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シティボーイ&シティガールが夢中になる訳。
What’s PREPPY?
2026年3月6日
photo: Naoto Date
text: Koji Toyoda
プレッピーはアイビーというルーツを持つがゆえ、軽やかでありながら、しっかりとした幹を持つ。ただし、けっして静的ではなく、絶えず彩りを増していく現在進行形のスタイルだ。若い世代とも共鳴するプレッピー。その魅力を、『POPEYE』が信頼するふたりに聞いてみよう。
小林英樹
東海岸のラッパーの自由な着こなしにプレッピーを感じる。
最初に訪れたのはメンズショップ『ネイビーブレザーSTORE 豪徳寺』。店名どおり、アイビー&プレッピーの象徴のひとつ、ネイビーブレザーが土台にある。この店の“顔”ともいえるのが、壁一面の有孔ボードに掛けられた多種多彩なコーディネート。あるときは、紺ブレの下にGジャンとタートルネックのカットソーを忍ばせ、さらに足元をサンダルで着崩す。またあるときはブラックウォッチ柄のシャツと小紋柄のネクタイでスウェットパンツをポップにドレスアップ。店主の小林英樹さんは、季節や日々のフィーリングをスタイリングに落とし込んでいるのだ。この日は、私物の〈トミー ヒルフィガー〉のアイテムを壁一面にディスプレイ。トラッドに軸足を置く小林さんにとっても、プレッピーは欠かせないエッセンスのようだ。
「実は、若い頃に〈トミー ヒルフィガー〉などを通してB-BOYやストリートカルチャーと出合い、ファッションに目覚めたところもあって。それから20代になってプレッピー、アメリカントラッド、ドレスと段階を踏みながら嗜んできました」
カルチャーとリンクした〈トミー ヒルフィガー〉に導かれ、プレッピーの世界へと歩を進めたということか。
「プレッピーの要諦は“着崩すこと”だと思うんです。本来は『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』に載っているような、BDシャツにチノパン、ローファーなど、ある意味で形式的なスタイルになるのでしょう。個人的にプレッピーを感じるのは、2004年くらいのアメリカのラッパーたちですね。ポップな色合いのラガーシャツとドレスシャツを重ねたトップスに、ルーズなデニムをはいたり。ツイードジャケットのインナーはお決まりの白いBDシャツではなく、バーガンディのTシャツでサラッと外したり。髪型はドレッドで、足元には革靴ではなく、バッシュみたいな。定番的に存在し続けるアメリカンクラシックなアイテムを、彼らなりの色の組み合わせやサイズで遊ぶ。一定のルールを守りつつも自由な感性でアイビーやアメトラを見事に着崩しているんです。アメリカでは、それを“ツイストを利かせる”と言うと聞きました。僕が毎日、店の壁用にせっせと組むスタイリングは、その頃心動かされたスタイルの影響が大きいと思います」
ツイストとは、遊びや頓知を利かせること。実は、〈トミー ヒルフィガー〉のプレッピーを象徴する言葉でもあるのだ。小林さんの私物の〈トミー ヒルフィガー〉のジャケットもシャツもパンツも、一見ではアメリカンクラシック的なアイテムであるが、見えるところはもちろん、見えない部分にも様々なツイストが加えられている。
’90年代に購入して以来、大切に着るセーリングジャケット。「襟元の色の遊びも利いて、ジップを開いたら裏地はマスタード。左袖のフラッグロゴもビシッと決まってますね。〈トミー ヒルフィガー〉らしいプレッピーを表現した、シンボリックな一着」
ボックス型のジャケットは肩パッドの入ったショルダー周り、そしてオレンジカラーのウール素材に目を奪われる。「すべての要素が力強く、’90年代のアメリカを強烈に感じます。ルールに縛られない大胆不敵さは、とても魅力的です」
