ファッション

〈ケルトン〉とディスポーザブルウォッチの話。

〈KELTON〉JUNGLE/CAMPER WATCH

2023年12月1日

小旅行とパッキング。


photo: Tetsuo Kashiwada
illustration: Dean Aizawa
text: Koji Toyoda
2023年12月 920号初出

〈KELTON〉JUNGLE/CAMPER WATCH

 ミリタリーウォッチの世界には、かつて使い捨て時計の文化があった。ディスポーザブルウォッチと呼ばれるそれは、ベトナム戦争時に合理主義のアメリカが考案したものらしく、時刻を確認する必要最低限の機能のみ(ご丁寧に24時間表記)。プラケースも裏蓋が外れない仕組みなので、もし壊れたら捨てるだけ。それまでの高価で修理を必要とする時計とは真逆の発想で、兵士全体に時計を支給するという難題をクリアした画期的なシステムだった。その代表格は〈タイメックス〉の「キャンパー」だが、なかには文字盤に“KELTON”と刻印された珍品も。「ん、偽物?」と思いきや、実は戦後フランスで誕生したフレンチ版〈タイメックス〉の一品。見た目はアメリカ版と大差ないが、KELTONネームは数年間しか流通しなかったこともあり幻のキャンパーといわれる。たとえ壊れても使い捨ては禁物だ。

BRAND STORY

〈ケルトン〉ロゴ

フランス国内で〈タイメックス〉を流通させる目的で1955年にスタート。“ケルトン”という名を借りたフレンチタイメックスは、’70年代には国民的なメーカーに成長。クオーツショックの煽りを受けて’80年代末に一度倒産するが、2016年にカムバックした。

インフォメーション

〈KELTON〉JUNGLE/CAMPER WATCH

ベトナム戦争時の標準装備だった軍用時計をモチーフにした、フランス版のキャンパー。36㎜径プラスチックケースに手巻き式ムーブメントなど、オリジナルを忠実に再現した日本限定のリバイバルモデル。各¥16,500(ケルトン/ウエニ貿易☎03·5815·5700)