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SEOUL CITY GUIDE – 聖水編 –

2023年6月15日

SEOUL CITY GUIDE


photo: Naoto Date
coordination: Hyojeong Choi (TANO International)
text: POPEYE
2023年7月 915号初出

近くの工場で働くおじさんたちは昔からの常連さん。店に置いてあるノートに日付と人数を記入してツケ払いしているらしく、社食のように使ってた。いいな〜。

 羽田空港から約2時間のフライトは一瞬で、海外に来た実感がないままソウル市内の金浦国際空港に降り立った。さて、まずはどこ行くか? と浮かんだワードは聖水。事前に下調べしていたときに一番耳にした街の名前で、韓国通の友人もソウル在住の友人も口を揃えて「今一番盛り上がっている街で、人気のカフェや流行りの店はみんな聖水に出店する」という。いや、ほんとかいな。別にカフェに行きたいわけじゃないんだよ、と思いつつ、空港からタクシーで50分。聖水に到着した。駅の近くには人気の『Cafe Onion』や〈Ader Error〉のカフェなど写真に収めたくなる店が並び、〈DIOR〉の旗艦店の前では若者たちがポーズを取ってインスタ撮影会。顔を上げれば屋外広告を飾るNewJeansやLE SSERAFIMと目が合い、街は若者の活気で溢れかえっていた。だけど渋谷や表参道とは何かが違う。この街で目に入ってくるのは若者、若者、工場のおじさん。ん? お洒落カフェ、服屋、工場、お洒落カフェ。お? 買い物とカフェを目当てに遊びに来た若者と、企業ベストを着たまま昼休憩で食堂へ向かうおじさんが街に共存しているではないか。この街で働く方々いわく、もともとは車や印刷物、靴などの工場が集まる地帯で、2016年に『Cafe Onion』が工場跡地を生かしたカフェを出店した頃から注目を集め今に至るという。最初の数年は可愛らしいカフェが多い「女の子が好む街」という印象が強かったが、ここ1~2年で若者向けのカルチャー色のある店が増えてきた。洒落たグラフィックのレストランに見えて店内は超老舗食堂の『ONNURI食堂』に、新しいカルチャーを作りたいと一念発起した店主がいる『page(s)』や『BOLT』。『Kompakt Record Bar』のような人気店もあるし、街の端っこには『GASSTATION』や『Synapse Bar』など、スモールショップも発見。ストリートとハイエンド、古いものと新しいものが同居する様子がすごくユニークで、もうすっかり聖水の虜。最初にここに来たの、絶対正解だった。

1. ONNURI 食堂 オンヌリシッタン

着席した瞬間に自動的におかず(パンチャン)とご飯、汁物がサーブされる。着席した瞬間に自動的におかず(パンチャン)とご飯、汁物がサーブされる。
メニューはその日の日替わり定食(₩6,000)一択だから注文する必要もなし。夜はサムギョプサル(₩15,000)も注文可能。

 大きなガラス窓にシンプルなグラフィック、小洒落たレストランかカフェかな? と思い入店すると、超クラシック食堂の光景が広がり一瞬思考停止した。『ONNURI食堂』は今年で開店11年目を迎える聖水の老舗食堂で、昨年から店主の息子のムヒョンさんが店を手伝い始めたことをきっかけに外観をガラッとリニューアル。店内の雰囲気やメニューは変えず、ムヒョンさんのお母さんが作る韓国の家庭料理はなんだか安心する味。

インフォメーション

ONNURI 食堂 온누리식당

◯城東区演武場17ギル6/6, Yeonmujang 17-gil, Seongdong-gu 6:30〜8:00、11:00〜13:30、17:30〜21:00 ※土曜は昼食まで 日休 