2000年代のものと思われるラガーシャツ。「他のアイテムに比べてシックな印象ですが、そこは〈トミー ヒルフィガー〉、一筋縄じゃいかない。胸元に1本だけ配された白いボーダーに、ブランドらしさが宿っています」
遠目には赤と白のストライプシャツだが、目を凝らすと、赤い部分はタータンチェック柄! 「このツイスト具合はなかなかお目にかかれない。襟裏も青と緑のチェック柄ですし、左の胸ポケットには緑色のステッチのペン挿しも。細部まで抜かりない贅沢すぎるシャツ」
チャコールグレーという落ち着いたトーンのボディを、ジップの赤い持ち手や青のパイピングでツイストさせたフリースジャケット。「配色の妙も素敵ですが、胸だけでなく首裏にもフラッグロゴが配されているのが面白い」
コットンダック地の2タック仕様のパンツ。「ウエストベルト部分の裏地はベージュのダック地で切り替え、ボタンホールには緑ステッチを採用。ここまでディテールにこだわるのか! という驚きに満ちています」
「今も〈トミー ヒルフィガー〉のアイテムは好きで、ちょこちょこ収集しています。B-BOY時代に手に入れたクレイジーカラーのセーリングジャケットを皮切りに、オレンジ色のボックス型のジャケット、風変わりなチェックと白のロンドンストライプのシャツ、ダック地の2タックパンツなどなど。どのアイテムもディテールや色使いに独特の面白さがある。トミー・ヒルフィガーさんがパワフルな性格なのか、先例にとらわれず、フルスイングで遊んでいる感じがします。襟裏や裏地など、普段は見えないディテールに別の色柄や素材を配置する凝り方も素晴らしい。今回、あらためて一着一着を見て、本当に“クレイジーなブランド”だなと思いますね。もちろん、最大の賛辞の言葉として。なによりも、〈トミー ヒルフィガー〉のフラッグロゴに思い入れがあって。若いときに心酔した東海岸のラッパーたちが、このフラッグが付いた服をこぞって着ていたので、自分にとってはNYのシンボル的存在。このロゴを見ると、’90〜’00年代初頭に夢中になったヒップホップが聞こえてくるんです」
小林さんがNYをビンビンに感じるというレッド・ホワイト・ブルーのフラッグロゴは、航海用フラッグ(国際信号旗)から着想を得たもの。それぞれのアルファベットに対応した柄や色の異なる旗があり、本名のトーマス・ジェイコブ・ヒルフィガーのTとJとHを示す3つのフラッグをドッキングさせて、ブランドのロゴマークはデザインされた。なるほど、ここにも小粋なツイストが潜んでいたわけか。今すぐにショップに行って、〈トミー ヒルフィガー〉のアイテムに落とし込まれたツイストを探してみたくなった。
前列の3着のロゴは3つの航海用フラッグを掛け合わせたデザインで、レッド・ホワイト・ブルーはアメリカ国旗のカラーでもある。後列の2着のネームタグには、月桂樹とライオンをあしらったクレスト。こちらもまたプレッピーが高まるデザインだ。
Hanna
プレッピーとは“侘び寂び”のことかもしれないですね。
Hannaさんがアメリカ留学にも持っていった〈トミー ヒルフィガー〉のシャツ。ときにパーティでワインをこぼされたりすることもあったが、その都度、丁寧に染み抜き。今でも愛用している。このシャツの肩にグリーンのニットをかけるのが好きということで、背景色を緑に。
次に話を聞いたのは、Hannaさん。〈TOKYO WEDNESDAY CLUB〉というチャーミングな名義で、日本製のキャンディストライプのBDシャツなどを手掛けている。アイビー好きの両親の影響で、幼少期からファッションに興味を抱き、BDシャツとチノパン、モカシンシューズが“制服”だったとか。そんなシティガールにとって、プレッピーとは? 彼女は’90年代の〈トミー ヒルフィガー〉の一枚のシャツを取り出した。
