ファッション

TPOに合う服装とは? Vol.3/アレクシス・クラウストル

in Paris

2024年1月27日

STYLE SAMPLE '24


photo: Mari Shimmura
illustration: Kouzou Sakai
text: Shintaro Kawabe
coordination: Masaé Takanaka
2024年2月 922号初出

T=Time、P=Place、O=Occasionをわきまえた服装をする、という概念は多様性の時代でも大切。状況に応じ、自分も周囲も快適でいられるような、嫌な目立ち方をしないスタイル。しかし、それだけじゃオシャレではないね。ここでは個性も上手に発揮する3人に、6シーンの装いを披露してもらいます。

1. 友人の結婚パーティ。

アレクシス・クラウストル
Jacket: vintage
T-Shirt: Good On
Pants: Husbands
Shoes: Husbands
Watch: Hermès

インナーはシャツではなくカットソーで、完璧過ぎないドレスアップに。

自宅で結婚式の支度中のアレクシスは、セルジュ・ゲンスブールやラルフ・ローレンなど、’60年代や’70年代に名を馳せた著名人たちのシックな装いがスタイルのベース。重厚感のあるダブルのジャケットがよりエレガントに見えるよう、胸元にはゴールドのネックレスを合わせてた。一方で、インナーにはラフなカットソーというのが少々意外。「ドレスシャツではなく、Tシャツなのはちょっと抜け感を出すためさ。頭から足の指先まで完璧にするのではなく、どこかワンポイントだけ崩すのがいいんだ」

2. クライアントとの打ち合わせ。

Jacket: Husbands
Shirt: used (Levi’s)
Jeans: used (Levi’s)
Shoes: Husbands
Bag: Hermès

ビジネスシーンでも、デニムはマスト。ジャケットはしっかり肩パッドがあるものを。

颯爽と打ち合わせへ向かうアレクシスのパンツは意外にも〈Levi’s〉。「僕のスタイルにおいてデニムは欠かせないから、ビジネスの大事な場面でももちろんはくよ。けど、ラフな印象にならないよう濃い色を選ぶんだ。ダブルのジャケットは、肩パッドがしっかりと入っているから今日みたいなお堅い日に最適。それに、カッチリと羽織れるこの手のものは、自分の意見や行動に自信を得られる気がするんだ」。お気に入りだという〈Husbands〉の4.5㎝ヒールのブーツを足元に装備すれば、背筋も伸びてシャキッとした気持ちで仕事に取り組めるんだとか。

3. パートナーとのデート。

アレクシス・クラウストル
Jacket: used
T-Shirt: used
Sweater: used (’70s Lacoste)
Pants: used (Lee)
Shoes: Yves Saint Laurent

カッチリしがちなレストランディナーではポップなキャラクターTシャツで気軽さをプラス。

ディナーデートのお気に入りは、9区のフレンチレストラン『Alfred』だというアレクシス。「ピート・モンドリアンの絵画をモチーフにした壁画がある店内はとてもエレガント。だからといって、僕の装いも洗練され過ぎないように心がけているよ。超破格な古着屋『Guerrisol』で見つけたベルベットのジャケットに〈Yves Saint Laurent〉のローファーを合わせた優雅なスタイルに、ミッキーマウスのTシャツを差し込むことで、シックとカジュアルのコントラストが楽しめるし、かしこまりがちなシチュエーションとのバランスを取ることができるんだ」

4. 雨の日の外出着。

アレクシス・クラウストル
Coat: used
Sweater: used (Lacoste)
Jeans: used (Levi’s 501)
Shoes: G.H. Bass
Hat: A.P.C

悪天候でも、身に着けるのはテックウェアではなく、レインウェア代わりのシックな古着たち。

雨予報とは思えないほど、パリジャンらしいシックな装いで街を歩くアレクシス。「いわゆる防水性のある服が僕のワードローブにはないから、祖父からもらったこのオーバーサイズの古着のコートがレインウェア代わりなんだ。それでいうと〈G.H. Bass〉のモカシンも、僕にとってレインシューズ。濡れてもいい革靴があると、雨空の日のスタイリングの幅もグッと広がるのさ」。インナーの赤いニットや肩からかけた黄色いカーディガンのように、明るい色の服を一つでも加えれば、曇天の気分もパッと明るくなるんだとか。

5. ひとりの休日。

アレクシス・クラウストル
Jacket: used
Shirt: used (Levi’s)
Jeans: used (Levi’s 501)
Shoes: Saint Laurent

快適なMA-1とはき慣れたデニムパンツで、オフの日にはくつろぎを優先。

「仕事のときはジャケットを羽織ったりエレガントな服装を意識して過ごしているから、休日はなるべく気張らずにリラックスできる服を着るんだ」と語るように、ゆったりとしたシルエットのMA-1に〈Levi’s〉の「501」のデニムを合わせたオフのスタイルでティータイムを楽しむアレクシス。一方で〈Ralph Lauren〉のインディアンベルトとエディ・スリマン期の〈Saint Laurent〉のブーツによるブラウンのカラーマッチングなどの細やかな色合わせは忘れない。快適な装いでもしっかりとツボを押さえるところが抜け目ないね。

6. スポーツ観戦。

アレクシス・クラウストル
Jacket: used
Hoodie: Good On
Shorts: Adidas × Wales Bonner
Shoes: Saint Laurent
Socks: Uniqlo

スポーティなショーツとエレガントなシューズ。ギャップのある組み合わせでテニス観戦へ。

「僕はテニスを観戦するんだ。全仏オープンの会場の『ローラン・ギャロス』には一度は行ってほしいよ」。そんなときでも「シックとエレガントは切り離せない」とアレクシス。〈Adidas〉と〈Wales Bonner〉によるスポーティなラインショーツに〈Saint Laurent〉の白いモカシンを合わせたスタイルは、彼なりのスポーツ観戦の正装だが、そのインスピレーション源は意外にもNYのストリートブランド〈Aimé Leon Dore〉のルック。「スポーツウェアとトラッドなものを組み合わせて、優雅なムードを構築する彼らのビジュアルはいつも参考にしているよ」

プロフィール

アレクシス・クラウストル

アレクシス・クラウストル

1990年、ボルドー生まれ。〈Chanel〉や〈Berluti〉を経て、現在は〈Boucheron〉に勤務。SNSや雑誌などで見つけた着こなしの参考になる写真をiPhoneのアルバムにまとめるほど、日々スタイリングのことを考えている。休日は蚤の市を巡って、自身のアイデアのヒントになりそうなものを集めるのが趣味。