CULTURE

なぜアニソンが好きなの?/#2 フライング・ロータスの場合。

殺陣の練習をし、寿司を食べ、『YASUKE』になり切ったフライング・ロータスにアニソンの魅力を聞く。

2021.07.13(Tue)

photo: Aya Muto
coordination & translation: Hashim Kotaro Bharoocha
text: Katsumi Watanabe
2021年8月 892号初出

 アニメ好きが高じて、あのフライング・ロータスが製作総指揮とサウンドトラックを担当した、実在した黒人侍が主人公のアニメ『YASUKE-ヤスケ-』。安土桃山時代が舞台なのに、ロボットや超人が登場。時代劇としてはブッ飛びすぎだけど、アクションファンタジーとしては最高だ。サンダーに続きLAの自宅兼スタジオで話を聞くことができた。

自宅の壁には『AKIRA』や『パプリカ』のセル画が大切に飾られ、棚には『ドラゴンボール』の孫悟空やベジータとフレディ・マーキュリーとゴジラが並ぶのも渋い。そして大好きな渡辺信一郎監督作『サムライ・チャンプルー』のサントラは、LPでゲットしている。

「監督や製作陣と共通して大事にしたかったことは、ヤスケを強いだけじゃなく、挫折や失敗から必ず立ち上がってくるような新しいヒーローにすることだったんだ。オレ個人としては、キャラクターの特殊能力や精神世界のことについてアイデアを出したよ」

 サウンドトラック制作時には、なんと自分自身も役作り(!)をしていたらしい。

「制作の同時期に『ゴースト・オブ・ツシマ』にもハマってさ。殺陣の授業を受け、毎日お寿司を食べていた。気分は完全に侍だった(笑)。音楽はアニメのラフやスケッチを観ながら作っていったんだけど、キャラクターやシーン全体がどう動くか、ペースがわからなかった。そんなときこそヤスケになり切り、気持ちや考えを代弁するようなサウンドを作ったね。音楽がハマらない場合のために、いくつかバージョンも作ったりしたけどさ」

 役になり切る無邪気さと大人の判断が功を奏し、劇中の音楽はフライローならではの低音と浮遊感のある独特なサウンドで、作品全体の世界観を統一させている。

「各パートにリバーブ(エフェクターによる残響効果)をかけることで、宙に浮いているような、空間的なサウンドを作り出すことができた。シンセやサンプリングした和太鼓や琴の他、危うく声優の声にまでリバーブをかけそうになったよ(笑)」

レコーディング卓付近には、これまでに数々の名トラックを生んできた〈KORG〉や〈Roland〉などのシンセサイザーが。『YASUKE』で、メインで使用したという「Yamaha CS-60」を弾いてくれた。「映画『ブレードランナー』のOPとENDで、ヴァンゲリスが使ったシンセだよ。これにめちゃくちゃリバーブをかけまくって重みをつけたんだ」

 グッと心を掴まれるサイバーなオープニングテーマ(以下OP)「Black Gold」は、前出のアニメ仲間、サンダーキャットが歌っている。

サンダーキャットのアニソン愛溢れる記事はこちら!

「アニメのOPを作ることは、オレたちの夢だったんだ。日本のアニメみたいに90秒間で物語を説明し、先が観たくなるような、気分を高めてくれる曲を心掛けた。エンディングテーマ(以下END)を歌っているニキ・ランダもアニメが好きで、ENDは緊張感を与えるものではなく、ホッと一息つける曲にしたくて、穏やかな『Between Memories』ができた。本編では険しい顔のヤスケだけど、ENDでは平和に微笑む顔を入れてもらったんだ」

音から入るもよし、アニメから入るもよし。
『ヤスケ』
「Black Gold」や「Between Memories」他、劇伴を含む全27曲。音だけでも超クール。「シンセサイザー奏者の喜太郎の日本盤LPの帯をマネして、漢字で『弥助』と入れた。ジャケの色合いは『子連れ狼』の影響かな。剣術の手本は、ヤスケと拝一刀だ」
Netflixオリジナル
アニメシリーズ
『YASUKE-ヤスケ-』
Netflixで独占配信中のオリジナルアニメ。安土桃山時代、織田信長の家臣だったアフリカ出身の侍「弥助」の物語。ヤスケとフライローが似ていることは本人曰く「偶然」とのこと。監督はラショーン・トーマス。MAPPAによる美麗な作画も必見だ。

 では、フライロー自身はどんな作品のOP/ENDが好きなんだろうか。

「渡辺信一郎監督の作品のOPはどれも素晴らしい。あと最近では『ポプテピピック』も最高だね。本当にバカげた作品だけど、素晴らしいアイデアがたくさん詰まっている。OP『Pop Team Epic』なんか超ヤバい。ENDなら『新世紀エヴァンゲリオン』の『Fly Me To The Moon』には意表を突かれた。不思議だけど美しく、世界観に合ってると思う」

『YASUKE』の続編を構想しつつ、早くもフライローには目標があるんだって。

「上坂すみれさんの声が大好きだから、一緒に『Black Gold』のポップ・バージョンを作ってほしい。早く日本へ行きたいよ」

FLYING LOTUS FAVORITE ANISON

プロフィール

Flying Lotus

フライング・ロータス|1983年、LA生まれ。2006年デビュー。’17年に監督作『Kuso』を発表。同年『ブレードランナー ブラックアウト2022』で渡辺信一郎監督と共作。

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