カルチャー
沖縄を拠点に活動するお笑いコンビ「ありんくりん」にインタビュー
“沖縄あるある”なのに笑える。しまくとぅば(島言葉)で全国へ!
2022年7月17日
シカゴ・ブルズのユニフォームを着た“アメリカ”なクリスさんと、琉球絣姿の“うちなんちゅ”ひがりゅうたさん。ありんくりんは、沖縄を拠点に活動するお笑いコンビだ。漫才もコントもしまくとぅば(島言葉)全開だけど、なぜかめちゃくちゃ面白い。方言が聞き取れなくても、二人の掛け合いからじわっと伝わるものがあるのだ。公式YouTubeチャンネルも話題のありんくりんに、那覇で話を聞いた。
二人でマイクの前に立ったら、もう沖縄だと思った。
――クリスさんの「今年こそ欲しいものがあるわけよ」という言葉に、ひがさんが「辺野古?」と返す漫才を見たとき、こんなふうに風刺を効かせつつも面白いネタがあるんだ! と驚いたんです。
クリス 嬉しい! ありがとうございます。
漫才「悩み」。フェンス、Yナンバー、ホリデーマーガリンなど沖縄あるあるが詰まりまくったネタ。
――結成した頃からこういうネタを?
ひがりゅうた(以下、ひが) 組んだときから「クリスとだったら基地ネタをやろう、絶対ウケる!」と思ってました。二人でこの衣装を着てセンターマイクの前に立ったらもう沖縄だって。それで、僕が沖縄の言葉で話して、アメリカ人が聞いてるだけ、という絵にしようと。クリスを「Yナンバー」(駐留米軍関係者の車両ナンバーのこと)と呼んでも、陽気さが吸収してくれるから大丈夫だと思って。
クリス 日本人が付け鼻を付けたら批判されるでしょうけど、僕はガチのハーフだし、言われたことにはちゃんとツッコんでる。それで中和されてると思います。
――クリスさんのことを「アメリカ〜」と呼ぶのも面白いです。
ひが 沖縄のおばあって、アメリカ人のことを普通に「アメリカ~」って呼ぶんですよ。語尾を伸ばして。ドイツ人もフランス人も全部「アメリカ~」だけど。
――そうなんですね! お二人はどういう経緯でコンビを組んだんでしょうか。
クリス りゅうたとは地元も高校も違うんですけど、僕の友達がりゅうたとも繋がってて、そいつによく一発ギャグとかしてたんです。「誰か面白いやついない?」って聞いたらりゅうたを紹介してくれて。初めて会ったときは「同級生?」って思いました。
ひが 高校生の時のほうが老けてました。
クリス お前今日、なんか肌ツヤいいな。どうした。
ひが ビーチクリーン行ってた。
――浜辺を綺麗に……。さすがです。高校時代のひがさんはどんなキャラだったんですか?
クリス 青年会のエイサー団体の細かいモノマネとかをしてました。僕はその人たちのことを知らないけど、なんか笑っちゃうんですよ。こんな器用なことやるヤツがいるんだ、って。
――それで一緒にお笑いを。
ひが 最初は3人だったんです。
クリス 僕たちを繋いでくれた共通の友達と一緒に、トリオを組んだんです。そいつは東京っぽい笑いが好きで、ネタも標準語だったんですよね。それで東京のNSCに願書を出したけど、りゅうたが「沖縄でお笑いやりたい」って。なんとなく違和感があったんじゃないですかね。じゃあそうしようって。
ひが 沖縄から出るのが怖かったのもあるし、東京の言葉で笑わせる自信がなかったんです。でも、沖縄の言葉でクリスとやったら売れると思った。
漫才、コント、あるあるが充実の公式YouTubeチャンネル。「ひがりゅうたの沖縄方言講座!」は観光客も知っておきたい言葉が満載。
クリス そういう方向性の違いもあって友達とは解散して、僕たちはよしもと沖縄エンターテイメントカレッジ(現NSC沖縄)に入りました。3期生ですね。
審査員じゃなくて、沖縄県民を笑わせよう。
――卒業してからは順調だったんですか?
