイ

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僕らが観てきた映画のABC。/WORLD

カナダ大使館

◯東京都港区赤坂7-3-38 ☎03·5412·6200 北米ではロスに次ぐ産業規模を誇るバンクーバーをはじめ、トロントやモントリオールでは映画祭も開催。デヴィッド・クローネンバーグ、ドゥニ・ヴィルターヴなど名監督もお忘れなく。

メキシコの代表作

『アモーレス・ペロス』
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 2000

©Alamy Stock Photo/amanaimages

兄嫁を愛し闘犬に身を滅ぼす男、売れっ子モデルと彼女を求め家族を捨てた男、元テロリストの殺し屋。とある事故を起点に、それぞれの人生が交差する。イニャリトゥ監督衝撃のデビュー作であり、カンヌをはじめ数々の国際映画祭で多くの賞に輝いた名作。

「『レヴェナント: 蘇えりし者』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』など、今やメキシコを代表する巨匠であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のデビュー作。衝撃の物語と人間模様―観るものの心を揺さぶるメキシコ映画の傑作」

メルバ・プリーア
メキシコ合衆国大使館
駐日メキシコ大使

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メキシコ合衆国大使館

◯東京都千代田区永田町2-15-1 ☎03·3581·1131 ポップコーン(デカめ)にチリソースをかけて食べるのがメキシコ流。名監督も多いメキシコ。現代もアルフォンソ・キュアロン、ギレルモ・デル・トロ監督などが牽引中。

ブラジルの代表作

『シティ・オブ・ゴッド』
フェルナンド・メイレレス、 カティア・ルンド 2002

O2 Filmes curtos Ltda. and Hank Levine film GmbH 2002.

「地球の裏側からやってきた『仁義なき戦い』」として日本にも紹介され話題となった本作。悪の才能が開花する少年の姿を追い、リオデジャネイロのスラム街(ファヴェーラ)のリアルを映し出す。Blu-ray¥5,280(TCエンタテインメント)

「’60年代後半、ブラジル・リオデジャネイロ郊外の〝シティ・オブ・ゴッド〟(神の街)と呼ばれるスラム街を舞台に、その暮らしの世界を、大迫力のアクション、ドラマ、ユーモア、そして美しい映像で描いた、ぜひ観ていただきたい名作です」

オタヴィオ・エンヒッケ・ジアス・ガルシア・コルテス
ブラジル連邦共和国大使

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ブラジル連邦共和国大使館

◯東京都港区北青山2-11-12 ☎03·3404·5211 南米最大の映画市場を誇るブラジル。3534の映画館があり、統計開始以来最多。映画の年齢区分制度は独自で、『鬼滅の刃:無限城編』が「+18(R-18)」に指定されたことも話題になった。

イタリアの代表作

『ドマーニ! 愛のことづて』
パオラ・コルテッレージ 2023

©2023 WILDSIDE S.r.l – VISION DISTRIBUTION S.p.A

国民的コメディエンヌであるパオラ・コルテッレージが主演、共同脚本、監督を務める。舞台となるのは戦後間もない1946年5月、ローマ。女であるがゆえに虐げられてきた一人の主婦が主人公。2023年のイタリア国内興行収入第1位を記録。

「イタリアの歴史に根ざしながら、尊厳、自由、女性の解放といった普遍的なテーマを、繊細かつ力強く描き、現代イタリアにおける女性の声の貴重な証言でもある。洗練された演出と撮影の質の高さが、ストーリー性と感情的なインパクトを増幅させています」

ジャンルイジ・ベネデッティ
駐日イタリア共和国大使

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イタリア共和国大使館

◯東京都港区三田2-5-4 ☎03·3453·5291 イタリアの映画館はチケット代も比較的安い。上映中にお喋りしていたり、エンドロールも最後まで観ない人も多く、劇中に休憩時間がとられたりと日本と比べてフリーダム感があるとか。

写真:アフロ

スウェーデンの代表作

『ホモ・サピエンスの涙』
ロイ・アンダーソン 2019

© Studio 24

『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』の“リビング・トリロジー”と呼ばれる人間についての3部作を経て、巨匠ロイ・アンダーソンが公開した一作。万華鏡のような映像詩。DVD¥4,180(TCエンタテインメント)

「ロイ・アンダーソン監督は今の時代にも珍しい職人派の巨匠なので、日本の皆様にもっと知っていただければと存じます。人間とはいかに脆く、強く、卑怯で、勇敢で、愚かなのかを感じさせてくれる、哀愁に溢れた作品です。しかも、かつてない語り方で」

アダム・ベイェ
スウェーデン王国大使館
広報文化担当官

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スウェーデン王国大使館

◯現在大使館はリノベーション中につき「アークヒルズ」内仮オフィスにて開館中。詳細は大使館HPまで。’17年にカンヌでパルムドールを受賞した『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のリューベン・オストルンド監督は同国生まれ。

写真:アフロ

ルーマニアの代表作

『来なかったお正月』
ボグダン・ムレシャヌ 2024

時代は1989年。東欧革命の中でも最も劇的だったといわれる「ルーマニア革命」の瀬戸際。抗議活動と個人的な葛藤の中で6人の人生が交差し、チャウシェスクと共産主義政権の崩壊へと繋がる過程を丹念に描き、数々の賞を受賞した新作。

