ライフスタイル

「北東北の」実用逸品!Vol.12

岡部文彦/山のスタイリスト

2023年1月25日

photo & text: Fumihiko Okabe
edit: Masaru Tatsuki

岡部文彦 きこり見習い 現在岩手県岩泉町在住 1976年、岩手県小岩井生まれ

樹木から作る雪板

北国では、雪板なる遊びが浸透しつつある、らしい。大人になってから雪遊びをしてこなかった自分には、聞いたことがある⁉︎ くらいで、そこまで興味も湧いてこなかった”雪板”という雪遊び。岩手に住み始めたからには雪遊びがしたい! と願望はありつつも、なかなか手を出せないでいた。やるのならば、テレマークスキーというのをやってみたいと思っていた。雪山も歩けて散策ができ、しかも滑走ができちゃう特殊スキーで、前から興味はあったのだ。しかし、ネットでテレマークスキーの道具類は眺めつつも、高価だし敷居が高いなあと尻込みし続けていた今まで。おっさんには元気に遊べる時間がないっつうのに、躊躇してる暇なんてないっつうのに。ヤル気度的にも経済的にも太刀打ちできないので結局まだ躊躇している最中。

そんな時に目の前に現れたのが、塚越甲斐くんという青年。地域おこし協力隊の後輩で、林業に興味があってやってきた、スノーボードとサーフィンをこよなく愛する30歳。彼がこの岩泉町に来てくれたおかげで、雪板に興味を持ってしまった。なぜかというと、雪板というのはとてもお手軽に遊べる敷居の低さを知ったからである。滑走するための、スノーボードみたいな、木材で作るボードと長靴さえあれば、雪の上をサーフィンみたいに滑れて、しかも雪が積もる斜面さえあれば、どこででも滑れちゃうというのだ。

しかも、板は自作もできちゃうという。自分で作った雪板で、近所の裏山とか牧草地に雪が積もったら、そこが遊び場。雪板遊びはとても身近で手軽な横乗り雪遊びらしい。

やってみたい! しかも、自分達ならば、『木を伐って、製材して、雪板を作る』。

これが可能なわけである。なんて素敵な行為なんだろうか?

ときめいてしまった。

我が町、山奥の谷の岩泉町でならそんなことが容易にできるわけで。こんな遊び方が正に本望! なのである。そんなことを甲斐くんはこの町に来て、ずっと考えていて、まずは雪板の作り方を山形の〈BUDDHA BLANK〉さんから学び、それを実行しようと、町で伐ってきた木材を使って雪板作りを日々研究して、滑走できるスポットも日々探索して、作り溜めた雪板を使って、地域の子供たちに遊んでもらって、スノーカルチャーのない岩泉町に、新しい遊びの文化を広めようと草の根活動を始めている。

彼の行動にもとても影響を受けてしまった自分も、教えてもらいながら、まずはサワグルミという軽さが特徴の樹木でマイ板を作ってみた。

先日、近くの牧草地で自分で作った雪板を滑らしてみたが、全然滑りが悪くって、うまく滑走できなかった。甲斐くんが作った板はめちゃくちゃ滑らかに滑ることができた。ソールをもっと細かく滑らかに研磨しないといけないことがわかり、自作はそんなに簡単ではない。甘くないことがわかった。でも樹木の板だから、直しが効くのがまた手軽でいい。早速、甲斐くんに指摘された部分の修正を始める。

この遊びはまさに、雪国ならではの遊び方で、そういう自然体なものがカルチャーになっていくんだなあと実感した。都会の街でスケートボードが文化になるのと一緒なんだな。あれは都会のバックカントリーなんだな。日本全国、それぞれの自然環境があって、そこに馴染む遊びが生まれて、広まって根付いて文化になるんだなと。

だから、自分も、この雪板という文化を堪能してきたいと強く思った。この北東北の地で。
なんつって。というわけでこれで実用逸品のお話はおしまいです。こんな場を作っていただき、POPEYEさまありがとうございました。ぜひ北東北に遊びにきてみてください。おもしょいんで。

プロフィール

岡部文彦

おかべ・ふみひこ|山のスタイリスト。ファッションスタイリスト時代からの庭師見習いを経て、現在の興味は山へ。webショップ「ホームセンターバリカンズ」の店主、農園芸作業着「ハーベスタ!ハビコル」開発の為に林業現場を体感中。

Official Website
https://www.vallicans.com
http://www.harvesta.net