「これは14歳の頃に東京の古着屋さんで買ったものです。〈トミー ヒルフィガー〉の存在は、小学校の恩師にプレゼントしてもらったマフラーをきっかけに知っておりまして、このシャツを目にした瞬間、思わず手に取りました。でも、こうして10年以上も愛用しているのは、なんでもない白と青のストライプが特別に思えたから。一見すると、どこにでもありそうですが、青より白の配分が多い組み合わせが個人的には完璧で。首元のトップボタンのボタンホールや、胸ポケットのペン挿し穴の周囲をポップな緑ステッチで縫われているところも可愛らしい。これは掘り出し物かもと、袖を通してみたら、オックス地とはまた違う、力の抜けた質感も心地よくて。後で調べてみたら、デザイナーのトミー・ヒルフィガーさんが誰よりもプレッピーな着こなしをされていて、とても素敵でした」
そんな運命的な出合いを果たした〈トミー ヒルフィガー〉のシャツ。日々の暮らしはもちろん、旅先でも、留学中のキャンパスライフでも、Hannaさんのワードローブの“レギュラー”であり続けた。
「ふと、なぜだろう? と考えてみたら、青と白のストライプがいい意味で自分の存在感を消してくれるから。『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』で紹介された“生粋のプレッピー”って洋服に対して無頓着で、気取りがないんですよね。それが彼ら彼女らの美徳だと思います。アメリカ留学しているときにも、レスリング部の学生たちが練習着のスウェットを表裏逆に着ているところに遭遇しましたが、彼らはそのことを一切気にする素振りがありませんでした。当たり前のように風景や生活の中に溶け込んでいる。日々の暮らしの中に“紛れる”という意味においては、私が愛用する〈トミー ヒルフィガー〉のシャツも同じ。だから、無意識に手が伸びるのだと思います」
体験と実感を通して、Hannaさんはプレッピーの“核心”に触れ、その周りを軽快に回遊しているようだ。
「長く着ることで生じる“使い込んだ美しさ”もプレッピーにおける重要な要素。アイビーリーガーだった友人も襟や袖がボロボロになったシャツを今でも大切に着ています。むしろ、そちらのほうがいいとよく言っています。ある人はトートバッグの破れたハンドル部分に布を巻いて、器を金継ぎするかのごとく使っていますが、とても素晴らしい洋服との付き合い方だと思います。アメリカではこういう独特の価値観を“パティナ”と呼ぶそうです。直訳では“古つや”となりますが、それってどこか不完全なものの中に美を見いだす、日本の“侘び寂び”とも通じるのではないでしょうか。そう考えると、私たち日本人がプレッピーという文化が好きな所以がわかるような気がします。ちなみに、私のシャツはまだ年季は入ってないですね。いや、袖に少し綻びが生じていました(笑)」
シャツの袖口をまじまじと見つめ、嬉しそうに笑うHannaさんは、これからもプレッピーの“奥の細道”にどんどん分け入っていくはずだ。プレッピーとはそれだけ探求し甲斐があるものに違いない。
プロフィール
小林英樹
『ネイビーブレザーSTORE 豪徳寺』店主
こばやし・ひでき|1984年、茨城県生まれ。アメリカントラッドブランドのセールスなどを経て、2022年に市場内に『ネイビーブレザーSTORE 豪徳寺』をオープン。ショップではジャケットのパターンオーダーを行い、紺ブレに合う古着や雑貨なども販売。
Hanna
〈TOKYO WEDNESDAY CLUB〉創業者
ハンナ|東京都生まれ。中学生の頃からのアメトラ好きが高じて、2021年に〈トウキョウ ウエンズデイ クラブ〉をスタート。ブランド名は敬愛する大滝詠一の楽曲「雨のウエンズデイ」と、1978年のサーフィン映画『ビッグ・ウェンズデー』から。‘25年にはロンドンやNY、東京でもポップアップを開催。