TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】壁にあるひび割れを見つけだせ。

執筆:持田剛

2026年4月9日

今回、『NONLECTURE books/arts』を立ち上げるにあたって、いくつかの例外的な条件が重なりました。

その中でも大きかったのは、二つの企業の関与だったと思います。それは、〈PARCO〉と〈Goldwin〉です。この二社には、本当に足を向けて寝られません。

通常の文脈であれば、企業は合理性や再現性を優先します。リスクの所在を分散し、説明可能性を担保しながら進めます。それ自体は常套的なプロセスですが、その過程で、ある種の振れ幅はあらかじめ制限されます。

今回関わってくれた二社については、その前提から、大きく外れた判断がなされていたように思います。

少なくともこの場所に関しては、利益が直接の目的ではなく、どこかで“手段”として扱われていました。その“余白”がなければ、この形にはならなかったはずです。

アメリカのグラフィックデザイナーであり、『Colors』の編集長でもあったティボール・カルマンは、1998年のテキストの中で、こうした例外を“残りの1%”と呼びました。

“残りの1%”とは、制度の外側に、壁のひび割れのようにわずかに開いた場所。そこに、ごく少数の実践者がいます。

今回の立ち上げにおいて、その“ひび割れ”にあたる存在があったとすれば、それは〈PARCO〉であり、〈Goldwin〉だったのだと思います。

モノグラフ『Tibor Kalman: Perverse Optimist』に、そのティボールのテキストは収録されています。以下抜粋を拙訳。

「壁にあるひび割れを見つけだせ。そこには、文化やデザインが財布を肥やすためのものではなく、未来をつくるためのものだと理解している、ごく少数の狂った企業家たちがいる。彼らは、富が目的ではなく手段であることを知っている。別の状況に置かれていれば、彼ら自身が、あなたのようなクリエイティブな狂人になっていたかもしれない。」
“Fuck Committees(I believe in lunatics)” (1998)

最後に。簡潔だけどストレートな彼の言葉を置きます。和訳がなんかちょっと野暮に感じるので、そのまま英文で締めたいと思います。

「Rules are good. Break them.」
―Tibor Kalman

プロフィール

持田剛

もちだ・たけし|洋書アートブックの仕入れ、選書、国内外の作家の写真展、アートエキシビションの キュレーション、出版イベント、サイン会等のアレンジを広く行う。1998年よりタワーレコード渋谷店7Fにあった『TOWER BOOKS』のマネージメント、2008年より『代官山蔦屋書店』準備室の洋書仕入れ、2014年よりファッションブランド〈マークジェイコブス〉が手掛けるブックストア『BOOKMARC』のディレクションを行う。2026年3月、渋谷スペイン坂に『NONLECTURE books/arts』を開業。

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