Instagram
https://www.instagram.com/onnuri_r/

2. GASSTATION ガスステーション

 中心地から15分ほど歩くと、人通りの少ない住宅地が見えてくる。端っこエリアにある『GASSTATION』は、聖水が地元のアーティストのスヨンさんがグラフィックデザイナーの旦那さんと昨年から始めたセレクトショップ。スヨンさんの作るセラミックを中心に、ソウルのインディペンデントブランドやアーティストのグッズ、中古レコードや旅先で集めた雑貨まで売っていて、欲しいものばっかりだ! 店名はジム・ジャームッシュの映画『デッド・ドント・ダイ』に出てくるガスステーションの横のギフトショップの雰囲気が好きでつけたんだって。

インフォメーション

GASSTATION 가스스테이션

◯城東区トゥクソム路424/424, Ttukseom-ro, Seongdong-gu 12:00〜19:00 月・火休

Instagram
https://www.instagram.com/gasstation.gift/

3. page(s) ページス

オーナーのグンウクさん。

 聖水のメイン通りの建物の2階にあるミュージックバー『page(s)』に入ると、韓国ドラマの主人公みたいなオーナーのグンウクさんが迎えてくれた。ここでは机の上にある紙に自分の好きな曲をいくつか記入し、リクエストするとその場でプレイリストを流してくれるという仕組み。「誰もが持っているプレイリストを集めて共有できる場所にしたいんです」とサラリと答えるグンウクさん。センスも良くて、かっこよくて、しかも謙虚って完璧すぎやしませんか。

フードメニューも充実していて、ダブルチーズリガトーニパスタ(₩23,000)はボロネーゼソースにマスカルポーネとモッツァレラチーズを絡めて食べると美味。実は、料理を担当するのはグンウクさんのご両親。自分の店を出すことを両親に一度は反対されるも、持ち前のプレゼンスキルで説得して今は家族で経営してる。ってドラマみたいなストーリーが興味深すぎるんですけど!

インフォメーション

page(s) 페이지스

◯城東区聖水ニ路75 2F/2F, 75, Seongsui-ro, Seongdong-gu 水・木19:00〜24:00、金19:00〜1:00、土16:00〜1:00、日16:00〜23:00 月・火休 

Instagram
https://www.instagram.com/pages.grocery.bar/

4. TUNE チューン

 韓国の若者間で大人気の〈thisisneverthat®〉が聖水で新たに始めたセレクトショップ。〈NIKE〉や〈New Balance〉などスニーカーを中心に、韓国のストリートファッションシーンを作ってきたネバザの創設者の3人が、“自分たちが本当に好きなもの”という視点で選んだアイテムが揃う。アパレルは〈NIKE ACG〉や〈ARC’TERYX〉など、スポーティなアイテムをファッションとして取り入れるのがムードの様子。店内は広々と高級感たっぷり。

インフォメーション

TUNE 튠

◯城東区聖水ニ路7ガギル3/3, Seongsui-ro 7ga-gil, Seongdong-gu 12:00〜20:00 無休

Instagram
https://www.instagram.com/tune.kr/

5. Synapse Bar シナプス バー

6人入れば満席のこぢんまりした店内には、自分が聖水にいることを忘れられるくらいゆったりとした良い時間が流れてる。
紫蘇を使ったカクテル「she so…」(₩20,000)はさっぱりとした飲み口で塩味の強いカップ麺と相性抜群。
コールドブリューコーヒーを使ったコーヒーマティーニ(₩20,000)はテラス席で夜風に当たりながら飲みたい。

 元整体師のバーテンダー、ハンさんが「一日の疲れを癒やす場所であってほしい」とあえて聖水の賑やかなエリアから離れた場所でオープンさせた『Synapse Bar』。お客さんの好みに合わせてカクテルを作ってくれるオーセンティックバーの雰囲気がありつつ、お酒と一緒に提案しているのは韓国らしいジャンクフード。トッポキとウインナーを串にさした「ソットクソットク」(₩4,000)やカップ麺など、韓国らしいチープなスナックがカクテルと合うって驚いた!