クリス (ガレッジセールの)ゴリさんの番組に出させてもらったり、舞台にも立たせてもらってたんですけど、なかなか賞レースでは結果が出せなかったんです。劇場ではウケるのに、大会ではウケない。もう優勝とかいいやっていう時期もあったけど、そのうち「審査員じゃなくて、沖縄県民を笑わせようぜ」みたいな気持ちでネタを作るようになりました。
ひが 僕は小さい頃からエイサーがでーじ好きで、公民館で仕事帰りのにーにーたちが大きい声で歌いながら三線弾いて、踊ってるのに憧れていて。入って行ったら教えてくれた。
企画「ひがさんの大好き公民館」。ひがさんがこよなく愛する公民館の魅力を余すところなく紹介する。
りゅうた うちの地元はあんまりそういう交流なかったけどなあ。
ひが クリスの地元にも公民館あるはずだよ? この間クリスの先輩と会ったけど、「最近全然顔出さない」って言ってたけど。
クリス やめて、俺が地元に根付いてないみたいな感じ広めるの。
――(笑)。そのネタというのが、『お笑いバイアスロン2018』決勝で披露した三線と太鼓を使ったコントなんですね。
コント「弟子入り」。『お笑いバイアスロン2018』の決勝ネタ。見事優勝した。
ひが そうです。仲順流りとか、ヒヤミカチ節も織り交ぜて。
クリス 敗者復活で披露したコントでは本土復帰のメッセージ・ソング「沖縄を返せ」も歌いました。
コント「お正月」でも、孫のりゅうたがおじいちゃんに聞かせる歌として歌唱。
ひが ありそうでなかったんです、お笑いで「軍用地返せ」って。
――二人にしかできないネタですね。
ひが 怒られたことはないですけど、前に辺野古で座り込みしてる人からDMは来ました。……「よくやった」って。
クリス これは僕たちが沖縄に住んでるからわかる温度感かもしれないです。もし東京に住んでたいら、沖縄のそういう事情はわからないと思うし。でも大阪ではフェンスのネタもウケたんですよね。ウケるものとウケないもの、その線引きが知りたくて。今、東京や大阪の感覚を勉強中です。
沖縄に居ながら、『M-1グランプリ』へ!
ーーお二人がこだわる沖縄のお笑いには、どういう特徴があるんでしょうか。
クリス みんな、親近感が湧くネタが好きですね。標準語よりも沖縄弁のほうが笑ってくれる。スリムクラブさんって、舞台に上がるときの挨拶は「どうもー!」じゃなくて「皆さん、お疲れ様です」なんですよ。もうグッと近くなる。初めましてじゃない雰囲気を醸し出すのが沖縄の風潮なんでしょうね。
ひが エリアによっても全然違います。離島はウケるとか、北部はおじいおばあがよく笑うイメージ。
クリス だから駆け引きもあるよな。北谷の沖縄そば『浜屋』のくだりとか、北部の人は知らないだろうから。
『O-1グランプリ2022』(OTV沖縄テレビ)で披露したコント「アイドルオーディション」。
――観光客にも人気の有名店なのでめちゃくちゃわかりました。それに、沖縄の歴史や文化を知れば知るほど、ありんくりんのネタが面白く感じられる気がします。コント「うーとーとー」も、『御願ハンドブック』を読んだときに「ありんくりんがやってた!」とハッとして。
コント「うーとーとー」。お正月にカリフォルニアから来たハーフの孫と、ご先祖へのお祈りを促すおばあの絶妙な絡み。
クリス ああ、嬉しいです。
――YouTubeに登場するキャラクターもリアルで面白いです。小学生のりゅうたくんとか、バスケ部のしゅうやとか。初めて砂辺に行ったときは、思わず白石さんがいるんじゃないかと思っちゃいました。
砂辺を守る伝説のサーファー、白石さんの日々を追う動画。口癖は「ワサップ」。砂辺から外は那覇だと思っている。
ひが 沖縄移住歴32年、バツ5の白石さんですね。
ーーOTV沖縄テレビが主催する『O-1グランプリ』では2019年、2020年、2022年と3度も優勝を果たされています。今後の野望は?
クリス 内地に挑戦したいです。1年のうち1ヶ月くらいは向こうの活動がしたい。
ひが コロナ前は東京の劇場にも呼んでもらってたので。
クリス 夢は、沖縄に居ながら『M-1グランプリ』の決勝に行くこと! 県民がどういう反応をするの見たくて、ワクワクしてるんですよ。
ひが ……お前、カッケーな。
プロフィール
ありんくりん
沖縄県出身のひがりゅうたとクリスが2014年に結成。コンビ名は方言で「あれもこれも」。『お笑いバイアスロン2018』(琉球朝日放送)優勝。『新春!Oh笑い O-1グランプリ』(沖縄テレビ)2019年、2020年、2022年優勝。現在冠ラジオ『ありんくりんのヨーガクナイト』(RBC琉球放送)、テレビレギュラー番組『#サタデーキングス』(琉球朝日放送)に出演中。
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC-JBOEI9NRCis8p_han0xww
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