フード
4年ぶりに学大へ、おかえりなさい『かふぇ りどぅ あんぐいゆ』。
東京五十音散策 学芸大学②
2024年6月30日
photo: Kazuharu Igarashi
text: Eri Machida
edit: Toromatsu
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は春日、蒲田に続き学芸大学へ。
「人生には流れがあって、戻ってくるよう導かれていたのだと思います」と『かふぇ りどぅ あんぐいゆ』店主・木村直嗣さんの妻、良江さん。その言葉に、長い道のりを丁寧に歩んできた二人だから、幸運な巡り合わせがあったのだと感じた。
46年目を迎えるこの喫茶店は、今年3月、4年ぶりに駒沢から学芸大学へ帰ってきた。以前の店舗は学芸大学駅西口のすぐそばで、今回は東口から徒歩1分もかからない場所。どちらにしてもこの街を訪れる人たちに一番近い憩いの場が再びできたのは朗報だ。
2020年、ビルのオーナーの都合で、40年間営業していた場所から離れることを余儀なくされ移転。コロナウイルスが流行し始めた時期とちょうど重なり、一筋縄にはいかないスタートではあったが、試行錯誤を続けながら4年間珈琲を淹れていたら、現在のビルの大家さんが「あんぐいゆは街の景色の中に必要だから」と人に貸すつもりのなかった物件を貸してくれることになった。
考えただけで荷が重い二度目となるお店の引越しを決断したのは、戻ってきてほしいと願う人たちの顔が浮かんだから。新しいお店に移っても、すでに常連さんは馴染んでいる様子で、元からここにあったかのような居心地の良さがある。分厚いネルを使いじっくりと珈琲を淹れる直嗣さんの変わらない姿と、修理やペンキ塗りなどご夫妻が手を動かし整えた店内、コツコツ集めてきた〈ピュイフォルカ〉や〈リチャード ジノリ〉のカップアンドソーサー、〈クリストフル〉のカトラリーなど創業時から大事に扱ってきた食器が空間に調和しているからだろう。
授業を休んではさまざまな喫茶店に出向き読書を楽しむ学生だった直嗣さんと、20代の頃から朝晩必ず珈琲を飲み、初めはこのお店に通うお客さんだった良江さんは、喫茶店が大切な居場所であることをいちばんわかっていて、馴染みの街でできるところまで長く続けることを選択した。場所は変われど、お二人の周りにはずっと香ばしい珈琲の香りと心地いい時間が流れ、そこに静かな情熱が秘められているのだ。

若い頃から六本木の『カファブンナ』や原宿の『アンセーニュダングル』など、さまざまな喫茶店に足を運んでいた直嗣さん。ネルドリップで時間をかけて抽出された珈琲に出合い衝撃を受け、以来このスタイルを続けている。分厚いネルを通すことで、雑味が消えてコクが出る。生豆を2年以上熟成し、毎日100gずつ手網で焙煎している。

華奢で可憐な良江さんだが、お店のために体を張った作業もいとわず、オープン前準備では壁や天井、階段のペンキ塗りも担った。

チーズケーキと珈琲のセット¥1,200 上がサワークリーム、下がチーズの2層に分かれていて、初めはクラッカー、次はチーズと2回に分けて焼く。チーズが溶けないよう、冷たいうちにいただこう。ブレンドコーヒーは「五番町」と「楡」の2種類で、今回はコロンビア豆を5割使った、比較的マイルドだがしっかりとした苦味がある五番町ブレンドに。

店内のカップアンドソーサーはご自宅にたくさんあるコレクションのほんの一部。
インフォメーション

かふぇ りどぅ あんぐいゆ
2024年3月15日に現在の場所で再オープン。元々の物件は細長く、店名はフランス語で「うなぎの寝床」を意味する。チーズケーキのほかにも、クロックムッシュやツナマフィンなど15時までのブランチメニューや17時から始まるキッシュとサラダの軽い夕食として食べられるセットもあるから、昼夜問わず訪れたい。
○東京都目黒区鷹番3-1-9 ボラボラビル2F ☎︎03-6826-2424 12:00〜LO21:00 水休
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