TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】失われた慣習から学ぶ事

執筆:三枝浩

2025年5月31日

 最後は、ホテルラベルの本場、欧米のラベルからそのデザイン性を学び、そこからホテルの存在への興味が沸きます。
海外では多くのコレクターがいたようですが、経年の間にラベルも散逸し、全てを知ることが出来なくなっています。

先に述べた、ジョアオ・マヌエル・ミモーゾ氏がサイトでホテルラベルの記述でそれらの事が少しわかることが出来、多くのラベルを見てきたところで、その見方も変ってきました。

2004年には、平野久美子さんが書いた「高松宮同妃両殿下の グランド・ハネムーン」に同行した従者が集めた当時のホテルラベルも紹介され、よく見ていたラベルがこの時代のものなんだと知り、それも興味深い本でした。

海外のラベルは矢張り、日本のラベルとは大分違い、そのデザインに惹かれるものが多いのが事実です。
ですから、そうしたものをサイトで紹介することが私の役目なのでしょうか。

多くが古く、もうこれらを見る機会が無いだけに、こういうものがあったと知れば、興味は沸くはずです。

ただ、残念なのは、これらをただ古いものと感じてしまう風潮があることも事実です。

 実は最初に提供したホテルニューグランドや奈良ホテルでは、あのパネルはもう展示していないようです。
あなたのホテルではこんなに素敵なラベルを作り、旅人に渡していたんですよね、、という思いをこめて集まったものをレイアウトしたのですけどね。
確かに古いものだけど、今日のように多くの海外からの旅行者が来るようになったから、今こそ、新しい素敵なラベルを作ってもらいたいなと感じるんですが。

軽井沢万平ホテルはまだあるようですから、泊まりに行ったら原寸サイズのラベルを見ることができます。
先のホテル以外にも、京都の京都ホテル(現在はホテルオークラ京都に)、東山の都ホテル(ウェスティン都ホテル)にもパネルは提供しましたが、かつての名ホテルもこのように経営状態が変わってしまっているから、その歴史をどう扱うかはホテル次第ですね。

 正直、ホテルに泊まる機会は殆どありませんが、運よく歴史的な名ホテルに泊まった時には、自らオリジナルラベルデザインを作りました。

今ではもらえないから。

本当はこんなラベルが欲しかったんだという思いでしたね。

 世相が変わり、ホテルがラベルを作るという慣習はもう起こらないでしょう。
ホテルラベルが流行った時代はもうはるか昔。
多くのデザイナーが残した優れたデザインは、時代と共に忘れ去られてしまいました。
だから、今こそそれらを掘り起こして、残してゆかないといけないですね。     

インフォメーション

三枝浩

さえぐさ・ひろし|事務職の、デザイン作業もする一般人。
ラベルに出会って、その美しさに惹かれ、集め、ホテルに関して調べるようになりましたが、趣味はほかにも。人生色々やらないといけませんね。
ともかくも、失われた、忘れ去られたものを掘り起こさないといけませんね。

Official Website
http://www.hotel-label.com/