ファッション

街から山までシームレスに繋ぐ、ヌー・アバスの着こなし。

2025年4月4日

服と着こなしの細かい話。


photo: Arthur Hitchcock
text: Sakiko Setaka
2025年4月 936号初出

プロフィール

Nur Abbas

〈gnuhr〉〈gnuhr services〉Founder/Designer

ヌー・アバス|1980年、イギリス生まれ。〈ルイ・ヴィトン〉などを経て、〈ナイキ ACG〉のヘッドデザイナーに。2024年、〈gnuhr〉をローンチ。〈gnuhr services〉では〈Goldwin 0〉のデザインも務める。

「ウィークロングのバックパッキングに使えるウルトラライトなレイヤリングアイテムが、実用性とファッション性、そして汎用性を兼ね備え、日常着にもなる」。〈ヌー〉のファウンダー兼デザイナー、ヌー・アバスの理念は一貫している。ラグジュアリーブランドで最高品質のデザインに注力し、〈ナイキ ACG〉でアウトドアの可能性と魅力に開眼。そうした幅広い知識と経験に、自身のバックパッキングへの探究心を凝縮させ誕生した〈ヌー〉は、他のウルトラライト・アウトドアブランドとは一線を画す。

イタリアCifra社の超軽量シートニットを使った発売前の最新作、多機能ポケットベストを初公開。ダイニーマ等、軽くて丈夫な半透明素材を合わせる意外性も〈ヌー〉ならではの提案。

NYのデザイン事務所〈CW&T〉とコラボしたブックマークペンと折りたたみバサミ。アトリエからトレッキングまで常に携帯したいから、パーツを極力削ぎ落としてウルトラライトを実現。

 縫い目やカットライン、装飾のすべてにおいて「より軽く、少なく、無駄なく、いかに削ぎ落とせるか」を徹底的に追求。その結果生まれるウェアは、イタリア製の最高級ニットと、ウルトラライト素材の代名詞ともいえるダイニーマを自然に共存させている。「通気性、保温性、軽量性を兼ね備えたウェアは、真の心地よさとエレガンスをもたらしてくれる」と彼は語り、コーディネートは気負わずシンプルに。例えば、ジャージ素材のTシャツにシルクナイロンのジャケットを合わせれば、品のあるアトリエ仕様に。アルファダイレクト素材のフーディーや〈パタゴニア〉のベストをレイヤリングすれば、気軽な登山にも最適なアウトドアスタイルが完成する。それらのコーディネートを支えるのが、ゆったりと美しいドレープを描くコットンジャージのパンツ。「シーンに応じて裾のドローコードを調整し、丈やフィット感を変えています」

 また、ニュートラルで落ち着いたカラーパレットもヌーが大切にする要素のひとつ。〈ヌー〉の服の機能性を試すため、日々山を歩く中で出合った鳥、苔、小石の色にヒントを得てデザインへと落とし込んでいる。「街とアウトドアをシームレスに行き交う」。そんなリアルな体験の中から彼のスタイルは生まれているのだ。

1. アウトドアに目覚め、初めて自作したのがバックパック。何十もの試作を経て今季ついに商品化し発売予定。 2. 多用途な機能美と遊び心が詰まった〈ヌー〉のネックゲイター。 3. 通気性と伸縮性を取り入れたウエスト部分の切り込みにはウォーターボトルや携帯をキャリーできるパンツも2025SSの新作。 4. 「地球と直につながっているような」感覚になれる〈Vivobarefoot〉の靴。 5. 一本の縫い合わせのみで構成された革新的デザインの〈ヌー〉の「チューブラーT」。 6. 「シャグフーディーV2.0」。動物や鉱物からヒントを得た色使いも〈ヌー〉ならでは。 7. 環境に応じて熱や湿度を開放する〈ヌー〉の「パワーフーディー」。 8. Toray社製の超軽量ナイロンを使用した「ブレイカーウィンドシェル」はレイヤードの重要アイテム。ブランド初の日本製で今季の新作。 9. 自身が手掛ける〈Goldwin 0〉の「スリーディメンショナルベスト」。夏でも雪山に行くヌーは、通年愛用。 10. たったの23gしかない〈ヌー〉の「スリング1 v2.0」。

アトリエから20分圏内のアウトドアスタイル。

左/Garrett Ball 〈gnuhr〉Production Manager 中/Nur Abbas 右/Jack Dorrance 〈gnuhr〉Designer

フリースにシャツをレイヤード。

透け感が特徴的なシャグフーディーの裾からボタンシャツをのぞかせて、程よくクラシックさを加えたレイヤード。袖口からは「最高の肌触りと通気性」というイタリア製ウールナイロンを用いた〈ヌー〉の「Creeper Crew Merino T」と、同系色異素材の組み合わせを楽しむ。

モノトーンに白を差す。

オフィスでのスタイルとベースは同じ。シルク混ジャケットの代わりに、フーディーとベスト、キャップを加えればアウトドアシーンへの移行もスムーズ。モノトーンで揃えたレイヤードにスリングバッグの白が上品な差し色に。ニュートラルな色使いも〈ヌー〉ならでは。

フーディーもタックイン。

「朝は友人とコーヒーショップへ行き、午後は山へ。そんな日常にも自然と馴染む」というジャックの定番がパワーフーディー。リラックスフィットのため、あえて小さめを選びバギーなミリタリーパンツにイン。メリハリのあるアスレチックな着こなしを演出している。