インフォメーション

Synapse Bar 시냅스 바

◯城東区トゥクソム路341-18 2F/2F, 341-18, Ttukseom-ro, Seongdong-gu 19:00〜2:00、日〜1:00 火休

Instagram
https://www.instagram.com/synapse_bar/

6. Kompakt Record Bar Ver. 3 コンパクトレコードバー ソンスジョム

『Kompakt Record Bar』は今年で5周年。新沙にある1、2号店に比べて聖水のお店は3倍くらいの広さ。平日はジャズを流してゆっくりした雰囲気でバーっぽく、週末はヒップホップやハウスミュージックのパーティを催してクラブっぽい側面も。

 日本でもセレクトショップやPOPUPでグッズを見たことがある『Kompakt Record Bar』。さぞかし韓国で人気なんだろうと思ってたけど、3店舗目を聖水でオープンさせたと聞いて覗いてみたら平日の夜から大賑わい。DJがレコードで音楽を流し、カウンター席では男女がお酒を片手に楽しそうにお喋り。クラブほどハードではなく、バーほどしっとりとしていないこの感じ、確かに好きだ。週末はゲストDJを呼んでパーティをするそうだ。

フードメニューは各店舗のマネージャーが決めていて、ここでは韓国海苔を揚げた「キムブガク」(₩6,000)が人気。
グッズも売ってるよ。

インフォメーション

Kompakt Record Bar Ver. 3 콤팩트레코드바 성수점

◯城東区演武場ギル81/81, Yeonmujang-gil, Seongdong-gu 19:00〜2:00 日休

Instagram
https://www.instagram.com/kompaktrecordbar/

7. ナムダルン本家タッカンマリ ナムダルン ボンガ タッカンマリ

 韓国に来たら食べたいと思っていたタッカンマリ。鶏丸ごと一匹と、トック(餅)、白菜、ネギ、じゃがいもを煮た水炊き的な食べ物で、聖水駅すぐ近くの『ナムダルン本家タッカンマリ』は土鍋タイプ。銀色のアルミ鍋で提供されるのが一般的だけど、土鍋でグツグツ煮込まれることで鶏肉や野菜の旨味が存分に出て美味しいんだとか。オモニが作ってくれるコチュジャンのソースにつけると、店名のとおり「ナムダルン(格別に)」美味しい!

インフォメーション

ナムダルン本家タッカンマリ 남다른본가닭한마리 성수점

◯城東区演武場7ギル12 2F/2F, 12, Yeonmujang 7-gil, Seongdong-gu 11:30〜23:30、日12:00〜23:30(LO22:30) 無休

Instagram
https://www.instagram.com/namdareun.dak/

8. Lobby ロビー

 聖水には若者が起業するスタートアップが多く集まっているそうで、ここ『Lobby』も聖水で若い世代に向けて空間づくりを手掛けるクリエイティブ企業によって運営されている。1階は文房具やインテリア雑貨を扱うセレクトショップで、3階は展示スペース。イベントや個展を開催することもあって、アーティストのキュレーションにも力を入れている。現在、ショップ部分を地下1階~2階まで拡張しようと目下準備中。

インフォメーション

Lobby 로비

◯城東区トゥクソム路17ギル33/33, Ttukseom-ro 17-gil, Seongdong-gu 11:00〜20:00 月・火休

Instagram
https://www.instagram.com/shop.lobby/

9. BOLT ボルト

山に囲まれた地形から、ソウルの街には坂が多い。日本に比べて自転車文化はあまりメジャーではない様子だけど、ここ聖水では、『BOLT』がハブとなってライフスタイル寄りのBMXカルチャーを広める動きを見せている。’70~’80年代のアメリカ映画に出てきそうな雰囲気のオールドスクールBMXを街乗りとして提案していて、韓国のファッションブランドとコラボした自転車グッズも販売。これからソウルで自転車ユーザーが増える日も近そうな予感。

インフォメーション

BOLT 볼트

◯城東区演武場5ガギル32/32, Yeonmujang 5ga-gil, Seongdong-gu 11:00〜20:00 火休

Instagram
https://www.instagram.com/bolt.goods/