カルチャー
GOOD MUSIC #2/Bobby Oroza – from Helsinki –
2021年7月15日
なにはともあれ、いい音楽が必要だ。
photo: Veikko Kähkönen
coordination: Eri Shimatsuka
text: Ryohei Matsunaga
2021年8月 892号初出

北欧であり、ラテンである。チカーノに歓迎されたこの男、何者!?
「チカーノ・ソウルのシンガーとしては僕は変わり者だよね」
ボビー・オローサは自らの生い立ちと現在の活動についてそう答えた。2019年にリリースされた彼のファースト・アルバム『ディス・ラヴ』のジャケットを見れば、誰もが不思議に思うだろう。彼が両腕を乗せている地球儀の中心は北欧。見た目は若い頃のエルヴィス・コステロみたいな眼鏡の青年だ。しかし、歌と演奏はスイートで妖しく、ヴィンテージなのに新しい。

日本でもDJの友人たちが「オローサ、何者?」と戸惑いながら同時に「最高だ!」と歓喜の声をあげていたし、僕もその熱狂の渦に巻き込まれた。
「(その混乱は)わかるよ(笑)。僕は北の果てに住み、ボリビアの血を引いている。でも、チカーノ・ソウルの伝統を受け継ぐ音楽は国を超えていろんなところに届くんだ」
母はボリビアとフィンランド人のハーフで、一族がみな音楽に携わる仕事で名をなしている。東ヘルシンキは西アフリカなどからの移民も多い。ボビーはそんな環境で世界中の音楽を摂取して育った。音楽で生きてゆく指針となったのはギタリストのジャンゴ・ラインハルト。少年時代に恋い焦がれたのはJ・ディラの作り出すビート。10代の終わりにはキューバに長期滞在して音楽を肌で学んだ。自分が何者かを表明できる音楽を待っていたとき、チカーノ・ソウルが現れた。
ターニング・ポイントはふたつの出会いだ。ひとつは、『ディス・ラヴ』でも彼のバックを務めるフィンランドのヴィンテージ・ソウル・バンド、コールド・ダイアモンド&ミンク。そして、もうひとつは、チカーノ・ソウル界のレジェンドであるテキサスのシンガー、サニー・オスーナの音楽。「僕は若い頃、他人のバック・ミュージシャンとして働いていた。だけど、サニーの音楽と生き方を知ったことが僕に〝ミュージシャンではなく、アーティストであれ〟と目を開かせてくれたんだ」
-

愛用のギターはシルバーストーン・ジュピターの1961年モデル。何年も探してシアトルで見つけた。「伝統をそのまま受け入れるんじゃなく、自分たちのスパイスを加えていきたい。音楽にとって前に進むのは常に美しいことだから」。坂本慎太郎の大ファンで、共演が実現するのを待ち望んでいるそう。 -

古い機材を備えたヘルシンキのスタジオで。「チカーノ・ソウルなら自分を表現できる」
ボビーはチカーノ・ソウルの魅力を「音楽はレイドバックしていても、前に進むためのテンションがある」と表現した。ボビーの音楽を聴けば、それはよくわかる。彼自身の多様なバックグラウンドやチカーノ・ソウルの伝統が、今を生きる若い魂とちゃんとつながって息づいているから。変わり者どころか、日本人の僕らにとっては最良のお手本じゃないだろうか。
プロフィール
Bobby Oroza
ボビー・オローサ|シンガーソングライター。1985年、ヘルシンキ生まれ。音楽一家に生まれ育ち、自らも音楽の道へ。2016年、コールド・ダイアモンド&ミンクをバックにソロ・シンガーとしてデビュー。ニューヨークのレーベル、ビッグ・クラウンの目にとまり、アルバム『ディス・ラヴ』で世界デビューを果たした。
ピックアップ
PROMOTION
きみも建設業界で働いてみない?/施工管理・木村世欧さん
2025年10月17日
PROMOTION
Polo Originals × POPEYE LOOK COLLECTION
2025年10月21日
PROMOTION
介護の仕事のことをちゃんと知ってみないか?
2025年10月16日
PROMOTION
きみも建設業界で働いてみない?/施工管理・相馬怜美さん
2025年10月17日
PROMOTION
お邪魔します、「Polo Originals & Friends」。
W・デイヴィッド・マークスさんと見つけた、今の時代の「自由」なトラッド。
2025年10月21日
PROMOTION
きみも建設業界で働いてみない?/金属加工・相馬 理さん
2025年10月17日
PROMOTION
〈マムート〉のエクストリームな進化が止まらない!
MAMMUT
2025年10月9日
PROMOTION
宮津湾を一望する環境で、高齢者たちが健やかに過ごせるようケアを行う。
介護の仕事のことをちゃんと知ってみないか?
2025年10月9日
PROMOTION
〈マーガレット・ハウエル〉と過ごす大阪旅。
MARGARET HOWELL
MHL.
2025年9月24日
PROMOTION
ヌー・アバスと話す、ゴールドウイン 0のこと。
Goldwin 0
2025年10月10日
PROMOTION
〈ハーベスティ〉の交差するユニセックスな日常着。
HARVESTY
2025年10月15日
PROMOTION
実はアウターも豊富な〈エーグル〉で見つけた冬の相棒。
AIGLE
2025年10月15日
PROMOTION
きみも建設業界で働いてみない?/造園業・根岸 隆さん
2025年10月17日
PROMOTION
クラシックなデザインを備える〈DAMD〉のカスタムカーで街も自然の中も走り回る。
DAMD
2025年10月9日
PROMOTION
クリエイターたちの、福祉に関わる仕事。
介護の仕事のことをちゃんと知ってみないか?
2025年10月23日
PROMOTION
〈THE NORTH FACE〉僕はこの冬は〝ミドラー〟を選ぶことにした。
THE NORTH FACE
2025年10月24日
PROMOTION
〈タトラス〉のダウンとともに未知の場所へ。
TATRAS
2025年10月10日
PROMOTION
「Polo Originals」とは何か?
それは〈ポロ ラルフ ローレン〉の世界観の名前。
2025年10月21日
PROMOTION
〈ルルレモン〉×〈エレウォン〉この組み合わせは、まさに“Pairs Well”。
lululemon EREWHON
2025年10月10日