カルチャー
わずらわしい花粉症を忘れるくらいの感動が得られる3作。
4月はこんな映画を観ようかな。
2024年4月1日
text: Keisuke Kagiwada
『パスト ライブス/再会』
セリーヌ・ソング(監)
韓国ソウルに暮らす12歳のノラとヘソンは互いに好意を抱いていたが、ノラが海外移住してしまったため離れ離れに。12年後、オンラインで再会したものの、またしてもすれ違う2人。さらに12年後、わだかまる想いを抱えたソヘンは、ニューヨークに暮らすノラに会いにいく。既に夫がいると知りながら……。ソヘン、ノラ、ノラの夫がバーで会話するシーンが見事。ノラはソヘンの韓国語を最初こそ夫に訳していたが、だんだんとそれをしなくなり、最終的に夫はフレームの外へ追いやられてしまう。個人的な話で恐縮ですが、日本語が達者な外国人の妻を持つ身として、この状況、身に覚えがあり過ぎる。4月5日より公開。
『インフィニティ・プール』
ブランドン・クローネンバーグ(監)
売れない作家ジェームズは、社長令嬢の妻と訪れた高級リゾート地で、ひょんなことから貧しき現地人を車で轢き殺してしまい、警察に拘束される。しかし、刑事に告げられたのは衝撃の事実だ。「この地の法律で人殺しは極刑に値する……だが、あなたのような愚かなリゾート客向けの対策として、金さえ払えば、クローンを作成して、そちらに死刑をアウトソーシングできるから安心したまえ」と。彼は藁にもすがる思いでその制度を利用するが、話はそこで終わらない。自分が殺される姿を目にした彼は、得も言われぬ快感を覚えてしまうのだから……。このエクストリームな欲望の迷宮へ、ジェームズを招き入れる謎の美女ガビはミア・ゴスが演じている。いつもながら素晴らしい。4月5日より公開。
『異人たち』
アンドリュー・ヘイ(監)
昨年末、脚本家の山田太一さんが亡くなった。シティボーイのバイブル的ドラマ『ふぞろいの林檎たち』の生みの親である山田さんには、『ポパイ』でも何度かインタビューを受けていただいたので、今はただただ悲しい。そんな山田さんの小説『異人たちとの夏』を原作にしているのがこちら。孤独な中年脚本家のアダムが、30年前に他界したはずの父母と再会という怪異を通して、傷つきやすい自分と向き合うまでが描かれる。原作との大きな変更点は、アダムが同性愛者として描かれていること。そのことが原作とはまた違う奥行きを物語に与えている。いずれにせよ、山田さんの仕事がこのような形で世界に発見されていくのは、とても嬉しいことだ。4月19日より公開。
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