「国の歴史、個人の人生を丹念に描き、2024年の『ヴェネツィア映画祭ヴェネツィア・ホライズンズ賞 最優秀作品賞』を受賞した新作です。日本でも『フランコフォニーのお祭り』で上映されました。今後も上映・配信機会があればぜひチェックしてください」

ステファナ・マルムレアヌ
ルーマニア大使館 担当官

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ルーマニア大使館

◯東京都港区西麻布3-16-19 ☎03·3479·0311 2000年代初頭に巻き起こった「ルーマニアンニューウェーブ」の代表的存在、クリスティアン・ムンジウ監督は『4ヶ月、3週と2日』で2007年にカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した。

オーストリアの代表作

『クラブゼロ』
ジェシカ・ハウスナー 2023

© COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023

エリート名門校に栄養学の教師ノヴァクがやってくる。彼女の過激な食事法を実践する生徒たちはノヴァクの思想に次第に心酔し……。『ルルドの泉で』などで知られるジェシカ・ハウスナー監督作。DVD¥4,400(ハピネット・メディアマーケティング)

「映画芸術の傑作。監督は、冷徹な精密さ、美的な熟練の技、繊細なユーモアで、社会における権力構造と同調圧力を解剖する。栄養療法士が過激な思想に傾倒していく姿を通し、規制過剰の世界における『信仰』『支配』『意味の探求』をめぐる不穏な寓話なのです」

アルノ・ミッタードルファー
オーストリア文化フォーラム東京 所長

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オーストリア共和国大使館

◯東京都港区元麻布1-1-20 オーストリアは『第三の男』『サウンド・オブ・ミュージック』をはじめ、名作映画のロケ地としても名高い。21世紀でも『ブリジット・ジョーンズの日記』『007:スペクター』など、数々の映画に映される。

タイの代表作

『おばあちゃんと僕の約束』
パット・ブーンニティパット 2024

©2024 GDH 559 CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

本国タイで記録的な大ヒットを記録。ステージ4のがんを患う祖母と大学を中退した孫。バンコクの古く美しい風景の中で織りなされる、彼らの心温まる生活を描いた感動のストーリー。DVD3,300(アンプラグド 発売日: 2026年1月7日)

「今年、日本でも公開された本作は、世代を超えた家族の温かい絆を描き、心に響く感動を届けるタイ映画となっています。さらに、活気が溢れる街並みや、タイの独特な暮らしぶりも鮮やかに描写されていて、観る者を魅了してくれる素敵な良作です」

ウィッチュ・ウェチャーチーワ
タイ王国大使館 駐日タイ王国大使

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タイ王国大使館

◯東京都品川区上大崎3-14-6 ☎03·5789·2433 映画館では、本編の上映前にタイ国王を称える「国王賛歌」が流れるそうで、起立する観客も。上映前の広告がちょっぴり長めなのも同国の映画産業に勢いがある証拠かもしれない!?

カザフスタンの代表作

『ダイヤモンド・ソード 王の誕生』
ルステム・アブドラシェヴ 2016

© 2016 Centaurus Rustem Abdrashev Production

15世紀の中央アジアを舞台に、カザフ民族と、その国家カザフ・ハン国の誕生を描く。遊牧民族の自由を愛するスピリットが映し出された一大叙事詩。DVD¥4,400(アメイジングDC)

「カザフ誕生を重厚に描く歴史的叙事詩で、必見です。『カザフ・ハン国〜ダイヤモンドの剣』としてこのたび『カザフスタン映画祭2025』で上映予定です。『大草原の夜明け』『ドス・ムカサン』など、他の上映作品もとても素晴らしいので、ぜひお待ちしております」

ダルケノフ・アイドス
広報文化担当・一等書記官

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カザフスタン共和国大使館

◯東京都港区麻布台1-8-14 ☎03·3589·1821 11月18〜20日には「カザフスタン映画祭2025」を開催。注目の現代カザフスタン作品と出合えるチャンス。鑑賞無料。「港区立男女平等参画センター」にて予約制。

ドイツの代表作

『善き人のためのソナタ』
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 2006

©Wiedemann & Berg Filmproduktion

冷戦期の旧東ドイツを舞台に、良心や責任、自由を問う政治サスペンスドラマ。芸術家夫婦を監視する任務にあたる職員が、管理社会の中で人間らしさを取り戻していく。第79回アカデミー賞外国語映画賞受賞。DVD¥1,257(ギャガ)

「今の私たちが『もし自分が同じ状況に置かれたらどうするか?』と考えさせられ、心に響く作品です。当時、コメディ作品でしか扱われなかったドイツの歴史の一章を深く掘り下げた作品であるだけでなく、自由や尊厳、思いやりなど普遍的なテーマを扱います」

ハインリッヒ・フッベ
ドイツ連邦共和国大使館 広報課長

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ドイツ連邦共和国大使館

◯東京都港区南麻布4-5-10 最近は映画鑑賞し放題のサブスク「Cinfinity」の人気も高く、映画館の客足にも勢いのあるドイツ。21世紀初頭の「ベルリン派」や、ヴェンダースなど大御所の活躍も記憶に新しい。

Official Website
https://japan.diplo.de