ファッション

経年変化するほど加点されていく。通年スタメンのシャンブレーシャツ。

あの人の、偏愛スタンダード。

2025年12月31日

photo: Shunsuke Shiga
illustration: Hitoshi Kuroki
text: Kento Nogami
edit: Koji Toyoda
2025年9月 942号初出

「シャンブレーシャツって『着るほどに完成されていく服』だと思います。経年変化を楽しみながら、長く付き合うことができますから。目の詰まった綾織りのデニムシャツもそうですが、シャンブレーは薄手の平織りだから軽くて夏でも涼しい。レイヤードしやすく通年着られるのが〝スタンダード〟だと思う理由の一つです。ファッションに興味を持ち始めた中学生の頃から、古着屋には必ず置いてある印象。希少なアイテムを除けば値段も手頃で、大量生産された背景がありながら丈夫な作りは、まさに〝チープシック〟だと思います。ダブルのフラップポケットのついたデザインが定番なのですが、年代やブランドによって細かく仕様が異なる点にも惹かれましたね。〈リップラップ〉でも創業当初から毎シーズン作り続けているんですが、作り手としては少し視点が変わる。ドレスシャツをあえて、シャンブレー生地で仕立てているんです。普通のドレスシャツは、やっぱり着ていくうちに汚れてしまって、きれいな状態をキープするのに気を使う。でもこの生地なら洗いざらしでもサマになるし、洗うほどに自然な凹凸感が出てきて、〝着るほどに加点〟されていくんです。概ね型が決まっているアイテムなだけにあえてそこからはみ出すのも面白いですし、どんな時代にもハマる。そんな普遍性に、この先もずっと飽きることはなさそうです」

PRENTISS / 90s

〈エル・エル・ビーン〉のOEMも手掛けていた⽼舗シャツメーカー〈プレンティス〉の一着。「負担がかかる箇所は3 本針の巻き縫いに。ペン挿し付きのフラップポケットは、王道のデザインです」

RUFF HEWN / 90s

「アメリカ製で、品の良さといえばこの〈ラフ ヒューン〉。かつて〈ラルフ ローレン〉のチノパンツなどもOEMで製造していました。縫製がとにかく丁寧で、前立てもドレスシャツ並みに綺麗」

BIG MAC / 70s

’70年代特有のロングポイントの襟が特徴。「速乾性のあるコットンポリの生地は、年中肌あたりが良い。脇の縫製はロックミシンを使った簡素なものですが、そのチープな作りも気に入っています」

RIPRAP / 17SS

開襟仕様で、生地はコットンリネン。「ワーク系のネルシャツを型のベースに、縫製はドレスシャツ工場で仕立てました。カリッとした生地感で、ラフさと品の良さが、良いバランスになりました」

RIPRAP / 21AW

ドレッシーなクレリックシャツをベースに、白い襟と袖口、藍色のボディともにシャンブレー生地を採用。「この生地でこの配色というのが良い違和感になって、ラフに袖を捲ってもサマになります」

RIPRAP / 25AW

前立てのないフレンチフロント型。「レギュラー襟のプレーンな仕様は、ありそうでない。ロープ染⾊された、6オンスのセルヴィッジ生地を採用し、3㎝間24針というとても細かい運針で仕立てました」

プロフィール

経年変化するほど加点されていく。通年スタメンのシャンブレーシャツ。

⻄野裕⼈ 〈Riprap〉デザイナー

にしの・ひろと|1984年、⽯川県⽣まれ。スタイリスト本間良⼆⽒に師事。アシスタント期間を経て2015年に⾃⾝のブランド〈リップラップ〉を始動。