カルチャー

ソウルの雑誌のことが知りたくなって。

SEOUL CITY GUIDE POPEYE 915 2023

2023年6月27日

SEOUL CITY GUIDE


photo: Kazuharu Igarashi
coordination: Minyoung Kim(TANO International)
text: Neo Iida
2023年7月 915号初出

『BGM』編集テーム
左から、ドラさん( ディレクター、フォトグラファー)、ナム・ピルさん(編集長、デザイナー)、Standing Eggさん(発行人)、ジPDさん(フィルムプロデューサー)、キム・ジョンヒョンさん(フィルムディレクター、フォトグラファー)、キム・ヘソさん(エディター)、

 『THANKS BOOKS』を物色中、『BGM』という雑誌のジャケに一目惚れ。『Apartamento』くらいのサイズ感で、約200ページとずっしり。表紙に〝MUSIC & LIFESTYLE MAGAZINE〟とあるから音楽雑誌なんだろうけど、写真がカッコいいし、インクののった紙の匂いも大好きだから、思わず購入。翻訳アプリを使いながら読んだら面白い!

 特に良かったのが、コンビニ店員に「記憶に残るお客さんはいますか?」とか美容師に「カラオケではどんなラップをしますか?」とインタビューする企画。何げない受け答えから音楽と暮らしが見えてくるし、ソウルで働く普通の人たちが出てるのがインディペンデントならではでいいなあと思った。作ってる人に会いたくなって、思わず連絡した。

雑誌『BGM』
年1回発行。昨年12月発売の第2号は「SLEEPLESS」がテーマ。眠れないときにどんな音楽を聴いているのかをインタビューやエッセイで探る。プレイリストはすべてQRコードで試聴可能(₩21,000)。

「近年は音楽雑誌がどんどん減っていましたが、僕は雑誌を読んで育ちましたし、ずっと文章で音楽を伝えたいと思っていました。さらにコロナ禍で浸透したQRコードを付けてプレイリストを聴けるようにしたら、雑誌を買わない人にも理解してもらえる気がして」

 そう話すのは、ミュージシャンで発行人を務めるスタンディングエッグさん。会議や校了作業は彼の作業場で行っている。編集長のピルさんは、「ライフスタイル」を軸にした。

「その人の深いローカルな視点から音楽を紐解きたいと思っています。幅広い人に出てほしくて、今もDJやミュージシャンに並んでコンビニ店員や女子高生が登場します。普通の人たちの他愛ない話から、音楽について見えてくるものがあると思うんです」

 映像にも力を入れ、本誌のエッセイを本人がナレーションするムービーをYouTubeで公開している。次号の準備を進める今、ピルさんはインディー雑誌の今後をどう考える?

「3~4年前のインディペンデントマガジンブームも落ち着きました。これからは読者のニーズにあわせた雑誌はなくなると思います。話したいことがある雑誌だけが残っていく。僕たちもそんな雑誌にしていきたいです」

ユ・ジェグァンさん
なかでも編集長が見てほしいのは大邱でバー『シェルター』を運営するDJユ・ジェグァンさんのインタビュー。「彼のローカル観と、音楽への愛が結びついた話がとてもいいんです」

THANKS BOOKS サンクス ブックス

THANKS BOOKS サンクス ブックス

 本好きが信頼を置く人気店。本への愛が深く、荷物を置き、本を汚さず読むために長いスタンディングテーブルを置いている。雑誌の棚には、厳選したソウル発のインディペンデントマガジンが。「石鹸」「スプーン」などの生活道具を特集する『TOOLS』や、聖水のショップ『Platz』のクルーが編集した『WEIRDOS』、都市の景観と植物について考える『GARM』など、個性的な雑誌が揃う。美大が近く、グラフィックやインテリア系の雑誌が人気だそう。

インフォメーション

THANKS BOOKS

◯麻浦区楊花路6ギル57-6/57-6, Yanghwa-ro 6-gil, Mapo-gu 12:00〜21:00 無休

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