TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】ジェフリー・バワの足跡を辿って

執筆:ニコラ・ユタナン・シャルモ

2026年3月10日

先日、スリランカから戻ってきました。スリランカでは、「トロピカル・モダニズムの父」と称される建築家、ジェフリー・バワの足跡を辿りました。もともとこの建築様式には強く惹かれていて、それは自分にタイのルーツがあることとも関係しているのかもしれません。木、植物、そして開かれた空間がゆるやかに呼応するような佇まいには、どこか本能的に親しみを感じます。日本でいつか叶えたい個人的な夢もそこから生まれました。室内と屋外の境界が溶け合うような、大きな開口部から周囲の緑を切り取る家を建ててみたいと思っています。

最初に訪れたのは、ベントータのデダワ湖を望む半島にある、バワのかつての別荘「ルヌガンガ」です。何十年にもわたって彼自身が手を入れてきた豊かな庭園に囲まれたこの場所は、現在は客室数の少ない小さなリトリートとして運営されています。幸運にも、バワが使っていた寝室に泊まることができました。そこにはプライベートプールとテラスがあり、テラスからそのまま周囲の風景を眺められるつくりです。建築が自然を邪魔するのではなく、むしろ風景を引き立てる。そんな彼の考え方を、実際に体感できる時間でした。

この緑に包まれた場所を後にして、次は中心都市のコロンボへ。2003年に亡くなるまで自邸兼仕事場として使っていた「ナンバー11」に滞在しました。控えめな路地の奥にひっそりと佇む家で、内部は複数の空間が連なりながら広がっています。そこには、スリランカをはじめ、バリや中国などアジア各地で彼が集めた骨董やアート、さまざまなオブジェが並びます。滞在していると、まるで別の時代に入り込んだような感覚になりますが、デザインは驚くほど新鮮に感じられました。建築やインテリアに興味があってスリランカを訪れるなら、ぜひ一度、バワが手がけた家やホテルに泊まってみてください。建築が環境とどれほど美しく調和できるのか、きっと実感できるはずです。

プロフィール

ニコラ・ユタナン・シャルモ

パリ生まれ。現在は東京を拠点とするキュレーター、写真家、クリエイティブディレクター。約10年間日本に暮らし、大手工場と共同で日本限定で生産するアパレルブランド〈Sillage〉を設立した。その後、国際的なブランドとファッションイメージやストーリーテリングを手掛けるクリエイティブエージェンシーを設立し、その後、アンティークと現代のものが並ぶ、クラフトと時間を大切にする空間〈Galerie 21〉をオープン。 作品は一貫して旅の伝統と手作りのものの力を探求している。

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